2025年6月の読了本【6冊】

梅雨もあっという間に終わり、もはや真夏ですね。
こんな季節は涼しい場所で読書に励みたいですね!
さて、6月の読了本は小説が4冊、その他が2冊の計6冊でした。
それぞれについて紹介していきますね。
今月で購入した本が多かったです!
「韓国旅行の移動時間に読もう!」といつもよりやや強気に買ったからだと思います。

ネタバレはありませんので安心してお読みください!
作中からの引用部分は青字にしています。
5月(前月)の読了本は以下記事にまとめていますので、ご参照ください!


①一次元の挿し木/松下龍之介
②どこでもいいからどこかへ行きたい/pha
③誰が勇者を殺したか 勇者の章/駄犬
④山崎先生、お金の「もうこれだけで大丈夫!」を教えてください。 90分で一生役立つお金の授業/山崎元
⑤か「」く「」し「」ご「」と「/住野よる
⑥本心/平野啓一郎
一次元の挿し木/松下龍之介/宝島社
購入本
2025年第23回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリ受賞作。
これがデビュー作というから驚きですね。
まず本の裏に書いてあるあらすじを読む。
ヒマラヤ山中で発掘された二百年前の人骨。大学院で遺伝人類学を学ぶ悠がDNA鑑定にかけると、四年前に失踪した妹のものと一致した。
↑これを読んで興味をそそられないわけがない!
少し趣は違いますが、「星を継ぐもの(ジェイムズ・P・ホーガン/東京創元社)」の冒頭部分を思い出しました。
「星を継ぐもの」では、月面で死後五万年が経過した死体を発見したというものです。
まず現実ではありえない謎に、読者はぐっと引き込まれます。
さて、この「一次元の挿し木」がすごいのは、単なる出オチではなくしっかりと多層的にかつ緻密にストーリーが練られているところです。
主人公は失踪した妹と、妹とDNAが一致した人骨の真相を探るために動きます。
そんな主人公にはいくつもの謎が降りかかります。
ようやく謎が解けた、または前進したと思ったら突如として現れる事実。
まるで安心して立ったはずの床が急に抜けるような感覚です。
主人公と、そんな主人公に共感しながら読んでいる読者が作中で何度も混乱させられ、本当に主人公の頭がどうかしているんじゃないか?と思わされてしまいます。
でもそんな広く深く広げた風呂敷ですが、綺麗にたたんで物語を完結させます。
いろいろとツッコミどころもなくはないですが、練りこまれたストーリーとテンポの良さで気にならずに読めてしまいました。
ビターなエンドもなおよし。
作者の松下さんは理系ということもあり、本作にも理系の要素がふんだんに含まれていますが、理系の知識は全くなくともストレスなく読めてしまいます。
このあたりは同じく理系の作家:伊与原新さんの作品と通ずるところがありますね。
どの本もそうですが、巻末のプロの作家さんによる解説で作品のすごさを再認識するのが好きです。作家さんってすごいわマジで。
というわけでこの作品の巻末の解説も必読です!
真相をわかった上で妹:紫陽のセリフや表紙の絵を見返すと切ないんだよなぁ。
どこでもいいからどこかへ行きたい/pha/幻冬舎
購入本
前から書店で見かけていて、読んでみたかった本。せっかく旅に行くので購入してみました。
本作を執筆時点の作者は僕と同年代の30代半ば~後半。
いろいろと共感できるところも共感できないところもあり、大変楽しかったです。
本作を読む前に想像していた内容は、国内海外問わずとにかくいろんなところにフットワーク軽く行って、いろいろな経験をするというものでした。
でも実際に読んでみると、いい意味で裏切られました。
作者は高速バスが好き、青春18きっぷが好き、ビジネスホテルが好き、チェーン店が好き…etc。
同じ場所にいるのに息が詰まったら、すぐに作業場所を変えたり住む場所を変えたり。
読んでみて思いましたが、旅なんて緻密に計画立てるよりこれくらい適当な方がいいんでしょうね。
ビジネスホテルに泊まることは、外で弁当食べたりお酒を飲んだりする感覚に近いということに非常に共感を得ました。
日常の中の行動を、あえて別の場所でやってみる。
確かに、いつも自室でパソコンのキーボードを叩くのではなく、自宅近くのカフェに行って作業するのは気分転換になりますね。
この本を読むと、意味なくビジネスホテルに泊まってみたりサウナへ行ってみたりしたくなります。
また、僕らが普段訪れることのない地域でも、そこに住んで普段の生活を送っている人がいる。そんな場所に行ったり電車の窓から景色を見たりしながら思いをはせる、そんな気持ちも大変わかります。
著書独自の(ある意味ひねくれた)視点で、つらつらと長い独り言のように語っているのがとても癖になります。でも不快感は全く感じません。
なんでもない風景や心境を言語化するのが抜群にお上手だな。と感じました。
なんでこんななんでもないこと、なんとなくする行動を的確にかつ面白く文章にできるのでしょうか。
高速バス一つとってもここまで語れる感性は素晴らしいですし、カフェインやアルコールについて「ドラッグと社会の共犯関係」と表現しているのがとてもしっくりきました。
と感心していたら、富士山について「結構でかい」って書いているのが面白い。
ちなみに、僕の一番好きな話は「冬とカモメとフィッシュマンズ」です。
この作品の魅力はなんとも説明がしがたいです。
一見すると、社会になじめないアラフォーのおじさんがふらふらとお金もあまり使わず行動しているだけの本です。
でも読んだ後は、サウナに行きたくなったりビジネスホテルに行きたくなったり、なんでもない駅でふらっと降りてみたり、何か普段と違う場所へ行きたくなること請け合いです。
「新しいものを見たいとしても別に遠くに行く必要はない」
僕はこの本に触発され、翌日サウナに行きました。気持ちよかったです。
サウナ体験記は以下記事を読んでみてください。

誰が勇者を殺したか 勇者の章/駄犬/KADOKAWA
購入本
大好きな「誰が勇者を殺したか」シリーズの3作目です。
いわゆる”日本のRPG”好きは読んで後悔はない作品。
というかRPG好きはぜひ読んでほしい!!
今回は「勇者の章」です。
まだまだ旅を始めたばかりの勇者アレス一行。
魔物や魔人に苦戦したりパーティ間の連携もうまくいっていなかったり。
そんなアレス達は、旅先で訪れたリュドニア国で、リュドニアの勇者:カルロス王子と出会います。
カルロス王子は魔王を倒す旅へ出ることを諦め、自国リュドニアを守る「勇者」として戦います。
そんな中、リュドニア国内の「内通者」を探すため、アレスはカルロス王子と共に行動することに。
アレスはカルロス王子から「勇者」たるもののあるべき姿を学びます。
序盤でカルロス王子の妹であるエレナ姫から「リュドニアの王子が殺された」という情報が出ますので、カルロス王子がいかに戦い死んでいったのか。という真相を探るのが本作の主な目的となります。
三作目にして初めて、勇者アレスのパーティが旅をし戦う描写が詳細に書かれている気がします。
リュドニアの勇者:カルロス王子にスポットライトを当てていますが、しっかりとアレスが勇者として成長しパーティのリーダーとなっていく様子もわかるので、まさに「勇者の章」なのでしょうね。
預言者に選ばれし勇者の陰には、勇者を立てるものもいれば妬むものもいるのが世の常。
本作では、「勇者」とは何かを様々な角度で教えてくれます。
勇者とは、強い精神力と勇気を持ち、味方を鼓舞し、癒し、自らも戦う。
勇者パーティのソロン、レオン、マリアがアレスによって変わり、泥臭く洗練されていくのもまたいいですね。
例えば、自らの剣技を誇るように派手な戦い方をしていたレオンが、敵を倒し自らを守る効率的な剣技へとシフトしていく様子なんかは、熟練の戦士へと成長する過程を見ているようで、読んでいてとても楽しかったです。
それまであまり有能でなかったように思えたカルロス王子の父も、実はとても深く現実的に考えていたことがわかるシーンがとても気にいっています。
この作品はとにかくメインキャラクター以外もしっかりと作り込みがされています。
自分がこれまでやってきたRPGの登場人物たちも、表に出てこなかった思いや葛藤なんかもあったんんだろうなと想像してしまいますね。
そして、3作目となってもタイトルに沿ったストーリーにしているのはさすがの一言。
3作とも面白さの順位が付けられないですね。
どの作品もいろんな「勇者」が存在することを僕たちに伝えてくれます。
今回も、「誰が勇者を殺したか」
山崎先生、お金の「もうこれだけで大丈夫!」を教えてください。 90分で一生役立つお金の授業/山崎元/Gakken
Kindle Unlimited
本作は2024年3月に出版されていますが、山崎氏は本作の出版を待たずして2024年1月に食道癌でお亡くなりになっています。
癌でお亡くなりになる直前まで本の出版を継続されるのはさすがの一言。
本作を出版したきっかけは、作者の知人から「大学生向けにお金に関する講義をしてくれないか?」と頼まれたのに対し、癌を患っていた作者は講義が難しかったため、講義一コマ分(90分)の内容をまとめたというものです。
深い経済知識を有さない大学生に向けた内容で、かつ90分という短時間ということもあって、お金に関するしていいこと/してはいけないことが、大変わかりやすくかつ端的にまとめられています。
1~2時間で最後まで読めてしまいますので、気になる方はぜひ読んでみてください。
内容はとてもシンプル。
以下について、具体的な数字や理由も示しながら説明されています。
・お金の【これはダメ!】なことは、「リボ払い」「がん保険」「お任せ運用」
・お金の【これはいい!】は、「ほったらかし投資術」
特に「がん保険」については、ご自身が実際に癌を患われて体験した結果として「不要」と主張されておりますので、説得力は抜群です。
気になる方は以下の本も読んでみてください。
癌に関するお金についてとても具体的かつ定量的に知ることができます。
山崎氏の著書はKindle Unlimitedにもいくつもあります。どれもお金の勉強になりますので、ぜひ読んでみてください。
か「」く「」し「」ご「」と「/住野よる/新潮社
Kindle Unlimited
本作は2025年5月30日に実写映画が公開されました。
漫画化もされているようです。
大ヒット作「君の膵臓をたべたい」の作者として有名な住野よるさん。
僕は住野さんの作品は本作が初めてです。
さて、本作は人の感情が見える男女5人の高校生達の青春のお話。
毎度のことですが、僕は事前情報を頭にいれずに小説を読みます。
第一章で急に主人公が「他人の頭の上に句読点が見える」なんてことを言い出したので、最初は少し混乱しました。
そもそもタイトルも不思議ですしね。
読み進めていくとそれぞれの登場人物が能力を持っていることに気づき、章のタイトルでどう見えているかなんとなくわかってくるから尻上がりに面白くなっていきます。
登場人物の全員が、「こんな能力を持っているのは自分だけだろう」と考えているのがまた面白い。
一回読み終わったあと、最初から読み直してみてそれぞれの人物の心境を想像してみるのも面白いかもしれないです。
5人はそれぞれ見え方が違うんだけど、他人の中身が見えるからこそもどかしく勘違いしてしまうんでしょうね。
特に恋愛に受験に忙しくかつ多感な年代の高校生ならなおさらです。
一見便利な能力のように思えるけど、能力を持っていることで無理したり考えすぎたりしてしまうんだろうな。ということを実感。
結局どんな良いモノ/便利なモノを持っていても、それを使ってうまくいくかは誰にもわからないんでしょうね。
とりあえず最初から最後まで京ちゃんを応援してしまうのは僕だけではないだろうと思います。
暴かれる度にどんどん馬鹿らしくなっていく隠し事、どれも私達が勝手に複雑なものだと勘違いをしていた。
本心/平野啓一郎/文藝春秋
本作品は2024年11月に実写映画化されています。
6月の最後になかなかヘビーな作品を読んでしまいました。
平野さんの小説は「ある男」に続いて2作目。
「ある男」が割とサクサク読めたので本作も軽い気持ちで読み始めたのですが、449ページとボリュームがそこそこ多いのもさることながら、命について問いかけられているような内容で、いい意味で期待を裏切られました。
近い将来の、あり得そうな未来。
最初からその設定に面食らいました。
舞台は2040年の日本。自ら死を選ぶ「自由死」が合法化された世界で、自由死を望みながらも不慮の事故で命を落としてしまった母。
主人公の朔也(さくや)は母のいない寂しさを紛らわすため、そして自由死を望んだ母の「本心」を聞くために、仮想空間にAIで生前の母そっくりなVFを作り出します。
VFは生前の記憶をインプットされ、かつ現代のニュースや他社との会話で継続的に学習し、まるで本当に生きているかのようなコミュニケーションができます。
でも、どんなに本人に似せて作られたものでもAIはAI。
学習していないことは回答できないし、一見自然に見える応対も統語論的に導き出されたものにすぎない。
AIとして存在する母。それを本物のように扱う自分。その自分は「ニセモノ」ではないのか?
AIが語る言葉は、生前の本人の「本心」なのか?その母は自分の都合のいいように作り上げた母ではないのか。
母への呼びかけ以外には、決して口にしたことのなかった「お母さん」という言葉を、母のニセモノに向けて発しようとすることに対し、僕の体は、ほとんど詰難するように抵抗した。それによって、ニセモノになるのは、お前自身だと言わんばかりに。
朔也は母の本心が知りたい思いと知りたくない思い、そしてAIにそれを聞くことの正しさなど、いろんな感情の中で葛藤してしまいます。
逆に本当の人間たちの会話も、AIと同じくこれまでの経験やいくつかのパターンから選ばれたものであるのだろうと思わされます。
死してなお存在し、会話し、時には収入まで得てしまうAI。
だとすると、人間とAIの境界はどこにどうあるんだろう。
自分の身体でなくてもいろいろできてしまうからこそ、相手の本心がわからないなどの弊害もありますね。
最近Webミーティングの機会がとても多いですが、やはり対面と比べると相手の感情や表情が読みづらく「本心」がわかりづらくなります。
今より進んだ未来、仮想空間では今以上に相手の本心がわかりにくくなってしまうのでしょう。
そして、中盤の「メロン事件」から朔也を取り巻く状況は一変し、仮想の母との関係も徐々に変わってきます。
現実でも存在する「あっちの世界」と「こっちの世界」という2つの世界。
人は、現実と仮想空間を明確に分けたがりますが、現実世界も色んな線を引けば分けることができてしまいます。
人の死、仮想現実やAI、経済的格差、過去のトラウマ・・・。
多角的な視点でいろんな課題に切り込んでいるし、心理的な描写がとても細かい。
言葉にできない人の葛藤をなぜそんなに詳細に言語化できるのかと脱帽。
そんなミクロな視点で「人」というものを哲学的に見つめる一方、作中では宇宙や自然の雄大さ、果てしなさにも言及しています。
そんな宇宙や自然と比べるとほぼ一瞬の刹那的にも思える人の一生。
死の一瞬前。誰とどう過ごすのか。
そして、母の本心はどういうものだったのか・・。
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初回30日は無料なので、試してみてはいかがでしょうか!
以上、2025年6月の読了本でした!
おわり
