2025年10月の読了本【8冊】
気温が急に寒くなり、一気に冬の気配がしてきた10月でしたね。
季節に変わり目に風邪をひきやすい僕は、絶賛風邪をひいた状態でこの記事を書いています!
さて、2025年10月に読んだ本を紹介します!
10月の読了本は小説が7冊、その他が1冊の計8冊でした。
それぞれについて紹介していきますね!

ネタバレはありませんので安心してお読みください!
作中からの引用部分は青字にしています。
9月(前月)の読了本は以下記事にまとめていますので、ご参照ください!


①早朝始発の殺風景/青崎有吾
②体育館の殺人/青崎有吾
③ザ・ロイヤルファミリー/早見和真
④イシューからはじめよ[改訂版] 知的生産の「シンプルな本質」/安宅和人⑤蝋燭は燃えているか/桃野雑派
⑥一橋桐子(76)の犯罪日記/原田ひ香
⑦仕事は輝く 石を切り出すだけの仕事に働く喜びを見つけた物語/犬飼ターボ
⑧アマテラスの暗号/伊勢谷武
早朝始発の殺風景/青崎有吾/集英社
図書館で貸し出し
本作はWOWOW(ワウワウ)で2022年に実写ドラマ化されていますし、漫画化もされていますね。
青崎先生の作品は本作が初読みです。
「体育館の殺人(東京創元社)」や「水族館の殺人(東京創元社)」など、他作品の物騒な名前はよく見ていたので、一見平和そうに見える本作はどういった内容なんだろうとドキドキしながら図書館で借りてみました。
読んでみると、基本的には終始平和で(一部違うけど)、甘酸っぱい高校生の青春小説の雰囲気を持ちながらも、しっかりサスペンス小説でした。それともこれはミステリーなのか。
僕はサスペンスとミステリーの定義をよく理解していませんが、とにかく結末には何らかの真実があって、ストーリー中に置かれたヒントや伏線などからその真実を推理するのが楽しかったです。
本作の舞台は、千葉県に存在する架空の町「啄木町」付近です。
それぞれの話は独立しているのですが、どれも同じエリアで物語は展開されます。
僕は東京都の東側に住んでいたこともあったので、本作の舞台となった千葉県のそのあたりもよく行っていました。なので、より本作を楽しみながら読むことができました。
人も死なないし、グロテスクな描写もありません。恋愛や受験勉強や友人関係を楽しみ、悩む、普通の高校生たちの青春ミステリーです。
1話目の「早朝始発の殺風景」で、本作の雰囲気と仕組みがわかります。
その後は、高校生の頃の色んな記憶を思い出しながら読むもよし、各話の登場人物や描写から真実を推測するのもよし、シンプルにストーリーを楽しむのもよし。
いろんな読み方ができる本だと思います。
どの話も良かったのですが、 個人的には「メロンソーダ・ファクトリー」が良かったです。
しっかりも張り巡らされていて、頑張れば気づけるヒントが秀逸でした。
「夢の国には観覧車がない」
は、部活も終え受験を控えた状況でもやっぱり気になる恋愛のお話です。
むしろ、「残された時間はあと半年程度で、来年からは別々の道を進むという状況下で悔いのないように恋愛はしておくべき!」という受験生特有の時間制限のあるジレンマを存分に感じることができましたし、自身の高3の頃の経験も思い出して懐かしくなりました。
なんというか、高3の部活を終えて大学も進路も決まらずふわふわしているタイミングの心理描写の解像度が高かったです。
エピローグも良かったですね。
各話の「その後」が甘さ控えめに表現されており、気持ちよく読了することができました。
でも、最後にこれだけは言わせてください。
「殺風景」って苗字かよ!
体育館の殺人/青崎有吾/東京創元社
Kindle Unlimited
「早朝始発の殺風景」が面白くて著者の他の作品も気になった僕は、ひとまずkindle Unlimitedで読み放題対象である本作を読んでみることにしました。
本作は、著者のデビュー作で第22回鮎川哲也賞受賞作です。
これがデビュー作か・・いやほんと小説家の皆さんってどうなっているんでしょうね。
本作の舞台はとある高校の旧体育館。
事実上の密室となっている旧体育館のステージで、放送部部長が何者かによって殺されているのが見つかります。
その時旧体育館にいた唯一の人物である卓球部部長が、犯人として警察に疑われてしまいます。
部長が犯人なはずがないと信じる卓球部員の袴田柚乃は、学校イチの頭脳を持ちなぜか校内に住んでいるという裏染天馬(うらぞめてんま)に事件解決を依頼します。
天才的な洞察力を持つ高校生の探偵役と、振り回される凡庸な警察、そしえて助手役の女子高生。
設定はベタですが、緻密かつ漏れのない推理には脱帽しました。
あの点は確かに盲点だったけど、考えなおしてもそれしかありえない。
いかに「そのこと」に触れながらも、読者に気にさせすぎない(印象を与えすぎない)かは本当にどんでん返しものでは重要な叙述スキルですね。
「方舟(夕木春央/講談社)」を読んだ時と似た感覚を感じました。
気になる方はぜひ!衝撃作です!
本作の素晴らしい点はもちろんいくつもあるのですが、個人的には以下の点に感心しました。
①探偵役が事件を解決する理由が特にない
本作の主人公で探偵役の裏染天馬は、全科目100点を取るほど頭が良いのですが、ガチガチのアニメオタクでかつなぜか校内にある部室を改造した部屋にこっそりと住んでいます。
天馬からすると校内で生徒が亡くなろうが犯人が見つからなかろうが、心底どうでもいいのです。他のミステリー(サスペンス)小説とは違い、別に事件を解決しても探偵になんのメリットもありません。
ではなぜ彼が真相に解明のために探偵役を務めるかというと、解決してくれたらお金を払うという卓球部からの報酬のためでした。しかもその報酬の使い道はアニメグッズという。
もちろん、お金やその他の報酬のために事件の解決を目指す探偵は他の作品にもいますが、ここまで利己的で(どうでもいい)動機で事件解決を目指すのは新鮮でした。
登場人物との会話も「面倒だから教えない」とか「さあな」とか、通常の探偵役ならウキウキしながら語る場面も、天馬は関心がなさそうにぶった切るのもまた面白かったです。
②裏染天馬の洞察力が素晴らしい
裏染天馬は洞察力や推理力がずば抜けています。すなわちそれは作者である青崎先生がすごいということですね。
実に緻密に練られた設定。時間だったり小物だったり、ちりばめられた細かな設定のすべてが矛盾なくかつ無駄なく使われ、それでいて読者をアッと驚かせる真相。素晴らしいです。
柚乃の靴を見ただけで事細かに状況を推測したり、一見何の関係もなさそうな傘が実は重要なアイテムだったりします。
“平成のエラリイ・クイーン”とも呼ばれる作者の醍醐味はここにあり。ですね。
また、
・「第一章は事件とともに始まる」
・「第二章において探偵役が登場する」 …
といった形で、ミステリー小説の典型的な構成を目次してくれているのも遊び心があってとても好きです。
大変素晴らしい作品なので、ミステリー小説好きにはもちろんオススメです。
また、分かりやすい舞台設定とライトノベルっぽい文体なので、ミステリー(サスペンス)小説をあまり読んだことがない人へ入門書として紹介するのもいいな。と感じました。
※誤解を与えないように書きますと、「入門書」=つまらないということでは決してありません。
ただ、前述の通りラノベっぽくかつアニメネタが割と多いので、ノリが合うかどうかは読む人次第です。アニメ知識は全くなくても楽しめます。「ああ、天馬って変な人なんだな」と感じる程度です。
探偵として、これ以上格好の決めゼリフの悪い煽り文もないと思います。
引きこもりでアニメオタクで駄目人間の探偵役は、静かに告げた。
ザ・ロイヤルファミリー/早見和真/新潮社
Kindle Unlimited
妻夫木聡さんが主演の実写ドラマが、TBSテレビで2025年10月から開始しましたね。
ドラマ版のあらすじを見た感じ、小説とドラマでは一部ストーリーが違うようですね。
早見和真さんの小説はこれまでに「店長がバカすぎて(角川春樹事務所)」シリーズ、「アルプス席の母(小学館)」を読んできました。
「アルプス席の母」が非常に好みだったので、Kindle Unlimitedで読み放題対象になっていた本作も読んでみることに。
この記事を書きながら思いましたが、早見さんの作品はジャンルが広すぎですね。どのようにして複数のジャンルを調査し、ストーリーに落とし込んでいるのか本当に疑問です。
本作は僕にとって全く知識も興味もない「競馬」の世界で、読む前は楽しめるか不安でしたが、その不安は杞憂でした。めちゃくちゃ面白かったです!
本作の主人公:栗須栄治(くりすえいじ)は大手税理士事務所に勤めていましたが、退職してしまい次の就職先を探していました。
そんな時に友人の叔父:山王耕造と出会い、彼が社長を務める人材派遣会社へ入社すると共に、馬主でもある耕造社長と共に競馬の世界に長く深く関わっていくことになります。
本作は主人公:栗須の一人称視点で書かれています。
騎手、他の馬主、生産牧場の人々、調教師、記者…などの非常に幅広い人物が登場しますが、「ロイヤル」の名を冠する馬に関わる人達はチームとして一体感があります。
また、「栗須」の呼び方が「クリス」とカタカナ表記になることで、その人物とクリスとの信頼関係がわかるようになるのもまたいいですね。
固くて真面目だけど人柄の良いクリスが主人公であることも、本作の魅力に大きく貢献していると思います。
月並みな感想ですが、馬主は大変なんだなと実感しました。
ただ馬の金を出しとけばいいなんてもんじゃない。華やかなのは本当に一部のみ。
北海道やその他様々な場所を頻繁に訪れ、馬を見定め、騎手や調教師との調整も行い、レースに臨む。
大金で購入した馬が勝利するとも限らないし、才能のある馬でもケガをしてレースできなくなることもある。
勝たねば金持ちの道楽として後ろ指を刺され、家族との関係も犠牲にする。
ただ金持ちの道楽では成立しない確かなものがそこにはあります。
華々しい表舞台の裏にあるのは泥臭い努力や苦労、そして人間の娯楽に動物を巻き込んでしまっているという罪悪感。
みんなそれでも馬が、競馬が好き。それでものめりこんでしまうのはなぜなんでしょうか。本作を読むとその答えが見つかるかもしれません。
そんな馬主をマネージャーとして支えるクリスの絶対的な忠誠心が読んでいてとても心地よかったです。
第一章のピリッと緊張のある雰囲気だけれども社長を信じ忠誠する様と、第二章の堅苦しさはなくなったけれども不穏な雰囲気が、なんともいえず対照的で読者を惹きつけます。
ファミリーの外の立場でありながら、いやだからこそ誰よりも深く関わることができたクリス。彼は馬に関わることができて本当に幸せそうに感じました。
そして、しびれるタイトル回収。
素晴らしいタイトル回収は、小説や漫画の印象を強烈に残してくれますね。
二章に入り、ひやひやしながらも結末はどうなるんだと読んでいましたが、最後も良かったです!!競争戦績だけで素晴らしいエピローグだったんだなと感じさせる手法は見事!!
競馬に関わる全ての方の矜持を感じた作品です。
イシューからはじめよ[改訂版] 知的生産の「シンプルな本質」/安宅和人/英治出版
Kindle Unlimited
本作は2010年に出版されましたが、非常に人気があり2024年に改定版が出版されました。
著者である安宅和人(あたかかずと)さんの経歴が異色だしすごいしで驚かされます。
東京大学大学院を終了後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社しマーケティングを担当、その後イェール大学で脳神経科学の博士号を取得し、ヤフー(現Zホールディングス)に入社、というスーパーマン。
脳科学者なのにマッキンゼーでマーケティングしていたって何事でしょう・・。
本作は、そんな作者のこれまでの知見やノウハウを余すことなく取り込み、課題解決や生産性向上について本質的かつ有効な手法がまとめられていますが、それでいて平易で誰にもわかりやすい良書です。
専門的な単語も出てきませんし、出てきたとしても読めてしまいます。素晴らしい。
「イシュー」、「MECE」、「思考を転がす」など、以前僕がグロービス経営大学院のクラスを受講していた時に聞いた単語や考え方がそこかしこに出てきて、復習をしているような感じで大変有意義でした。
本作は著者も以下のように表現しているように、「一度読んだだけ終わり」という本ではありません。
課題解決や戦略検討の時に幾度となく読み返し、自分で経験しながら内容を体得していく。という使い方が適切だと感じました。
この本を1回読んですべて理解するのはかなり難しいかもしれない。書いてあることを本当に実感をもって理解するには、テキストの丸暗記ではなく、クルマの運転や恋愛と同じでどのひとつもあなたが自分で体験する以外の方法はない。体験することでちょっとずつわかるようになる。イシューからはじめられるようになるにはどんな人も時間がかかる。実際に体験することで、一行ずつ理解できる部分が広がる、そういう本だと思う。
本作のタイトルになっている「イシュー」について、作中でも丁寧に説明がされています。
個人的には、「イシュー」とは、現状と理想の間にある差を解決するための本質的な課題であり、特定+対策することでそのギャップをとても効果的に埋めることができるもの。
と理解しています。(著者の伝えたいことを十分に表現できていないとは思いますが・・)
そして、イシューには必ず「答え」があります。
つまり、(その時点で)答えがない問題はイシューではなく、考えるだけ時間の無駄ということですね。
一心不乱に大量の仕事を行い、努力と根性で仕事をこなして解決を図るという「犬の道」では生産性は上がりませんし、根性で仕事を捌くことは長期的にはできません。シンプルに体力を削るだけですしね。
本当に大事なことは、数多くある課題から本当に注力して解決するもの、すなわち「イシュー」は何かを特定することです。
そして、その特定したイシューを解決するために行うべきアクションの道筋を立て、思考を転がし、仮設を検証し、立体的な論理展開を構築する。
本作にはその手法が丁寧に記載されています。
そして、概念的でわかりにくい箇所はしっかりと具体例を挙げて説明してくれています。
一例として、コンビニチェーンの売上が下がっているのは、店舗が減っているのか、1店舗あたりの売り上げが下がっているのか?
要素を分解し、目的に応じた分析をしないと、取るべき解決策が見えてこないですね。
また、仮設を立ててそれを検証していくことが大事なのですが、「自分たちの仮説が正しい」と信じ込み、それを肉付けするような情報ばかりを集めてしまう人がほとんどだと思います。
しっかりとイシューを特定し、検証の過程で当初の仮設が崩れたらさらに思考を転がし、二次情報ばかりでなく自らの足や耳で一次情報を収集し、抜け漏れのない検討を行う。
僕もこういった思考術ができるよう本作に書いてあることを意識的に実践していきたいです。
何か会社の研修後のレポートのような感想になってしまいましたが、本作は本当に読んで損はありません。難しそう、固そうというイメージを持っている方。読んでみてはいかがでしょうか?
ただ、著者は最後の方で、評価されるのはどれだけ頑張ったか?という過程や努力でなく、結果でのみである。という主張をされています。
プロフェッショナルは結果が全て。肝に銘じたいです。
蝋燭は燃えているか/桃野雑派/講談社
購入本
同著者の「星くずの殺人(講談社)」を読了してすぐに、本作の文庫本発売の情報を知りました。というわけで早速発売日の10月15日に購入し読んでみました。
本作は「星くずの殺人」の続編で、前作では乗客として宇宙に行った女子高生の周(あまね)が主人公です。前作のような「宇宙」や「SF」的な要素は一切ありません。
とはいうものの、前作を読んでいることが前提のストーリーですので、未読の方は前作を読んでから本作を読みましょう。
失踪した友達へメッセージを届けるために宇宙から配信した動画が大炎上。
周は迷惑系動画配信者につきまとわれたり、動画のコメント覧が荒らされたりと散々な目にあいます。
そんな中、その動画のコメント覧に「まずは金閣寺を燃やす」という不穏極まりないコメントが書かれます。
その直後に本当に炎上する金閣寺。そしてその後も次々に炎上する京都の町。
これが実際に起こっていたとしたらとんでもないことになるでしょう。
周と、同じく女子高生の芽衣(めい)は、失踪した友人である瞳子(とうこ)を探す内に、この前代未聞の大炎上事件の真相に近づきます。
そんな本作のテーマは加害者と被害者、そしてその家族です。
ネット炎上、マルチ詐欺、給付金詐欺、殺人・・・それぞれの事件には被害者がいて、加害者がいて、その加害者には家族がいる。
加害者の家族だというだけでもいわれのない誹謗中傷や差別、時には暴力を受ける。
犯人は何を思って京都に火をつけたのか。友人である瞳子は見つかったのか。
明らかになった黒幕の本当の目的は、とても悲しいものでした。
周は基本的に大人や教師を信頼しておらず、作中でもしばしばそういった描写はあるのですが、前作の主人公:土師のことは唯一尊敬できる大人としてみなしているのが、前作の読者としても嬉しいですね。
著者は京都生まれということもあり、これでもかと京ことばや京都の地名、京都ジョークなどが作中にちりばめられています。
京都に詳しければより楽しめる作品だと思います!
一橋桐子(76)の犯罪日記/原田ひ香/徳間書店
Kindle Unlimited
2022年にNHKで松坂 慶子さんの主演でドラマ化もされている本作。
原田ひ香先生の作品は「お金」をテーマにしていることが多いですね。
タイトルがまず物騒ですけど、表紙の柔らかな絵と(76)という年齢で物騒さが中和されてしまいます。
と、思い読み始めると「万引」とか「闇金」とか「殺人」とか、各章の名前がいちいち物騒。いいアップダウンです。
本作の主人公は、独身で家族もおらず、定職もなく、仲良く共に暮らしていた友人:知子に先立たれ、さらに悪いことにお金を盗まれてしまった高齢者の桐子。
これまで2人で住んでいた賃貸マンションも1人だと家賃が払えなくなってしまいました。
今後の生活に不安を感じた彼女は、犯罪を犯して刑務所に入れば衣食住に困らない生活が送れることを知り、どのような犯罪をすれば刑務所に入ることができるのかを考えるようになります。
量刑が思い罪を探すのにワクワクしているのが新感覚で面白いです。
普通は「そんなに懲役が長いのか・・」となりますが、桐子にかかれば「そんなに懲役が短いのか・・・残念」となってしまいます。
ご高齢の方が主人公なのでスピード感はないし、多分ひどいことにならないのだろうなとは思うのですが、一方で脇の甘さと人生経験の無さ、そして思いついたらすぐに行動する謎のフットワークの軽さで、読んでいてソワソワします。
まるで自分の祖母や母親を見ているような不思議な気持ちになります。
今の自分は桐子のことを他人事のように見ていますが、世の中には似たように経済的な余裕がない年金生活者も多くいるでしょうし、僕たち世代が同じ年齢になった時に彼女のこと上から目線で同情できるかはなんとも言えませんね。
そんな桐子は、懲役となることができる犯罪を探す過程で、様々な人に出会い、経験をして前向きになります。
桐子は無事犯罪をやり遂げ、刑務所内で衣食住の心配がない生活ができるようになったのでしょうか。
続編である、「一橋桐子(79)の相談日記(原田ひ香/徳間書店)」も2025年8月に発売されたそうですので、こちらも読んでみたいですね。
仕事は輝く 石を切り出すだけの仕事に働く喜びを見つけた物語/犬飼ターボ/飛鳥新社
Kindle Unlimited
少し変わったペンネームである犬飼ターボ先生。
ビジネス書と小説を融合させた「成功小説」というジャンルを確立したことから、「成功小説家」と呼ばれています。
ビジネス書はタメになるんだけど、どこか退屈だったり説教臭くなったりしがちです。
それを小説の中に折り込むことで、読みやすいけど成功するための実践的な内容も書かれていると、いう大変おトクなハイブリッド小説として成立させています。
以下は自己啓発本になりますが、「夢をかなえるゾウ(水野敬也/飛鳥新社)」シリーズや、「賢者の書(喜多川泰/ディスカヴァー・トゥエンティワン」なども似たような方式ですね。いずれも名作なのでぜひ読んでみてください。
さて犬飼ターボ先生の作品は、最初に読んだ「CHANCE チャンス(飛鳥新社)」に続き本作が2作目です。ページ数も166Pと短めでサクサクと読めてしまいます。
本作は、有名な「石切り職人」をベースにしたお話。
「3人の石切り職人(石工)」とは、3人の石切り職人に何をしているのか尋ねたところ、
・1人目は「生活費を稼ぐために石を切っている」と語り、
・2人目は「技術を身につけるために石を切っている」とか、「教会を作るために石を切っている」等を語り、
・3人目は「皆が心安らかに過ごせるような教会を作るために石を切っている」と語る、
といったように、同じ仕事でも気の持ちようで仕事の意味合いが変わってくるというお話です。色んなパターンがありますが、概ね上のようなことが書かれています。
本作の主人公は、湾岸都市で城壁を作るために石を切き出す仕事をしている青年:アルダ。
アルダは身体も小さくミスも多いため、この石切り職人としての仕事を苦痛に感じていました。
そんな時、謎の商人から買った“魔法の巻物”。
その巻物は、仕事の悩みを解決し、幸せと成功をもたらす“秘宝”を学ぶことができるというものです。
高価な巻物を半信半疑で買ったアルダですが、接した人や経験から得た学びや気づきで文字が浮かび上がってくる巻物のおかげで、徐々に良い方に良い方に変わっていきます。
本作では以下の様な成長のきっかけを、アルダを主人公とした物語で具体的に学ぶことができます。
・漫然と仕事するのか、それとも自分がやっている仕事に意味を考え前向きに働くのか。
・専門家としての意識をもち、何をすべきか考えながら行動する。
・自分を責めたり謝ったりする時間を改善にあてる。
・自分の仕事の結果、つまり仕事が何に役立っているかを知ること。
・仕事を作業としてとらえると単純でつまらないものになる。
個人的に一番ハっとさせられたのは以下のフレーズです。
おそらく、この本を読む読者のそれぞれの状況や心境で、心に響くフレーズは変わるはずです。
自身にとって何が今必要な考えか。
仕事に悩んでいる人もそうでない人も、読んでみると必ず参考になると思います。
“信頼〟と〝権限〟も仕事の報酬なのだと気付いた。信頼を得ると、自由にできる範囲が広がる。すると、やりがいを感じる。
気になる方は犬飼ターボさんの他の作品も読んでみてください。
アマテラスの暗号/伊勢谷武/ Independently published
Kindle Unlimited
またもや著者の経歴がヤバいです。
スウィンバーン大学(メルボルン)卒業後、ゴールドマン・サックスでトレーダーとして勤め、1996年に投資家情報関連の会社を設立、そして2019年に本作を発表。
そんな方がなぜ小説を書いたのか・・本作を読めばわかります。
本作を読んでみるとわかりますが、情報量がめちゃくちゃ多く、また根拠/確証を示しながらの主張のため説得力も抜群です!
どうやって調べてまとめ上げたんでしょうか・・・ただただ脱帽です。
Kindle版の表紙に書いてある『「ダ・ヴィンチ・コード」を凌ぐ衝撃の名著!』という煽り文につられて読み始めましたが、煽り文の通りなかなかの衝撃でした。
日本の神話、そして天皇家の成り立ちの秘密が小説形式で紐解かれます。
高校生の頃に「ダ・ヴィンチ・コード」を読んだ時と同じ、いやそれ以上の衝撃的な気持ちになりました。
実際に読み始めてみると、プロローグで読むのを諦めそうになりました。
幸いプロローグは短めだったのですが、その後も出てくる歴代天皇や日本神話の神の名前の数々。日本史が苦手で世界史を選択した僕にとってはなかなか読み進めるのに時間がかかりました。
でも、物語が真相に近づくにつれ、どんどんと物語に引き込まれていきました。
物語はニューヨークのホテルで神道の宮司(主人公の父親)とユダヤ教の信者が殺害されるところから始まります。
主人公である賢司はその死の真相を調査するために同僚たちと日本を訪れ、そこから日本の歴史を紐解く壮大な物語に巻き込まれていきます。
本作では、偶然では片付けられないユダヤ教と日本神道の共通点がこれでもかと挙げられ、そして日本人のルーツまでもが詳らかにされます。
フィクションではなく、史実や実在の人物、実際のモノや建物の写真などが確証として登場します。読んでいて「それって何?」となっても、すぐに挿絵や写真が出てくるのも理解を深める上でありがたいですね。
範囲が非常に幅広いのにどれもこれも深く掘り下げているのが素晴らしいです。
体系的に学ぶことの重要さがこれでもかと感じさせられます。
急に日本の魚がなぜ美味しいのかの話が出てきますが、本筋とは違うところで思わず感心してしまいました。著者はこういう細かなところも手を抜かない性分なのだろうというのがわかります。
そして、そこから繋がる八百万の神の説明や、日本人の思考方法には大いに納得させられました。
本作を読めば読むほど日本という国の特異性が明らかになります。
本作に書かれている内容を信じるも信じないもこの本を読んだ読者次第です。
何について書かれているのか、書かれていることは事実なのか、事実だとしたらどうするのか。ぜひご自身の目で確かめてみてください。
Kindle Unlimitedなら、月額980円(税込み)で本が読み放題です。
Amazonの読書サブスクサービスです。
月額980円(税込み)で、小説、ビジネス書、漫画等 様々なジャンルの本が読み放題です。
以下ボタンから、Kindle Unlimitedに登録ができます。
初回30日は無料なので、試してみてはいかがでしょうか!
以上、2025年10月の読了本でした!
早いもので2025年もあと2ヶ月。どんな素晴らしい本に出合えるか楽しみです!
おわり

