2026年9月の読了本【9冊】
9月は小説が8冊、エッセイが1冊の計9冊でした。9月に9冊ってなんだかいい感じ。
9月はマレーシア、シンガポールと2回海外に行ったこともあり、移動時間が長く読書がはかどったように感じます!
今月特に良かった本は、小説なら「存在のすべてを」と「聖女の救済」でしょうか。エッセイ 「うたうおばけ」もすごい良かったです。
では、9月に読了した9冊についてネタバレなしで紹介します!

先月(8月)の読了本については以下記事にまとめています!


①コーヒーが冷めないうちに/川口俊和
②invert 城塚翡翠倒叙集/相沢沙呼
③存在のすべてを/塩田武士
④これは経費で落ちません! 〜経理部の森若さん〜/青木祐子
⑤スモールワールズ/一穂ミチ
⑥パッキパキ北京/綿矢りさ
⑦うたうおばけ/くどうれいん
⑧星降り山荘の殺人/倉知淳
⑨聖女の救済/東野圭吾
コーヒーが冷めないうちに/川口俊和/サンマーク出版
<図書館>
2017年本屋大賞ノミネート作品。有村架純さん主演で実写映画化もされていますね。実写映画のポスターをこれまでに何度か見たこともありますし、「4回泣けます」というキャッチコピーも記憶にあります。
とはいえ全然中身を知らなかったので、図書館で見つけて読んでみることに。
「喫茶フニクリフニクラ」には、過去に戻ることができる席がある。
過去に戻れるのは、カップに注いだコーヒーが冷めてしまうまでの間だけ。席からも動けない。会えるのはこの喫茶店に来たことのある人のみ。他にも細かいルールがいくつかあります。
そして、過去に戻っても現実は変わらない。
それでも、時間を超えた人は何かに気付き、何かが変わる。
読んでみて、登場人物が正直分かりにくかったです。名前から性別がよくわからないし、似た名前もある。誰と誰がどんな関係?っていうのをようやく中盤で理解しました。
一方で、時間を超えるための条件が多いところと、戻ってもルールが厳しく制限されているところは好感が持てました。
過去に戻り、どう行動しても現代は変わらないのがまた深みを増していますね。
あの時聞けなかった真実、あの時に面と向かって会えなかった人、記憶がなくなる前に自分宛てに書かれていた手紙・・・etc。そういったものを知った後、過去に戻った人は皆晴れやかな気分になります。
僕だったら、いつの誰に会うために過去に戻るだろうか。現実は何も変わらないのに、戻って何を知りたいのだろうか。読みながら、それぞれの答えがあるように感じました。
あの日に戻れたら、あなたなら誰に会いに行きますか?
invert 城塚翡翠倒叙集/相沢沙呼/講談社
<図書館>
城塚翡翠シリーズの2作目。
前作の「medium 霊媒探偵城塚翡翠(講談社)」で衝撃を受けた僕は、前作を読んだ瞬間にこの2作目を予約しました。
本作は400ページ超の分厚い本で、中編3編で構成されています。といっても最後の「信用ならない目撃者」がほぼ半分を占めているのですが。
前作を読んでから本作に進むと、登場人物たちの何気ない言動まで楽しめます。パートナーである真からの翡翠の扱いの雑さも面白い。笑
今回の視点は各話の犯人たちと、翡翠のパートナーである真の視点をいったりきたりして進みます。犯人の視点では、無邪気そうに見える翡翠からの指摘にドギマギし、冷や汗が出る感覚を疑似体験できるのが興味深いというか、心臓に悪いというか。
前作を読んでいない方もいらっしゃると思うので、なかなかネタバレ的な点がかけず抽象的な感想にならざるをえないのが残念ですが、いやー今回も面白かったです。
非常に細かいものが重要な意味を持っていたり、ささいな言動が大事な真実の伏線だったり、今回も設定の緻密さと奥深さに驚かされます。一体作者の頭の中はどうなっているんでしょうね。
一番興味深かったのはやはり本作のおよそ半分のページ数を使った「信用ならない目撃者」ですね。この話の犯人は、元刑事で現在は探偵である雲野という男。雲野は警察がどのように捜査し、どういった証拠が残るのかを完璧に理解しているため、証拠が残らない形で殺人を成し遂げます。唯一の誤算は、離れたマンションのベランダで酒を飲んでいた人物が、犯行を目撃していたかもしれないこと。
そんな雲野を前に、珍しく苦戦して後手に回る翡翠を見ることができます。雲野が犯人だと立証するのが非常に困難な状況の中、翡翠はどのようにして真相にたどり着いたのでしょうか。
本筋と関係ないですが、「信用ならない目撃者」の中で書かれている、推理小説に関する考察と読者への皮肉がグサっと刺さりました。ミステリー小説でたまに犯人を当てることがあるのですが、それで良い気になっている読者を打ちのめすこと間違いなし。気になる方は読んでみてください。
確かに本作は面白いです。でも、毎回犯人が殺人を犯し、翡翠と出会い、翡翠に詰められながらも確たる証拠は出ず、もう一歩というところでなんでもない言動からヒントを得て、犯人を問い詰める。というワンパターンだったので、「前作の方が面白かったかなー」と読みながら途中で感じてしまいました。
が、今回も相変わらずひっくり返されました!!
叙述トリックとも言えるのでしょうか、まったくその可能性には思い至らなかったです。かくして、読み終わったらまんまと作者と翡翠の手の上で踊らされていました。ぜひ1作目から読んでみてくださいね!
存在のすべてを/塩田武士/朝日新聞出版
<購入本>
第9回渡辺淳一文学賞受賞、2024年本屋大賞第3位の本作。
ずっと気になっていた本。マレーシア出張があったので、珍しく本を購入しました(古本ですが・・・)。2027年2月に実写映画が公開されるとのことです。
本作は、平成3年に発生した連続児童誘拐事件の場面から始まります。
読んでみて初めて感じましたが、誘拐事件の対応って難しいんですね。
警察が対処する事件の中で、誘拐事件のみが、事後対応でなくその場での現在進行系の対応が必要。しかも犯人の場所や現場も確定しておらず、人質の生死も不明な場合もある。状況がどう変わるかも分からないし、警察の指示に従ってもらう家族への指導やコントロールも難しい。
そしてなにより、結果論で評価されるのが辛いところです。人質になにかあっても、身代金を渡してしまっても、犯人を逃がしても、完璧じゃないといけない。
平成3年に発生した誘拐事件は未解決となり、被害男児である内藤亮君は誘拐されたまま生存が絶望視されてしまいます。ところが、空白の3年間を経て、亮君はしっかりしつけられた状態で突然戻ってきます。
本作では、この事件から30年後。当時を知る新聞記者:門田が真相を明らかにするストーリーを追いかけることになります。やけに描写が細かいなと感心したのですが、著者はもともと新聞社に勤務していた過去があるとのこと、納得しました。
前半の誘拐事件パートはやや退屈に感じながら読みました。
しかし、中盤以降、絵画がメインになると引き込まれ、同時に真相が徐々に明らかになっていきますので、一気に読み進めました。
気になるのは、いかにして“あの2人”が出会い、そして、どのように過ごしたのか。いつか必ず終わりを迎える有限の眩しさが儚いですね。
本筋とは逸れますが、まったく知らない画商や画廊、絵画界を知れたのも良かったです。小説にはこういった、自分の知らない世界を知ることができる良さがありますね。
それにしても、現実の多くの業界や組織にも通じるものを感じました。実力では判断されず、いかにうまく世渡りができるかで決まる世界。天才的な才能を持ったのに、やることは業界内の政治と私利私欲しか考えない人間のご機嫌取り。そして道を外れたものは徹底的に村八分にする。これはやるせない。
周囲があまりにも政治的で、僕は今、芸術とかけ離れたところでもがいています。金がないと悪循環に陥るシステムなので、僕みたいな弱きものは本当に蟻地獄ですよ。
それぞれの人が、それぞれの会いたい人に再会できた終章。
最初の展開からは想像できなかった最後だけど、とても良かった。
これは経費で落ちません! 〜経理部の森若さん〜/青木祐子/集英社
<Kindle Unlimited>
題名は知っていた本作。Kindle Unlimitedで読み放題対象だったので読んでみることに。
この文章を書きながら、なんとすでにシリーズ14作目まで発売されているということを遅ればせながら知りました。すごいですね。
2019年には多部未華子さん主演で実写ドラマ化もしています。確かにこれはドラマ化しやすそうだし、サラリーマンに刺さりそうな内容です。
本作の主人公は、中堅の石鹸・化粧品メーカーである「天天コーポレーション」の経理部に勤める森若沙名子27歳。彼氏はいないが、きっちりとした労働と適正な給料、休日の息抜きなどで、自身が考える完璧な生活を送っています。経理という立場上、社内の金勘定に関するいろんな業務が彼女のもとに集まってきます。
自分の会社と大分違う部分もあり、経理の仕事の部分自体にはあまり共感はできませんでしたが、あくまで沙名子が経理目線で考えるのが面白いですね。
でも、決して融通が利かないのではなく、しっかりと会社全体のバランスなどを考慮し、公私混同はせず、イーブンになるように判断して着地させるところに非常に好感が持てました。営業マンと客が交際している可能性があろうが、派遣社員が妙な動きをしていようが、適正な数字ならそれでいい。
読んでいると、沙名子の考え方は非常に合理的で賛同できます。一方で、確かにこういうタイプの同僚がいると少し扱いづらいかもしれません。そんな絶妙なバランスがこの作品をさらに魅力的にしているのでしょうね。
それにしても、程度は違えどどこの会社にも変な人はいるんだなぁということを改めて実感しましたし、人間関係というのはやはりめんどくさいですね。
「特別枠」として扱われ自分勝手に動く秘書課、大勢の前で被害者ムーブをかますくせに自分の何が悪いかわかっていない派遣社員、社内のゴシップネタや恋愛ネタに執着している女性社員などなど。このあたりの「あるある」という既視感や共感が、本作がヒット作たる理由の一つなのかもしれませんね。
個人的に一番お気に入りの登場人物は、経理部の後輩:佐々木真夕です。彼女に対しては好感しかないです。
サクッと読めますし、上述のとおり共感できるポイントも多いので、気になる人は読んでみては。本記事作成時点で14作も出ているので、気に入ったらしばらく読むものには困らないと思います!
スモールワールズ/一穂ミチ/講談社
<Kindle Unlimited>
吉川英治文学新人賞受賞、2022年本屋大賞第3位の本作。
一穂ミチさんの作品は、「光のところにいてね(文藝春秋)」に続いて2作目です。
本作は7作の短編集です。単行本版は6編、文庫本版が7編なのでぜひ文庫本を読むことをオススメします。
それぞれの小さな世界には、それぞれの人物がいて、それぞれの苦悩や思いがありますね。
1編目の「ネオンテトラ」がいきなりドロドロした内容で、2編目の「魔王の帰還」も辛い内容が多いし、「ピクニック」はもういろいろと苦しい。「あれ、こんな感じなの?」と思いながら読み進めました。
本作には、後味が悪い話とそうじゃないのが混在しているから気が抜けません。中でも「ピクニック」は後味が悪すぎます。
でも、2作しか読んでませんが、一穂ミチさんの作品って、綺麗に着地せず、想像の余地や余韻を残しているところに魅力がある気がします。
個人的には、 「花うた」と「愛を適量」が好みでした。
「花うた」は、兄を殺された妹と、その犯人の手紙のやり取りが書かれています。冒頭、この2人が一緒に暮らしているような描写から始まりますが、次のシーンから始まる手紙のやり取りはもちろん険悪な内容。いかにしてこの2人の距離は近づき、どのような結末を迎えたのか。
読んでいて、内容は全然違うけど、「手紙(東野圭吾/文藝春秋)」と、「アルジャーノンに花束を(ダニエル・キイス/早川書房)」を思い出しました。
別に世界が大きく変わるわけでもない。衝撃的な事件があるわけでもない。
でもそれぞれの「小さな世界」で起こる出来事や人と人の営みに、なぜか引き込まれてしまいます。後半になるにつれ、「もっと他の小さな世界も見たい。」そんな気持ちになる一冊でした。
パッキパキ北京/綿矢りさ/集英社
<図書館>
最近Xの読書垢で読了ポストをよく見ていた本。気になったので借りてみることに。
主人公は元銀座のキャバ嬢の菖蒲(あやめ)、彼女は20歳以上年上のバツイチのお金持ちの旦那と結婚しています。菖蒲は、コロナ禍の最中、夫の赴任先である中国・北京へ引っ越すことになりました。
やけにコロナ禍の中国生活の解像度が高いなと思ったら、実際に著者も2022年冬から2023年春まで旦那さんと一緒に中国で暮らしていたのですね。納得。
というわけで本作は小説なんですが、小説というより在住レポみたいな感じで読んでいました。
ちなみに「パッキパキ北京」という不思議なタイトルの本作ですが、北京はパッキパキに寒いから、です。はい終わり!
そんな綿矢さんが暮らしたコロナ禍の北京。見たもの、体験したもの、会った人を細かく観察し、それを見事に言語化し、マシンガンのように畳み掛けてくる中国生活の情報量がすごい。それなのに全く飽きが来ないのが本当にすごいし不思議です。いやー本当に作家さんってすごいな(←語彙力)。
そして、「嫌いなら呼ぶなよ(河出書房新社)」を読んだ時も感じたのですが、ギスギスした会話が抜群に上手い!嫌味や皮肉を交えながらバチバチ争っているのもそうだし、表面上は相手へ気遣いながらも腹黒い感じのヒリヒリした会話もすごい。なんか読んでいると痛快で笑えてきます。
綿矢さんが本作の主人公の菖蒲のような性格かどうかは知りませんが、読んでいると彼女の性格がうらやましくなります。Going My Way感、嫌なことはやらない主義、楽観的でどこで暮らしても何とかなるでしょという無敵感、子供は不要で自分だけが楽しければそれでいい。でもそれでいて、空気は読めるし夫は立てる。頭が悪いわけでは決してない。
彼女のマインドが羨ましくなりますし、読んでいると「あー中国生活楽しそうだな」と実際に住んでみたくなります。
でも、やはり中国の暮らしは思い通りにいかない点もあって、それが以下のセリフに濃縮されていました。
分かりきった結末を、分かり切って迎えるのってこんな絶望することだったんだって、北京に来て初めて知った。
140ページ程度と少なめのボリュームと、マシンガンのようにテンポよく流れ込んでくる文章のおかげでサックサクに読めちゃいます。結末も好みです。オススメです。
うたうおばけ/くどうれいん/講談社
<Kindle Unlimited>
読書家として知られる俳優:上白石萌音さんが何度も読み返すエッセイ。
これまでエッセイといえば朝井リョウ氏と三浦しをん氏のふざけたやつ(失礼)しか読んでなかったから、真面目で柔らかくてくすっと笑える本作のような面白いエッセイは新鮮でした。
時系列は順不同で、学生だったり社会人だったりするし、1話のページ数も短かったり長かったりします。それぞれのエピソードがなんか刺さります。
うたうおばけとか、「お通夜のようなきもちかい?」とか、最初の2話で早速著者の独特でやわらかなワードセンスに引き込まれました。
なるほど、くどうれいんさんは歌人でもあるから、普通の人が選ばないようなワードセンスに溢れてるんでしょうね、納得。確かに「飼えるとしたら遊園地を飼いたい」なんて人は僕の友人にはいませんもんね。
学校を仮病で休むときのワクワクもめちゃくちゃ共感できるし、暗号のスズキ君は青春ど真ん中だし、名人と呼ばせる物理教師の話も好き。
コロナビールが汗をかいている描写もいいし、男っぷりの良い女性タクシードライバーも好きだし、金髪にしてちんちくりんパーマ野郎と最高の夜を過ごすのもよきだし、エリマキトカゲに例えられるレアさも、死んでないおばあちゃんが作ってくれる好物にはジンとする。
見えるか見えないかわからない見えてもしょうもない「きぼう」を探しながらする電話もエモいし、桃がクラゲの論文になるおかしなわらしべ長者も微笑ましいし、バナナでもビニニでもブヌヌでもいい。
そして、作中に出てくる「ミドリ」と後に結婚しているのもエモいよね。
著者の出身や生活圏内が、僕とは最も縁遠い東北地域というのもまた興味深い。同じ日本人なんだけど、何か違う世界に住んでいるような不思議な感覚を与えてくれます。
刺さったフレーズはいくつもあるんですが、個人的には以下2つを挙げたいです。
握った雪のおにぎりは食べずに捨てた。わたしはもう大人になったから。
失恋のつらさは、憎らしい相手を憎もうとするせいで恋の真ん中にいたピンク色の自分ごと傷つけてしまいそうになることだ。そんな人だった人を尊敬して愛していた自分との折り合いを付けるのには時間がかかりそうだった。
読んでみて、これはハマる人が多いのもわかる。そして、短歌や俳句が読みたくなる。とてもよい本。
星降り山荘の殺人/倉知淳/講談社
<Kindle Unlimited>
本格ミステリーの名作。読了記録をちらほら見かけて気になっていましたが、Kindle Unlimitedで読み放題対象だったので読んでみました。
ちなみにこれを読んだのはシンガポール往復便の中です。寝不足の頭は緻密なミステリー小説を読むには向いていませんので、ご注意ください(知ってた)。
広告代理店で働く主人公:杉下和夫は上司を殴ってしまい、芸能専門の部署へ異動となります。そこでの仕事は、星空の美しさを語る人気タレントであるスターウォッチャー:星園詩郎の付き人となること。杉下は、星園に付き添い、人里離れた山荘で一夜を明かすことに。
本作の舞台は執筆当時の1990年代半ば。携帯電話やPCが普及する前です。山荘の電気は自家発電、電話も通じていないというクローズドサークルミステリーものの様式美。作家さんはいかにしてこの状況を作り上げるのか、というところが醍醐味の一つですが、本作はオーソドックスに人里離れた雪山。
山荘の持ち主で不動産開発会社の社長である岩岸豪造によってそこに集められたのは、UFO研究家、恋愛小説作家とその秘書、女子大生2人組など個性豊かな面々。それにしても、クローズドサークルミステリーものを読むのは久しぶりですね。
そして雪と吹雪によって隔離された山荘で、連続殺人事件が発生するのもまた様式美ですね。探偵役の星園は助手役の杉下を引き連れ、犯人捜しを行います。
でも調べれば調べるほど各人物にはアリバイなどがあり、連続殺人は誰がどうやって起こしたのかを確かめるのも困難な状況。いちいちかき回してくるUFO研究家による「犯人は宇宙人説」が本当なのか?それともだれか他の人物が潜んでいるのか?
クローズドサークルミステリーものの傑作が世の中にあふれる中、設定や流れは王道なのにしっかりと面白くしっかりとだまされる。これぞ「本格ミステリー」なのでしょうね。
いちいちナレーションのように読者への解説や連絡事項、ヒントがあるのが興味深いし、作品に味を出している気がします。例えば以下の一文など、まさに退屈してきたころに書かれていて、読者の気持ちを見透かされてドキッとしました。
事件がなかなか起きないからといって退屈してはいけない 重要な伏線がいくつか張られているからである
読み終わってみると、「なるほど、そういうどんでん返しか」と脱帽。クローズドサークルミステリーにもいろいろあるなと改めて感じました。
とある人がカッコいいしお気に入り。そして序盤を読み返すと、伏線というかもはやしっかり明言されていた。素晴らしい。
聖女の救済/東野圭吾/文藝春秋
<図書館>
ガリレオシリーズの5作目。今回は長編作品です。
私見ですが、ガリレオシリーズに関しては、しっかりと練られた設定を丁寧に積み上げ、後半に一気に回収されている方が読んでいて楽しいので、長編の方が好みです。
妻:綾音は結婚から1年が経っても妊娠せず、結婚時に決めた約束に従い離婚予定の夫婦。そんな妻が北海道の実家に帰っている間に、資産家である夫は自宅で毒殺されてしまいます。どうやらコーヒーに毒が仕込まれていたようですが、コーヒーに毒を仕込んだのは、綾音か、綾音のパッチワークの弟子である宏美か、はたまた外部から侵入した誰かなのか。
綾音には鉄壁のアリバイがあること、毒の混入経路や方法等が全くわからないことで、警察の捜査は難航します。しかも、刑事の草薙はどうやら綾音にひそかに魅かれている様子。
過去の事件から、警察への協力を渋っていた物理学者:湯川に女性刑事である内海はこの事件の相談を行います。
相変わらず読んでいて疲れがありません。スルスルとストレスなく読めてしまいます。それにしても本作は湯川が出てくるのが遅かったですね。5分の2ほど読んだところでようやく出てきました。
綾音が犯人であってほしくないと思う草薙は、夫の過去の恋人が犯人ではないかと捜査の範囲を広げ、地道な聞き込みや調査などにより、とある真実にたどり着きます。その過程が丁寧に描写されていて非常に没入感があります。
本作のさらにすごいところは、登場人物は少ないのに、読んでいても終盤まで犯人も殺害方法も全くわからないことです。完全犯罪。それを思いつく発想と、やり遂げる犯人の根気がすさまじいですね。
確かにトリックは理論的には理解できるが、現実的には信じられないです。まるで「虚数解」のような真相に、毎度ながら驚愕しました。
ガリレオシリーズの魅力は、その論理的で科学的な思考もさることながら、人の感情とそれによって突き動かされる人間の非論理的ともいえる行動のアンバランスさだと思います。そして事件を解きながらそれを実感する湯川の言動も良いですね。
警察などに聞かれた時に何かを隠したい人の気持ちや、真相の解明より自分の社会的な評判の保身を優先してしまう人間の心理も痛いほどわかります。
犯人と殺害方法の真相がわかり、読了して本を閉じた後。なんとなく見たタイトルと表紙にあるパッチワーク。
「聖女の救済」。誰が誰を救済したのだろうか。
Kindle Unlimitedなら、月額980円(税込み)で本が読み放題です。
Amazonの読書サブスクサービスです。
月額980円(税込み)で、小説、ビジネス書、漫画等 様々なジャンルの本が読み放題です。
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初回30日は無料なので、試してみてはいかがでしょうか!
以上、2026年9月の読了本紹介でした!
年末に向けて忙しくなりますが、読書の時間も大切にしていきます!
おわり


