2024年の小説ベスト10
もう2024年も終わりですね。
2025年まではあと少しありますが、2024年に読んだ小説で特に好みだった10選をネタバレなしで紹介したいと思います!

もちろん10選に選出されていない作品もどれも大変すばらしいです。あくまで僕の好みですので、あらかじめご了承ください!
プロフィールにも書いているとおり、僕の趣味の一つは読書です。
暇さえあれば小説を読んでいますが、仕事や育児に加え副業なんかもいろいろやっておりますので、読む数自体はそれほど多くありません。
2024年は記事作成時点で104冊(小説以外も含みますが。。)でした。
ブクログにどんな本を読んでいるかは記録しております。
また、X(旧Twitter)にも読了記録をポストしています。
どちらも気が向いたら見てみてくださいね。
◆ブクログはこちら↓
https://booklog.jp/users/shin077
◆Xはこちら↓
https://x.com/ShingoNaruyama
ちなみに、買った作品もありますが基本的にはKindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)か図書館で借りています。ですので手元になく記憶もかなり薄れ気味ですがご了承ください。
Amazonの読書サブスクサービスです。
月額980円(税込み)で、小説、ビジネス書、漫画等 様々なジャンルの本が読み放題です。
以下ボタンから、Kindle Unlimitedに登録ができます。
初回30日は無料なので、試してみてはいかがでしょうか!
では前置きが長くなりましたが、今年の10冊を紹介します。
2024年の小説ベスト10<読了順>
・アルジャーノンに花束を/ダニエル・キイス
・成瀬は天下を取りにいく/宮島未奈
・宙わたる教室/伊与原新
・6人の嘘つきな大学生/浅倉秋成
・火星の人/アンディ・ウィアー
・博士の愛した数式/小川洋子
・誰が勇者を殺したか 預言の章/駄犬
・夜のピクニック/恩田陸
・スーツケースの半分は/近藤史恵
・星を継ぐもの/ジェイムズ・P・ホーガン
読んだ本の感想を投稿することでポイ活ができる「ブクスタ!」に関する記事も参考にしてくださいね!


アルジャーノンに花束を/ダニエル・キイス 著
/小尾芙佐 訳/早川書房
作品名は聞いたことがある。これまで何度もブームになっていることも知っている。
でもどんなストーリーなのか、どんな時代背景なのか、全く予備情報なく読み始めました。
その結果、最初のページで早速面食らいました。
一面ひらがな。しかも綴りも文法もめちゃくちゃ。まるで幼稚園児が話す言葉のようです。
この作品は、全編を通してチャーリィ視点で語られます。
主人公のチャーリィはとても優しいけど知的障害を持っており、自分の頭があまりよくないことをコンプレックスに感じていました。
そんなある日、チャーリィは頭がよくなる手術の実験を受けることになりました。
彼より先にその手術を受けたのが、「アルジャーノン」という名のネズミ。
チャーリィは、その手術のおかげでどんどん頭がよくなり、以前の自分のみならず、周囲の人たちよりもはるかに優れた知能を持つ天才へと変貌していきます。
天才へと変わる過程で、彼はこれまでの自分が置かれていた状況や周囲の人々からの評価や視線に気づかされます。また天才となった後、周囲の人々よりもはや数段上の次元に達してしまいます。
時系列とともに徐々に変わっていくチャーリィの視点を通じ、そんなチャーリィの苦悩と葛藤が臨場感をもって伝わってきました。
話題になるだけあってすごい小説です。
そして日本語訳も見事。
原文版を読んだことはありませんが、特に序盤はそもそも原文自体も正しい英語でないはずなのに日本語でしっかりとチャーリィの言葉の拙さを表現できており、脱帽です。
何より、先のページを誤って見てしまうだけでネタバレになるように感じ(実際そうなるのがこの作品のすごい点)、読むのを再開するときは絶対に先を見ないように慎重にページをめくりました。
劇的に変わっていく自分、取り残された周囲とのジレンマ。
そして、自分の少し先をいくアルジャーノン。
チャーリィは幸せだったのか。
成瀬は天下を取りにいく/宮島未奈/新潮社
通称、成天(なるてん)。
宮島未奈先生のデビュー作にして、「2024年本屋大賞」や「坪田譲治文学賞」、「キノベス!2024」等々、数々の文学賞を総ナメにした作品です。

なぜかこの本を読むと、「成瀬あかり」とフルネームで呼びたくなります。僕だけでしょうか。
「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」
本作品を読み始めて最初に出会う↑この一文がとにかく好きで、この時点でぐっと引き込まれました。
表紙にプロ野球チームの西武ライオンズのユニフォームを着た主人公:成瀬あかりが描かれていたり、成瀬あかりが上記のセリフを言ったりしたからって、本作品には野球は一切関係ありません。
滋賀県に住む中学生の成瀬あかりは、コロナ禍で閉店を控える地元の西武大津店に毎日西武ライオンズのユニフォームを着て通い、何とか閉店を阻止しようと企みます。
他にも、いきなり丸刈りにしてみたりM-1グランプリを目指してみたり。
周囲からは浮いてしまいがちな行動も、彼女の信念の強さと実際に実行してしまう行動力のおかげで貫き通します。
とにかく成瀬あかりは天下を取りにいく。
自分が気になったこと、目指したことはなんでもやってみます。
そんな成瀬を見る第三者目線で物語は進むのですが、客観的だからこそ彼女の芯の強さとひた向きさがとても伝わってきます。
そんな成瀬あかりと周囲のバランスをとってくれて、かつ成瀬のよき相方(実際にM-1予選も漫才の相方となります)である同級生:島崎みゆきもとてもいいキャラ。
成瀬あかりより島崎の方が好きになったという方も多いのではないでしょうか。
確かに彼女は難関大学を目指すほど賢く、周囲の視線を気にせず自分のやりたいことをやる行動力も持っています。
この本を読むと、一見彼女が特別に優秀だから天下を取りにいくことができるのであって、自分なんてとてもできない。と錯覚しそうになります。
でも成瀬あかりの言動をよく見てみると、叶えたいことをとにかくやってみて、一個でも叶えるために動いて確かめる。というポリシーに従っているだけ。
「年齢も性別も関係ない。自分もまだ何かを始めるには遅くない!」とポジティブに思わせてくれますね。
特に事件が起きたり謎があったりしない。SF要素もなければ、ベタベタな恋愛要素もない。
滋賀県を舞台に普通(というには少し変わっているけど)の少女とその周りの人の物語が進むだけ。
いったい何がそこまで読者を彼女とこの作品に惹き付けるのか。考えてもわからない。
一つだけ言えるのは、読んだらみんな成瀬あかりのファンになる。それだけですね。
本作の続編である「成瀬は信じた道をいく(宮島未奈/新潮社)」 通称:成信(なるしん)も発売中です。
大学生になって行動範囲も広がった成瀬あかりと再会できます。
彼女のファンになった方はぜひ。
また、完結編の「成瀬は都も駆け抜ける(宮島未奈/新潮社)」も発売されています。ぜひ成瀬あかり史の完結をその目で確かめてみてください!!
宙わたる教室/伊与原新/文藝春秋
NHKでドラマ化され、2024年12月に最終回を迎えたのでご存知な方も多いはず。
僕にとって、伊与原先生の作品はこの「宙わたる教室」が初めて。
きっかけもKindle Unlimitedで無料なのでなんとなく目についたから、という程度でした。
結果、序盤からどんどん引き込まれ一気に読了しました。
個人的には人生でTOP10に入る小説です!
本作品を読了後はとにかく伊与原先生の作品ならハズレはないはずと考え、「月まで3キロ(伊与原新/新潮社)」、「オオルリ流星群(伊与原新/KADOKAWA)」、「ルカの方舟(伊与原新/講談社)」などの作品を読みました。
どれもおススメです!
伊与原先生は神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻されたというバリバリの理系。
ですので、本作品のみならず他の作品にも理系要素は満載です。
でも、決して難解だったりつまらなかったりすることはありません。
理系的・科学的な知識や考え方があればこんなことができる/考えられるということを教えてくれ、理系の楽しさや面白さを実感させてくれます。
さて、本作品の舞台は定時制高校。
不登校だったり、勉強があまり得意でなかったり、家庭の事情があったりといった若年の生徒に加え、社会人や年配の方等も生徒として通っており、いわゆる全日制の高校とは雰囲気が異なります。
ですので、実際に定時制高校に少しネガティブなイメージを持たれている方も多いと思います。
そんな定時制高校に作られた「科学部」で行われる火星の実験。しかも実話をもとにしたストーリーというからさらに驚きです。
各登場人物の過去やコンプレックスが紹介され、ときに衝突し苦しみながらも少しずつ前向きになっていき、とある目標に向かう。
クラス担任であり科学部顧問である藤竹先生のよき指導者っぷりが素晴らしい。
個人個人の優れたところや個性を客観的かつ公正に見極め、生徒が一丸となって進むよう寄り添ってくれるし、躓きそうなときには生徒に気づかせるように手を差し伸べてくれる。
たかが定時制高校の科学部と侮ることなかれ。実験の内容はとても有用でかつ独創的です。
生徒が目標に向かって頑張る姿に感動するのは上記のとおりです。
加えて、科学の実験ってこんな感じで役割分担し、仮設を立てて検証し、再現性を高めていくんだなというプロセスも実感できます。
こんな先生がいたらたくさんの迷える若者たちの人生が好転するかもしれない。本気でそう思わせてくれます。
僕自身は数学がどうしても好きになれず文系を選択しましたが、藤竹先生のような方にあっていれば僕の人生も変わっていたかもしれません。
作中には後ほどご紹介する「火星の人(アンディ・ウィアー/早川書房)」、「星を継ぐもの(ジェイムズ・P・ホーガン/東京創元社)」というSF小説も登場します。
NHKのドラマ放送中、火星探査機:オポチュニティが話題になったのも記憶に新しいですね。
NHKドラマも素晴らしい出来なので、そちらもぜひ見てください!
そして、俺たちの教室は今、宇宙をわたる。
本作のタイトルのベースとなったこの一文。最高です。
6人の嘘つきな大学生/浅倉秋成/KADOKAWA
2024年11月に実写映画が公開された本作品。
急成長を続けるIT企業:スピラリンクスの新卒採用最終試験に臨む男女6人の優秀な大学生。
最終試験まで勝ち残った彼らに課された課題は、1か月後のディスカッションに向けチームを作り上げるというものでした。
チームメンバーには一種の団結感が出来上がり、大学生らしく和気あいあいとした雰囲気が漂います。
しかし突然、試験のルールが「6人の中から1人の内定者を選ぶ」というものに変更され、それまで仲間だったメンバーが、急に蹴落とさなければならないライバルへ変わってしまいます。
そして迎えた最終試験の会場。
各メンバーの名前が書かれ、そのメンバーの過去に関する告発が記載された封筒が発見されます。メンバーは疑心暗鬼になりながらも、たった1人の内定者を指名するため議論は進んでいきます・・・
本作は試験当時とメンバーが社会人になってからの各自へのインタビューという2つの時系列が交互に進みます。
封筒に入っていた告発文や各メンバーが言った/発覚した「嘘」、そして各所に散りばめられた伏線、掘り下げられていくメンバーの情報。
それらがすべてつながり、終盤できれいに回収されていく構成がなんとも言えない気持ちよさです。
伏線回収もさることながら、就活時に感じた異常性が見事に言語化されていました。
就活も大学受験も一緒。その時は希望の企業や大学に入れず落ち込むけど、後で考えると人生を左右するほど重要なものではないです。
でも、当の就活生はどうしても内定が欲しい。そのためには多少の嘘や誇張も戦術として使わざるを得ない。僕も新卒採用がとても厳し時期だったので、この気持ちには大変共感できます。
就活生が就職試験をしながら感じていることと採用する企業側が考えていることにはあまりにも差がある。そんなことを双方の目線から客観的に気づかせてくれます。
メンバーへの評価は読んでいる間にコロコロと変わります。
だれが犯人で、だれが採用されたのか。ぜひ読んで確かめてみてください。
ちなみに、、
新卒採用試験を題材とし、候補者同士が心理戦を繰り広げるというストーリーだと、「プロパガンダゲーム(根本聡一郎・双葉社)もおススメです。
6人の嘘つきな大学生とはまた違った展開とルールで、とても楽しめますよ。
火星の人/アンディ・ウィアー 著/小野田和子 訳
/早川書房
現代より少しだけ未来のお話。
有人火星調査のため火星へ行ったワトニー一行。
しかし、猛烈な嵐のため任務の途中で急遽地球への帰還を余儀なくされました。
そんな中、主人公であるワトニーに暴風で折れたアンテナが直撃。
他のメンバーは彼が死んだものと認識し、彼を火星に残し地球へ帰還してしまいます。
ワトニーは奇跡的に生存していました。
しかし、火星に独りぼっちで酸素も食料も限りがある状況。彼以外は彼を死んだものと認識している。地球との満足な連絡手段もない。
たった1人で残されてしまったたエンジニア兼植物学者のワトニー。
ハブ内でのジャガイモの栽培に成功するも吹き飛ばされたり、地球との通信手段がなくなったりと、致命的なトラブルに見舞われながらも、自分の知識と限られた物資で生存と脱出をめざすハードSFです。
火星人が出てくるわけでもワープのような超化学的な描写もない。
SF(サイエンスフィクション)だけど、本作品中に描写されているのは現代よりちょっとだけ進んだ技術と一般的な化学知識・法則のみ。
当然ですが、誰も火星には行ったことがありません。
でも「もし火星に取り残されたらこうなるんだろうな」と読者に疑似体験させるような、リアルなSFです。
絶望的な状況でありながらも、ワトニーは決して諦めない不屈の精神と持ち前のユーモアで火星からの帰還を目指します。
そんな彼のひたむきさ、そして彼一人を救うために全世界の人々が一丸となる展開に胸が熱くなります。最後は泣きました。もはや言葉は不要。
本作品はハリウッドで「オデッセイ」として映画化されており、そちらのクオリティも大変すばらしいです。特に、どうしても小説ではわかりにくい部分を映像で補完できるので、小説を読んでイマイチ理解ができなかった方にもおススメです。
でも、ぜひ小説を読んでいただきたいです。
映画ではどうしても尺の問題で省略や簡素化されている部分があり、原作読者には若干物足りなさが感じられてしまうからです。
モーニングで連載中の漫画「宇宙兄弟(小山宙哉/講談社)」が好きな人はこの作品も好きと断言できます!
逆に「火星の人」が好きで「宇宙兄弟」を未読の方はぜひ読んでいただきたいです。
博士の愛した数式/小川洋子/新潮社
この作品も2006年に映画化されていますね。
僕はまだ視聴していないのでいつか観たいです!
ある時点で記憶の更新がストップしてしまい、80分しか記憶が続かない「博士」と、その家政婦である主人公、と主人公の息子である「ルート(√)」。
この博士の家に来た家政婦は、何人も続けてすぐに辞めてしまっていました。
80分しか記憶が続かないためその度に気難しい初老の博士に説明をせねばならず、また度々挟まれる数学の話にうんざりするからです。
主人公もその1人。最初は博士の家政婦として働くことに苦戦していました。
しかしあるとき不意に数学の美しさに気づき、博士のことを少しずつ理解するようになります。
また、シングルマザーである主人公は、あるときから息子を博士の家に連れて行くようになります。子供好きの博士は彼をとても気に入り、彼の平らな頭から連想した数学記号である「ルート(√)」と名付けます。
博士と親子2人の、奇妙だけどどこか温かな物語。
数学と博士の説明の美しさ、分かりあえても記憶が失われてしまう切なさ。
変わらない博士と、博士に触れることで変わっていく親子。
何も起こらない穏やかなストーリーに心が洗われ、記憶が80分しかもたないはずなのに、徐々に博士と親子2人の心は通い合って親密になっていくような感覚にさせてくれます。
作中には数学がよく出てきますが、数学なんて知らなくても読めてしまいます。
というより、数学が苦手という方にぜひ読んでいただきたいです。
読みながら計算なんてする必要はありません。
博士による熱のこもった解説と一見無機質に見える数字や数学用語が持つ数々の魅力で、初めて「数学が美しい」という感覚を理解させてくれます。
最後まで読んで、「親子2人が博士と出会えてよかったな」と本気で思うことができる。
そんな小説です。
夜のピクニック/恩田陸/新潮文庫
夜を徹し、ただ歩き、友と話す。
ただそれだけのことなのに、なぜこんなにも心の深くにすっと入ってきて、じんわりとあたたかい気持ちにさせてくれるのか。
2004年に出版されてから早20年の年月が経ちましたが、今後も語り継がれるだろう名作だと思います。
本作品の主人公の融(とおる)と貴子(たかこ)が通う北高には修学旅行がなく、全校生徒が夜を徹して80キロを歩き通すという「歩行祭」という伝統的な行事が存在します。
同じクラスの同級生である融と貴子ですが、とある事情から2人は会話をしません。
そんな貴子には、この「歩行祭」を通して達成したい一つの目標がありました。
「歩行祭」はその名のとおりただただ歩くだけ。
チェックポイントを通過し、途中で休憩し、足の痛みを会話でごまかしながら、ただ歩く。
何でもないただ友と歩くだけの時間が大人になってしまった今となっては何よりもかけがえのない貴重な時間と気づかせてくれます。
その時には当たり前に立ち入ることができた場所、学校に行けばいつでも会えた友人たち。もうその場所やその人への元へは、僕らは戻れません。
家庭の事情とか、部活とか、友情とか、しがらみとか、男女の恋愛とか、進学への不安とか。高校生特有の甘酸っぱい、でもその時を生きている本人たちにとっては何より大事なもの。でもすべてがうまくいくわけもなく、もどかしい。
僕らが高校時代に置いてきたそんなふわふわした感情を呼び起こしてくれるような、素晴らしい小説です。
高校が楽しかった人もそうでない人も、何かに打ち込んだ人もそうでない人も。
この本の中には、誰もが共感できるシーンが必ずあるはずだと感じます。
「歩行祭が終わって朝を迎えたら、何かが変わっているんだろうな。」
登場人物たちが思っているそんな感覚を、読者も物語のゴールに向かうにつれ感じさせてくれます。
貴子の目標は叶ったのでしょうか?叶ったら何か変わるのでしょうか。
誰が勇者を殺したか 預言の章/駄犬
/KADOKAWA
まさかのライトノベル(いわゆるラノベ)!
この「誰が勇者を殺したか」シリーズで、中学生以来久しぶりにラノベを購入しました。
挿絵が入っていることに懐かしさを感じながら読みましたが、まさに僕と同世代のRPG好きにはドストライクかもしれません。
なお、本作品は前作の「誰が勇者を殺したか(駄犬/KADOKAWA)」の続編です。
本作品を紹介する前に、前作である「誰が勇者を殺したか」を簡単に紹介させてください。
魔王を倒す勇者の元には、預言者が姿を現すという。
その予言を受けた勇者は魔王を倒し、帰らぬ人となった。そんな勇者の偉業を文献として編纂すべく勇者の仲間に話を聞くが、どうも要領を得ない。
勇者と仲間の過去を遡りながら、次第に真相が明らかになっていく。
勇者がいかにして勇者となり、仲間と出会い、死んだのか。
――誰が勇者を殺したか。
前作できれいに完結したため2作目である本作品はどのような内容になっているのかとワクワクして読み進めましたが、前作を補完しながらもよりRPG好きのツボを押さえた内容でめちゃくちゃ面白かったです!
前作を未読の方はまずそちらを読んでくださいね。
本作品は、勇者とは程遠い金目当ての冒険者である「レナード」とその仲間の冒険を、預言者視点で追いかけた内容となっています。
最初はレナードの言動に辟易していた預言者ですが、彼らの言動を観察するうちに徐々にレナードたちも魔王を倒しうる「勇者」なのではないかと思うようになります。
本作品にも前作同様、RPG好きにはたまらないポイントを盛り込まれています。
・一度世界を救い、頼りになるサブキャラとして登場する前作の主人公たちの扱い。
・前作のその後が垣間見えるが、想像の余地を残してくれる「クリア後」の世界。
・読者は「影の功労者」を知っていて、作中でその評価が追い付いてくる展開。
等々、あげればキリはありません。
前作も本作品も、一見「ベタ」なように感じるんですけど、そのベタな展開ってどこで見たの?と聞かれても答えられない。
RPG好きの僕らの頭の中にある「ベタ」がうまく言語化されたような感覚を持ちました。
主人公は生まれながらの勇者ではない。勝ち残ったものが勇者になる。
RPGをプレイしていると感じる違和感に、一つの解釈を与えてくれた。そんな作品です。
ライトノベルは若者向きと敬遠せず、一度読んでみてはいかがでしょうか?
今回も、
――誰が勇者を殺したか。
<本作品>
<前作>
スーツケースの半分は/近藤史恵/祥伝社
世界を旅するブロガーを目指す僕としては、ずーっと読みかった本。
図書館で発見したときはテンションが上がりました。
物語の舞台は現代の日本。兼業主婦として働く女性:真美は、フリーマーケットで見つけた素敵な青いスーツケースに一目惚れし購入します。
そして真美はそのスーツケースをもって憧れのNYへの一人旅を決行します。
本作品は短編集で毎回主人公が変わります。
真美の次は友人が、その次はまた別の友人が、といった形で青いスーツケースは世界中を旅します。
一編が終わると、その旅の後に別の誰かが旅に出るところから次の編が始まるのですが、「次は青いスーツケースと誰がどこを旅するんだろう」と編ごとにワクワクさせてくれます。前の編の後日談が描写されているのも嬉しいですね。
本作では大きな事件も悲しい出来事も起こりません。
スーツケースとともに旅をして、体験をして、自分を知って、帰ってくる。
疲れているときやちょっとメンタルが落ち込み気味なときって、暴力的だったりハラハラしたりする作品ってなかなか読む気がおきません。
そんなとき、本作のような穏やかな本が手元にいくつかあれば、安らぎを与えてくれる気がします。
本作には順番に旅をする各編の主人公たちに加え、いろんな人物が登場します。
旅に不馴れな人、旅慣れた人。既婚者、独身。留学する人、夢を追う人。…etc。
それぞれいろいろな思いや夢がある。一見何のストレスがない人にも、焦燥感だったり変えたい現状があったりする。旅はそんな自分を変えるきっかけをくれる、かもしれない。
旅をするとスーツケースが汚れたり傷ついたりする。その度に思い出や経験が増える。
そんな感覚を擬似体験させてくれるような一冊です。
旅なんて、いってみたらどうにかなる。
何かトラブルがあっても後で笑い話になりますし、行くか迷っているなら早めに行くべきと思います。
正直、想像以上にめちゃくちゃ好みでした!
「旅がしたい」そう思ったということはいくべきなんでしょう、どこかに。
「あなたの旅に、幸多かれ」
星を継ぐもの/ジェイムズ・P・ホーガン 著
/池 央耿 訳/東京創元社
最後はこの本です。
海外SF作品をもう1作。こちらも上で紹介した「宙わたる教室」に作品名だけ出てきましたね。ということは名作です。
上で紹介した「火星の人」がリアル路線を追求したハードSFだとすると、本作品は「こんなことはあり得ないけど、これが事実なのでは」と本気で思わせてくれる、想像力に富んだ内容のSFです。
本を開くともう最初から謎。月で発見された5万年前の人類ってなに?
その後も、月で発見された人類である「チャーリー」の所持品や新たな手掛かり、追加情報により解明は進む。そしてその度にさらに深まる謎。
各分野の専門家が数多くの謎を科学的かつ論理的に紐解いていく過程がとても面白いです。
研究者ってこんな感じに検証+考察し、仮設が事実であると推測していくのかと、作品に関係していないところでなぜか感心してしまいました。
月での「チャーリー」の発見をきっかけに、我々人類の誕生のルーツまで紐解かれます。
オーパーツって実はこうやって残されるんだな、とか、現代の技術でも解明されていない謎の真実はこれだったのか。
といったように、実際の世界で謎とされているものに対し、どんな真実でもあり得るんだろうな、とロマンを感じさせてくれるような作品でした。
最後もまたいいですね。
「それ」があれば、推論が事実に変わるんだ!と裏付ける証拠はある。
でも「それ」は必ずしも有識者には発見されず人知れず埋もれていく。
その儚さが、読者に心地よい余韻と真実を知っているんだという優越感を与えてくれます。
現在の常識。それは真実ではないかもしれません。
文句無しの傑作SF!!
以上、2024年の小説ベスト10冊を紹介させていただきました。
紹介した本を読んだことがある方も、読んだことがない方も、興味をもっていただけますと嬉しいです。
おわり


