2026年2月の読了本【10冊】
2026年2月に読んだ本を紹介します!
2月の読了本は小説が6冊、その他が4冊の計10冊でした。
月の後半はインフルエンザで寝込んでしまいましたが、久しぶりの1ヶ月で10冊読了は素直に嬉しいです!
1月(前月)の読了本は以下記事にまとめていますのであわせてご覧ください!

①風とともにゆとりぬ/朝井リョウ
②フリーター、家を買う。/有川浩
③ババヤガの夜/王谷晶
④まなの本棚/芦田愛菜
⑤屍人層の殺人/今村昌弘
⑥この世にたやすい仕事はない/津村記久子
⑦副業図鑑: 初心者必見!凡人でも稼いだ20種の副業を徹底比較/今井こう吉
⑧そして誰もゆとらなくなった/朝井リョウ
⑨木挽町のあだ討ち/永井紗耶子
⑩イン・ザ・メガチャーチ/朝井リョウ

風とともにゆとりぬ/朝井リョウ/文藝春秋
購入本
朝井リョウさんのエッセイ2作目。1作目の「時をかけるゆとり(朝井リョウ/文藝春秋)」が面白すぎたので、本作も読んでみました。
やはり面白すぎ。本人の行動も変だけど、何でもないことを面白く書くのも天才的かつ悪魔的に上手い。
というか何でこんなにも朝井先生のもとには面白いイベントが次から次へと降りかかってくるのでしょうか。そういう星の下に生まれたとしか思えません。
「大好きな人への贈り物」という話の最後、ページをめくったオチがズルすぎる。
また、僕は1月に世界的大ヒット作である「BUTTER(柚木麻子/新潮社)」を読んだばかりなのですが、本作に唐突に柚木麻子先生が登場し朝井先生と同じようにおふざけキャラであることが発覚したので「柚木先生もふざけるんだー」と変に衝撃を受けました。
あと朝井先生はもうとにかく卑屈。学生からのインタビューの話なんてとにかく卑屈、かつ被害妄想がすごい。そりゃバレーサークルに参加した初日に「卑屈ですね」って言われちゃうわ。なのになぜこんなに面白いのでしょうか。
第一章のおふざけを読んだ後、第二章でまとめられている日本経済新聞で連載されていたコラムの少しよそ行きにかっこつけた文章のギャップが面白い。
そしてそこからの第三章「肛門記」。「スタジオパークからこんにちは」の放送と、MRIの検査時間が同時刻なのはもはや奇跡。
「尿道カテーテル」のフォントがデカすぎて電車で読めません。 何がすごいってこれを世に発表しようという勇気が一番すごい。
もうとにかく読んでほしい。できれば1作目から読んでほしい。そして朝井リョウ先生の他の真面目な作品も読んで、まじめさとおふざけの高低差を感じてほしい。そんなエッセイです。
川下りとは即ち、トイレとトイレの間をゆっくりと漂流するということである
フリーター、家を買う。/有川浩/幻冬舎
購入本
実は初読みの作者さん。全然予想していなかったのですが、本作は思ったよりヘビーな物語でいきなり面食らってしまいました。
ちなみに本作は2010年にフジテレビで二宮和也さん主演で実写ドラマ化もされています。
本作の主人公は、そこそこの私立大学の文系学部を卒業し、せっかく新卒で就職した会社をたったの3ヶ月で辞めてしまった武 誠治(たけ せいじ)。仕事を辞めた後はフリーターとなるのですが、甘ったれた性格からかバイトも長続きせず、就職活動もおざなりにしていました。
最初だけ誠治に同情しましたが、読んでいるとすぐに「あ、こいつ甘ちゃんだな」と思うようになりました。
そんな時に母の病が発覚。が、結婚して実家を出ていた姉が怒鳴り込んできてお灸を据えるまで、父親である誠一も誠治も全く母の病の兆候には気付くことなく好き放題していました。
これは偏見ですが、こういった時って男の方が気付きにくいですし、「ま、何とかなるだろう」と事態を軽く考えがちですよね。誠一も誠治も情けなく描写されていますが、僕も自分が同じ立場になった時に気付くことができるかは自信がありません。
人生や人のことを舐めていた誠治でしたが、母の病をきっかけに一念発起しバイトにも職探しにも全力で取り組みます。
母の状況はなかなか好転しませんが、心が入れ替わった誠治の周りでは徐々に良いことが起こってきます。誠治が過去の自分を悔い改め、現状と向き合いながら成長していく様子にとても心を打たれました。
もう1人の存在、父である誠一も忘れてはいけません。国立大学を卒業し有名企業で「経理の鬼」とも呼ばれている誠一。
しかし誠一は酒癖が大変悪く、また自分の楽しみのためにばかりお金を使ってしまいます。加えて、これは仕方のないことかもしれませんが、自分のプライドや偏見にばかりとらわれ家族から反論されても聞く耳を持ちません。
作中ではダメ親父として描写されてしまっている誠一ですが、僕はなんとなく誠一側の気持ちもわかってしまうように感じました。
そんな誠一も誠治のひたむきな姿や妻の病気に思うところもあり、徐々に変わっていきます。ですので、本作は誠治だけの成長物語ではなく、家族としての成長物語なんだな。と感じることができました。
登場する人物もみな良い人ばかり。少しご都合展開的なストーリーは否めませんが、大切な家族のために何ができるかを本気で考えたくなる小説です。
お金がない甘ったれたフリーターであった誠治は、タイトルの通り家を買うことができたのでしょうか。
ババヤガの夜/王谷晶/河出書房新社
購入本
2025年に日本人作家として初めてダガー賞を受賞した本作。
“ダガー賞”とは、英国推理作家協会主催の世界最高峰のミステリー文学賞です。
ただ本作は「どこがミステリーなんだ?」とずっと疑問を持ちながら読みました。終始血みどろで暴力的な本作は、読み始めるまでは正直僕の好みのジャンルではありませんでした。
主人公の新道依子は街で暴力団の「内樹会」といざこざを起こし、その腕っぷしを買われ内樹会にスカウト(という名の拉致)されます。内樹会での依子の仕事は、会長が溺愛している1人娘:尚子のボディーガードをすること。
不本意ながらも内樹会に住み込み尚子や会員達と共同生活をすることになった依子は、護衛対象の尚子からも見下され、住み込みの若い衆からの嫌がらせを受けながらも、尚子のボディーガードとしての務めを全うします。
そんな暴力的な依子と箱入り娘の尚子は、徐々に心を通わせていきます。
そして、読んでいると急にカットインする「正」と「芳子」という訳ありっぽい夫婦?どうやら誰かに追われているらしいのですが、詳細は謎です。物語を読んでいると正と芳子は「あいつらかな?」と思うのですが、ミスリードが巧みですね。
本作は上にも書いた通り暴力的な描写が多いです。が、仕掛けに見事に騙されました。それでミステリー文学賞を受賞したのですね。
依子と尚子の関係は一言では表せません。友達の様であり、姉妹の様であり、雇用主と使用人の様であり・・・。
208ページと短くすぐに読めてしまうのですが、バイオレンスな描写と2人の行方が気になり、ページ数よりも濃い内容に感じました。
タイトルにもなっている「ババヤガ」とは、ロシアの山姥のようなものだとか。
依子はババヤガになれたのでしょうか。
まなの本棚/芦田愛菜/小学館
図書館
読みたかった本が図書館にあったので借りてみました。
本作の著者は皆さんご存じの芦田愛菜さん。現在もバラエティー番組、CM、俳優業と大活躍ですね。
本作は、芦田愛菜さんの「本」への愛にあふれた作品です。こんな本を出せること自体が、本好きにとっては夢のようなことだろうと思います。
なんとこの本を書いた当時の芦田愛菜さんは中学3年生!まずその語彙力と表現の豊さにびっくりするし、その年齢でこんなにも幅広いジャンルのたくさんの本を読んでいることも驚きです。国内小説はもちろんのこと、海外小説、古典、図鑑・・・etcと本当にすごい。
読んでいると読書好きなら共感できるポイントが非常に多くあると思います。僕は最初から以下の一文に同意しました。
本だったら、自分自身の想像力で物語の世界に出てくるすべての色も形も好きに決めてプロデュースできるんです。
僕が映画やアニメなどの映像作品より本が好きな理由がまさにこれです。
確かに映像化されると視覚的や聴覚的に分かりやすいです。でもその一方で、「この仕掛けってどうなっているのか」とか、「この人はこんな顔でこんな声なんだろうだな」とか、無限に想像できるのは文章の特権ですし、映像化されてしまうと自分の想像とは違うものが「正解」と言われてるようで、少し残念な気持ちになります。
「おすすめ本は?」と聞かれても確かに回答が難しい。愛菜さんが書いているように本との出会いって本当にタイミングだと思いますし、その人のキャラや背景、好みなんかでオススメする本は変わります。本が好きだからこそ、中途半端な作品を紹介したくないですよね。
そして、感想に「正解」はなくていいのもその通りだと思います。本を読んでどのシーンが刺さったか、どんなイメージを持ったか、どのキャラを好きになったかなんて、人によって当然変わりますからね。
本を読み、興味を持って、学んでいって、また興味を持って・・・という過程を子供の頃から当たり前にできてるのが芦田愛菜さんのすごいところ。
知ってる本は「そうそう、それがいいよね」ってなるし、知らない本は「へー面白そう読んで見よう」ってなる。読書好きにこそ一度読んでみてほしい本です。
屍人荘の殺人/今村昌弘/東京創元社
図書館
初読みの作家さん。有名な本を図書館で発見し借りてみることに。
本作は作者のデビュー作にして、第27回鮎川哲也賞を受賞しています。しかもデビュー前はそれほどミステリー小説に触れたことがないとのことですからスゴイですよね。

本作は感想を書くにあたり、どうしても作中で発生する「異常事態」に触れざるを得ません。本作を未読で予備知識なく読みたい方は、本作の紹介を飛ばすことを推奨します。
大学のミステリー愛好会の探偵役と助手役が出てきて、男女が集められたペンションが出てきて・・・とベタな展開だったので、「ふんふん。こっからどのように展開していくんだ?」と最初は読みながら感じていました。
が、まさかのゾンビ×クローズドサークルミステリー。その展開は初めてでした。
とある組織のバイオテロによって発生した大量のゾンビの襲撃により閉ざされてしまったペンション。お約束のように通信手段はなぜか遮断されており、外部との連絡も取れず脱出もできない状況。
国や自衛隊などによる救助が来るまで、いかに生存者たちはゾンビの襲撃を回避し生き残ることができるかを考えなければならない。そんな緊迫して皆が協力し合わなければならない状況で、なぜかペンション内で発生する連続殺害事件。
その凄惨な殺され方はゾンビにやられたとしか思えない。でもゾンビは施設内には入ってこられないし、人間的な理性も感じる。ゾンビにしかできないことと人間しかできないことが両立し、推理をかき回してしまいます。
トリックや設定もよく練られていましたし、ゾンビという明確かつ絶対的な敵がいるため、メンバー内に向けられる疑心暗鬼が他のクローズドサークルミステリーより薄いのも良くできた設定だなと感心しました。
また「あの人物がそんな場面で退場するんだ。」というのが個人的にはとても意外でした。
本作の主人公はミステリー愛好会に所属する大学1回生の葉村 譲。彼は探偵の助手役のような立ち回りをするのですが、正直地味です。おそらく作者も意図的にそのように描写したのでしょうが。
一方、葉村の1学年上で、本作の探偵役を務める剣崎 比留子のキャラは割と好きでした。
犯人はゾンビなのか人間なのか、人間ならその動機と方法は・・・?そして、彼らは無事にペンションから脱出することができたのか・・・
読んでいていくつか違和感はありましたが、僕は結局犯人を当てることができませんでした。
ちなみに本作は、2019年に神木隆之介さん、浜辺美波さん、中村倫也さんらの共演で実写映画化されています。ご興味のある方は観てみてください。
この世にたやすい仕事はない/津村記久子/日本経済新聞出版
図書館
続いても初読みの作家さん。タイトルを見て「あ、お仕事の話なんだな」と思い借りてみました。
本作の主人公は、以前勤めていた仕事に燃え尽き、楽ができて体力的にも精神的にも負担の少ない仕事を探す36歳女性の霧中かすみ。そのかすみが編ごとに職を変えていく連作短編集です。
かすみの下のセリフが、疲れ果てて何もしたくないけど生きるためには働かなければならないという気持ちを表現していて、とても面白かったです。
家からできるだけ近いところで、一日スキンケア用品のコラーゲンの抽出を見守るような仕事はありますかね?
そんなかすみが最初にした仕事は、一日中家にいる小説家を隠しカメラで撮影した映像を監視するというもの。
「そんな仕事あるんだ」と驚きながらもかすみの希望に非常に近い仕事だったので、これを続けていくのかなと思い読んでいると、やはり仕事というのは人が介在したり色んなことが起こったりするようで、監視の仕事は辞めてしまいます。
その後は、市内循環バスに流すニッチな広告アナウンス作成する仕事だったり、おかきやおせんべいの個包装の袋裏に掲載する豆知識の原稿作成の仕事だったり。様々な珍しい仕事を経験します。
個人的には、おかきメーカーの話が面白かったです。
社内の人間は袋裏派と味派に分かれるって話は「面白いけどなんだそりゃ!」と思いましたし、袋裏の豆知識は「ぽたぽた焼きのおばあちゃんの知恵袋みたいだなあ」と懐かしく感じました。
一方で、製品がヒットして調子に乗る人や、いいところだけを見て興味本位で近づいてきたけど実際にやってみるとそれまで見えなかった手間や気苦労に気付いて無責任になる人がいるところなんかは、あるあるだなーという感じです。
どの仕事も一見楽そうなのですが、実際にやってみると色々苦労があります。まさに「この世にたやすい仕事はない」のでしょうね。
なんか繊細(神経質)なんだけど変なところは大雑把で行動力があるかすみは、この仕事はどんな理由で辞めて、次はどんな仕事をするのかという点も気になって読んでしまいました。

本作も2017年にNHKでドラマ化されているようですね!
副業図鑑: 初心者必見!凡人でも稼いだ20種の副業を徹底比較/今井こう吉/Kindle
Kindle Unlimited
いろいろ副業している僕ですが、「もう少し稼ぎたいなー」とか「別の切り口の副業はないかなー」と思ってKindle Unlimitedの対象本を探していた時に気になった本です。
本作では、著者である今井こう吉さんが実際にやったことのある約20個の副業についてジャンルごとに分けられていて、それぞれの難易度や必要なもの、注意点などがまとめられています。
マンガ形式で書かれており、1冊読み終わるのに1時間もかかりません。作者も言及している通り、内容は分かりやすさを追求しているため広く浅くという感じですが、そのおかげもあり読みやすくスルスル頭に入ってきます。
Kindle本でよくある「とりあえずワードで打ったままを本にしましたー」という感じではなく、しっかりとデザインやわかりやすさを考えて本を作っていることも伝わってきますね。
また「副業図鑑」というだけあってこれまでまったく考えたこともなかった副業についても触れられていましたし、実際にどうやって始めたらいいのかについても書かれていましたので、「お、これなら自分もできそう。とりあえずやってみようかな!」という気にさせてくれました。
特定の副業に深く踏み込んだ内容ではなく、「こんな副業あるからヒントにしてねー」という感じのカタログのような本だなと感じですかね!(図鑑というには少し数が少ないですが)
Webライターは雑記ブロガーである自分とも相性がよさそうですし、覆面調査やメダカ養殖は「そんなんあるんだ!」と驚きました。せどりは頑張れば自分でもできそうですね。
そしてSNSを有効活用して機会を最大化すること。これも大事ですね。
終盤では会社員ではよくわかっていない「確定申告」にも少し触れられていて勉強になりました。読んだら何か副業を始めたくなる、とても良い本でした!
そして誰もゆとらなくなった/朝井リョウ/文藝春秋
購入本
2作目に読んだ「風とともにゆとりぬ(朝井リョウ/文藝春秋)」を読み居ても立っても居られなくなった僕は、まんまと朝井リョウ氏の策略にはまり3作目を購入してしまいました。このエッセイは中毒性が高いです。
というわけで本作は”ゆとり三部作”の堂々完結作です。
と言っても「成瀬は天下を取りにいく(宮島未奈/新潮社)」シリーズ三部作のような清々しさや、主人公の成長を見届けて誇らしくなる気持ちなんてものは全くありません。
ただただ僕と同年代である朝井リョウ氏による、面白い日常と便意との戦いの記録がまとめられているだけです。
いやもうとにかく朝井リョウさんと言えば便意。「どんだけこの話題が出るんだよ。恥ずかしくないのかよ」と呆れてしまいます。
そもそも本作を開くと、最初の話は前作「風とともにゆとりぬ」の「肛門記」で出てきた医師と2人でご飯にいく話から始まります。なんでやねん。
とにかくゴボウが可哀想だし、ニューヨークの旅は端折りすぎだし、1人でホールケーキを5個食べるのは食べすぎだし。
「なぜ朝井リョウさんの周りにはこんな面白いことがしょっちゅう起こるのか」と読みながら誰もが感じる素朴な疑問に、まさかのアンサーがありました。このアンサーを見るだけでゆとり三部作を見る価値がありました(かどうかは甚だ疑問ですが、面白かったのでよしとします)。
どの話もくだらな過ぎて面白いのですが、「精神的スタンプラリー in南米」が1番好きです。
大学生として最後のイベントである卒業旅行で朝井さんはマチュピチュやウユニ塩湖に行くのですが、行ってから実感した“卒業旅行の目的”が朝井さんっぽくて面白いです。
かと思うと、“学生の内に旅行しておいた方がいい理由”を真面目に語るので、危うく僕も腹落ちしかけたのですが、直後にトイレの話が出てきて逆に安心しました。
私にとって本当に必要なものは、旅による人生経験よりも何よりも、いつでも清潔なトイレに行ける環境だった。
あーゆとり三部作が終わってしまいました。真面目な小説を書く息抜きでぜひ“ゆとり”シリーズも細々と続けていってほしいです!
カムバック!ゆとり!
木挽町のあだ討ち/永井紗耶子/新潮社
Kindle Unlimited
2026年2月27日に本作の実写映画が公開されましたね。
それにあわせ、Kindle Unlimitedでも読み放題対象となっていたのだと思います。
普段手に取らない歴史ものですが、2023年に第36回山本周五郎賞と第169回直木三十五賞をダブル受賞した本作の名前は認識しており、読み放題対象だったので読んでみることにしました。
読み始めるとすぐ歴史もの特有の言い回しや現代にない言葉などが出てきて早速後悔しそうになりました。が、登場人物の過去の話と「あだ討ち」の真相が気になり、どんどん惹き込まれ読み進めていきました。
本作の舞台は江戸時代後期の江戸・木挽町。
森田座という歌舞伎の芝居小屋周辺で起きた”あだ討ち”の真相を追うというミステリー時代劇です。
仇討ちを行ったのは伊納 菊之助という美しき若衆。菊之助は、伊納家に仕えていた使用人である作兵衛に父親を殺されてしまいます。菊之助は森田座で働きながら仇討ちのため潜伏し、ついに作兵衛を討ちます。
その仇討ちは、大勢の人がいる中で大男の作兵衛を美しい女性に扮した菊之助が討つというなんとも見栄えのよい状況で行われ、すぐに江戸の人々の語り草になりました。
そんな過去の仇討ちにつき、事の次第やそれを見た森田座の関係者の来し方を尋ねて回る若い侍。どうやら菊之助に縁のある者の様子。
江戸を騒がせた仇討ちの真相とは・・・関係者への聞き込みをもとに「木挽町のあだ討ち」の真相が徐々に詳らかにされていきます。
聞き込みをする相手は、木戸芸者(呼び込み)、殺陣の指南役、女形兼衣装方、小道具方、戯作者(脚本家)といった面々。
仇討ちについてはみな似たような内容を話すばかりですが、共に聞かされるそれぞれの過去。この過去がまあどれもこれも面白いのです。
面白いといってももちろん江戸時代の話なので、辛い話ややりきれない話ばかり。でもだからこそ惹きこまれるのはどれも人の情の話だからなのでしょう。もはやあだ討ちの真相より、それぞれの過去の話の方が本題では?と勘違いしてしまいます。
読んでいると、徐々に色んな情報が明らかになってきます。
僕としては珍しくネタ晴らしの手前で真相には気づきましたが、それでもなお最後まで読ませる面白さと、丁寧にちりばめられた伏線はあっぱれの一言です。
そして、タイトルにそんな意味があったとは・・・
菊之助はどのようにして“あだ討ち”を成功させたのでしょうか。また、なぜ菊之助は関係者の来し方を聞いてこさせたのでしょうか。
時代ものですが誰にでもオススメでき、また結末も大変好みでした。
イン・ザ・メガチャーチ/朝井リョウ/日本経済新聞出版
購入本
Xで毎日何件もの読了ポストを見かけていた本作。2026年本屋大賞のノミネート作品でもありますね!どうしても我慢できなくなり購入して読んでみました!
それにしても朝井リョウ先生は、 本当に現代の日本の社会課題や時流を作品に落とし込むのが上手いですね。
「正欲(朝井リョウ/新潮社)」や「生殖記(朝井リョウ/小学館)」では多様性、本作では推し活など、実に見事に物語に落とし込み、僕ら読者にガンガンと叩きつけてきます。(上で紹介したようなふざけまくったエッセイを書くような人と同一人物とはとても思えません・・・)
さて、本作は上にも書いた通り“推し活”がテーマです。もちろんそれ単独のテーマではなく、男性コスメや年配の男性が感じる孤独、陰謀論・・・など、実に様々なテーマが包含されています。いろんな人の見たくない心の暗い部分をグサグサ刺してくる小説です。
「生殖記」を読んだときもそうですが、とても感想をまとめきれません。
そんな本作の「イン・ザ・メガチャーチ」という不思議なタイトルの意味は、後半で明らかにされます。
僕はいわゆる“推し活”というものにこれまでの人生で触れてきませんでしたが、それでもこの作品の“推し活”への解像度の高さにはビビりました。僕が推し活をしている人間だったら本作を読んで致命傷を受けていたかもしれません。
“推し活”当事者、それを創り出すアイドルのプロデューサー、“推し活”へハマる人、“推し活”から別の何かにベクトルが変わってしまった人、”推し活”にハマった人を身近に持つ人・・・色んな角度から見た“推し活”が描写されています。
メガチャーチの戦略を語ってる横で、信者が推し活を必死に続けている場面が印象的でした。
神がいないこの国で人を操るには、“物語”を使うのが一番いいんですよ
正直、最初は「で、何が言いたいの?」という感じであまり読み進められませんでした。でも読んでみた後に思うのは、前半の丁寧な部分があるからこそ、後半に進むにつれ変わっていく登場人物たちへの「もうやめとけよ」という思いがより深く大きくなり、怖い物見たさで結末まで走り切ってしまうのでしょうね。
陰謀論に洗脳されていく様子、推し活にのめり込んでいく過程。そのすべての解像度が高い。単なる”推し活”をしている側だけの目線でなく、それを企てている運営側の戦略なども具体的に書かれている点が秀逸です。
そして、実はその裏で行われる、”搾取される側から搾取する側への搾取”。何を言っているかは読めば分かります。
視野を狭めて熱中することが幸せなのか、それとも、視野を広げて何を選んでもどこかの角度からは反転できる状態の方が健全なのか。
宗教戦争はいつからか、論理も理由も要らなくなる。正誤も正義もアテにならない世界で、ただ掲げられた矜持が燃え尽きるその瞬間まで、争いだけが続いていく。

本作が気にいった方はぜひ、「正欲」、「生殖記」も読んで見てください!僕の朝井リョウ先生ベスト作品は「生殖記」です!!
Kindle Unlimitedなら、月額980円(税込み)で本が読み放題です。
Amazonの読書サブスクサービスです。
月額980円(税込み)で、小説、ビジネス書、漫画等 様々なジャンルの本が読み放題です。
以下ボタンから、Kindle Unlimitedに登録ができます。
初回30日は無料なので、試してみてはいかがでしょうか!
以上、2026年2月の読了本でした!
おわり


