ミステリー好きにおススメの漫画「それでも町は廻っている」の紹介

皆さんは「それでも町は廻っている」(通称“それ町”)という漫画をご存じでしょうか。
僕はこの“それ町”が全ての漫画の中で一番好きと言っても過言ではありません!
ぜひ皆さんにもこの名作を読んでほしくて、紹介記事を書いてみました!
この“それ町”ですが、僕のようにハマる人にはめちゃくちゃハマります。
特に読書好き/ミステリー小説好きはぜひ一度読んでみてほしいです!
一方、ハマらない人には「ちょっと変な女子高生の日常もの漫画じゃん。何が面白いの?」と感じられるかもしれませんが、まあそこは好みです!
最初に言ってしまうと、1巻を読んだだけではこの作品の良さが十分に感じられません。
「女子高生がメイド服を着て町の住人や学校の友人たちと日常生活をする。」
という、いわゆる量産型の女子高生日常系漫画に見えるからです。
(これは作者と編集側のどちらの意向かはわかりませんが・・・)
でも2巻以降は徐々に本領を発揮し気が付いたらハマっている。恐ろしい漫画です・・。
・“それ町”を読んだことがない人
・読者やミステリー小説が好きで漫画も好きな人
・完結済で、何度も繰り返して楽しめる漫画を探している人

この記事は僕が”それ町”の好きなポイントを勝手に書きなぐっているだけですので、ご了承ください!
“それ町”の基本情報
最初に「それでも町は廻っている」の基本的な情報をまとめます。
①作者
作者は石黒正数(いしぐろまさかず)さんです。
福井県ご出身のため、作中にもちょいちょい福井県のネタが出てきまます。
石黒先生の作品は他にいも以下のようなものがあります。
・ネムルバカ(徳間書店) 全1巻
・天国大魔境(講談社) 現在12巻まで発刊 ※連載中
・木曜日のフルット(秋田書店)全11巻
ネムルバカは、久保史緒里さん(乃木坂46)・平祐奈さんのW主演で今年実写映画化もされましたね。
②連載誌・連載期間・巻数
本作は、月刊漫画雑誌「ヤングキングアワーズ(少年画報社)」で連載されていました。
連載期間は2005年~2016年までで、完結済の作品です。
単行本は全16巻で、最終巻の16巻が2017年に発売されています。
③アニメ化
2010年に全12話でシャフト制作の元、アニメ化もしています。
dアニメやDMM TV等で観ることができますので、ご興味がある方はぜひ観てみてください。
・dアニメストアへは以下バナーをクリックすることで登録できます!

・DMM TVは以下の「それでも町は廻っている」と書かれたリンクをクリックしてみてくださいね!
それでも町は廻っている
このアニメ、登場人物などが動いておりとても観ていて楽しいのですが、“それ町”の良いところがあまり含まれておらず、普通の日常モノアニメのようになってしまっているのが残念です!
そして最後まで「歩鳥」のイントネーションに慣れませんでした。
あらすじ
“それ町”のあらすじなどを紹介しますね!
①舞台
舞台は東京にある「丸子」という架空の町です。土地勘のある方はおわかりかもしれませんが、東京都大田区に実在する「下丸子」という町をモチーフにしています。
というかほぼ「下丸子」の名前を「丸子」に変えただけですね。
作者も上京時に実際に下丸子駅周辺に住まれており、とても気に入ったので本作の舞台にしたようです。
時代設定は連載開始された2005年頃だと思います。(20年前の作品・・・)
僕もちょうどこの頃学生でしたので、懐かしいものがたくさん描かれていました。
ガラケーとか、ニンテンドーゲームキューブとか。
②登場人物
1)主人公:嵐山歩鳥(あらしやま ほとり)
主人公の嵐山歩鳥は、尾谷高校に通う高校1年生です。家族は両親と弟妹が1人ずついます。
丸子商店街付近に住んでおり、高校入学とほぼ同時に「シーサイド」という喫茶店でメイドとしてバイトを始めます。
ミステリー小説をこよなく愛し、将来は探偵を夢見るちょっと抜けている高校生です。
2)その他の人物
尾谷高校の同級生や先輩/後輩、丸子商店街の住人達、宇宙人、雪女、幽霊・・・などなど。多種多様な人物(およびそれ以外)が登場します。
“それ町”の好きなポイント
基本的な情報はこれくらいにして、僕が”それ町”の好きなポイントを紹介します!
正直書ききれないほどあるのですが、ネタバレを回避する関係上絞っています。
①登場人物が魅力的
好きなキャラが多すぎて1人にとても絞ることができません。
どのキャラクターも人間味があって、愛すべきポイントがあって、読めば読むほどキャラの魅力が深まります。
1)歩鳥
上でも紹介したように、歩鳥は本作の主人公です。
歩鳥はアホです。間違いなくアホです。具体例を書いても良いのですが読めばわかります。
一方で、読書家で記憶力もよく、あまりにも数学ができないためミスリードされてしまうのですがちゃんと勉強もできます。
家では一番お姉ちゃんで弟妹の面倒見も良く正義感もあります。
そしてこれほど主人公に魅力がある作品はなかなかないのでは、と思わせてくれます。
2)紺双葉(こん ふたば)
紺双葉は歩鳥と同じ高校に通う一年上の先輩で卓球部のエースです。
“それ町”のもう1人の主人公と言っても過言ではないでしょう!
みんな「紺先輩」と呼ぶので、それ以外の呼び方をされると読者がくすぐったさを感じてしまいます。
スタイルよし運動神経よし。でも金髪+ピアスと目つきの悪さで人を寄せ付けないナイフのような鋭さを持っています。それにも理由はあるのですが・・。
そんな紺先輩ですが、低血圧過ぎて寝起きが壊滅的に悪かったり、両親のことをパパママと呼んでいたりオバケが怖かったりと、可愛い面もあります。
ちなみにこの紺双葉は作者のお気に入りっぽく、「木曜日のフルット」など作者の他作品にもよく似たルックスのキャラクターが登場します。(いわゆる「スターシステム」ですね)
また、上で紹介した「ネムルバカ」の主人公二人組は、歩鳥と双葉に似ています。というかほぼ同一人物です。大学生になった歩鳥と双葉はこんな感じなんだろうなというのが見られます。
◆学校の友人・教師たち
・歩鳥に恋する真田広章はザ・恋する男子高校生で面白いです。妄想と脳内会議が多いですが男気もあります。
・共に喫茶「シーサイド」でメイドとして働く辰野俊子(タッツン)は、容姿端麗頭脳明晰なのにオタク趣味があります。
・歩鳥の担任の森秋先生(モリアーキー)は冗談の通じないお堅い数学教師なのに熱狂的な野球ファンで歩鳥に振り回されています。
◆丸子商店街の住人
・喫茶「シーサイド」のマスター兼メイド長の磯端ウキは、酒タバコパチンコをこよなく愛する不良老人だけど、急にメイド喫茶を始めます。
・古道具屋で店番をしている亀井堂静ねえちゃんは、ボーっとした雰囲気だけどどこかミステリアス。
などなど、魅力的なキャラクターはたくさんたくさんいますし、色んなキャラの色んな側面を見ることができます。
本作にはいろんな子どものキャラクターと、大人のキャラクターが登場します。
普段はオトボケだったり主人公の歩鳥にツッコまれたりしている大人たちですが、要所要所でいい味を出してくれます。
小学生や高校生では気づけないことや限定的な行動範囲など、普通の日常系漫画ではなんとなく学生がノリでクリアしちゃいそうなことも、本作ではしっかり大人たちが対応してくれます。
②主人公:歩鳥の成長が楽しい
上でも書いた通り、歩鳥はちょっと抜けています。実は勉強ができるのですが人間的にアホです。特に初期はすごい破天荒です。
マンガに出てくるような高校生探偵になるため(なれるはずがないのですが)、学校で何か事件が起こることを期待したり、東大を急に目指してみたり、高級な万年筆を糸ノコで切断し改造したり、そしてその後交通事故に巻き込まれたり・・・・
でも、本作で起こる様々な出来事や事件を経験し、人間的に成熟していきます。
ちゃんと卒業付近には頼りがいのあるキャラになってきますし、周囲の歩鳥を見る目も変わってきます。
特に、歩鳥が将来の夢と進路を見つけるエピソードは、これまでの点と点がつながり、夢までの道筋が見えるお話しでとても好きです。見つける場所が図書館というのもまた読書好きにはたまりませんね。
その夢に一度気づくと、夢を実現するためにやるべきことが明確になり、居ても立ってもいられなくなりソワソワする感覚がすごい実感できますし、読んでいる僕たちも思わず応援したくなります。
また、単行本の最終巻に収録されているエピローグは必見です。
③とにかくジャンルが幅広い
一見日常系漫画に見えますが、いろんなジャンルのお話があります。
中でもミステリー系のお話が多いですね。
描写トリックや叙述トリックはもちろん、読者の先入観を逆手にとって真相を推理させてくれるようなお話もあります。作者も主人公の歩鳥もミステリー好きなので、ここは力を入れていますね。
SFモノもあります。死んで天国に行ったり、宇宙人が出てきたり、謎アイテムが出てきたり。時にSFショートショートを読んでいるかのような気分にさせてくれます。
「べちこ焼き」の回とかもう大好きです。
大きな流れとしては高校3年間を卒業に向けて進むのですが、一話完結型の回もできてしまうのが本作の良いところですね。
他にも、スポーツや部活を頑張る姿を書いたり、ヒューマンドラマを書いてみたり。
もちろん高校生ですので恋愛要素もあったり、高校生のイベント(就学旅行や学園祭)もあったりします。
そして、基本的にギャグテイストなんですが、感動したり逆に後味が悪くなったり考えさせられたり。色んなジャンルをごちゃ混ぜにしたおもちゃ箱のような漫画という感じです。
④ノスタルジーを感じることができる
「ノスタルジー」とは、過去の経験や出来事、人々等を懐かしく思う気持ちを意味します。
上にも書いた通り、本作にはいろんな年齢、職業のキャラクターが登場します。
自分が読むタイミング、年齢によって、色んな視点での気づきを与えてくれます。
・子供の頃は大きいと思っていた小学校の遊具が実はとても小さかったこと
・夜更かしして、初めて日付をまたいだ夜のこと
・修学旅行特有のふわふわした感覚
などなど、昔体験したであろう様々なシーンについて、それをまさに今体験している側と、それを思い出している側。
そのどちらのキャラも登場することで、どちらの気持ちも疑似体験することができます。
そしてその解像度が高すぎで、心にグサっと刺さってきます。
「僕らが小学校の時はこう感じていたな」とか、「大人に見える教師や社会人にも学生時代があったんだな」とか、を実感させてくれます。
⑤何度読んでも新発見がある
僕がこの作品で一番好きなポイントはここです。
本作は繰り返し読めば読むほど味が出てくるスルメのような漫画です。
2度目3度目と繰り返し読むことで、いろんなことに気づくので再読必須です。
というか一回読んだだけではこの漫画の魅力は完全には味わえません。
というのも、この“それ町”は時系列がバラバラです。
何を言っているかわからないと思いますので補足しますと、この漫画は高校1年~3年の卒業までの間を行ったり来たりしながら進みます。
3年生の受験勉強の回の後に2年生の回があったりします。
そんなバラバラな時系列ですが、よくよく読むと読者でも正しい順番が推測できます。
それはキャラ同士の関係性だったり、歩鳥の髪型だったり、服装だったり、所有物だったりします。
「歩鳥がこの髪型だからこの回はこの辺りだな」とか、「この置物があるからこの話の後か」とかを読みながら考えるのがミステリー好きとしてはとても楽しいです。
さらに、色んなキャラやモノがいたるところにしれっといます。
「うわ、このキャラがここにいる」とかはしょっちゅうあり、気づくと面白かったりゾッとしたり。
実際僕も3~4回は読み返していますが、大げさではなく何度読んでも新発見があります。
そして最終盤の15-16巻では、怒涛の伏線回収と色んなイベントが完結を迎えます。
まるで、RPGでこれまで倒したボスが最終ダンジョンで順番に出てくる様な感じでテンションが上がります。
また、形式的には16巻の最後の回が最終回なのですが、本当の最終回はその前にあるっぽいです。前代未聞です。時系列がシャッフルされているからこそできる手法です。
どういうことかはご自身で確かめてみてください。
時系列がバラバラですので、暇なときに一冊をテキトーに選んで読む、なんてのも楽しいです。
聖地巡礼もしてみました
上でも書いたように、本作は東京都大田区の下丸子駅周辺が舞台の漫画です。
というわけで、東京に住んでいた時にいわゆる「聖地巡礼」をしてみました。
下丸子駅を降り周辺を散策すると、漫画で観た景色を実際に見ることができ、キャラ達が実際にどのような環境で暮らしていたかを感じることができます。

喫茶「シーサイド」のモデルとなった喫茶店「アルプス」はほぼシーサイドそのものです。
※残念ながらすでに閉店されてしまっているようですが、建物はまだ残っています。下の写真の一階部分ですね。

また、作中に何度も登場する紺先輩が住んでいるマンションへ続く道もそのままですね。

他にも真田の自宅である鮮魚店や、いろんなイベントがあった神社など。
漫画で見かけた景色を見ることができます。
品川からも比較的アクセスは容易ですので、関東圏在住の方は行ってみてもよいのではないでしょうか。
「公式ガイドブック 廻覧板」もあります
原作完結後、2017年に発売されたのが「それでも町は廻っている 公式ガイドブック 回覧板」です!
“それ町”にハマった方なら買って損はありません。
本記事のアイキャッチ画像にも写っているアレです。
登場キャラクターのプロフィールや設定画などはもちろんのこと、原作未収録の回などもあります。また、作者による全話の解説や、正しい時系列の順番を知ることができます。
以上、「それでも町は廻っている」の紹介記事でしたー!
この記事を読んで興味を持った方はぜひ読んでみてくださいね。
僕はもう一周してきます。
おわり