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2026年10月の読了本【9冊】

2026年10月の読了本【9冊】
鳴山シンゴ
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10月は小説を9冊読了しました!

今月特に良かった本は「真夏の方程式」です!
他、「二人一組になってください」はぞわぞわできましたし、「【NEW!!】あなたが出品されました」は、Xの相互フォローである狂実先生の作品を読むことができて良かったです!

では10月に読了した9冊についてネタバレなしで紹介します!

2026年10月の読了本【9冊】

①号泣する準備はできていた/江國香織
②探偵小石は恋しない/森バジル
③スペードの3/朝井リョウ
④真夏の方程式/東野圭吾
⑤老後の資金がありません/垣谷美雨
⑥元彼の遺言状/新川帆立
⑦二人一組になってください/木爾チレン
⑧【NEW!!】あなたが出品されました/狂実
⑨虚像の道化師/東野圭吾

これまでに僕が読んだ本の感想を、作品名の五十音順でまとめた「読書記録・書評一覧」も公開しています!
作品や著者名から検索できるので、次に読む本を探している方はぜひご覧ください。

号泣する準備はできていた/江國香織/新潮社

図書館

第130回(2003年下半期)直木賞受賞作。実は江國香織先生の作品はこれが初めてでした。

本作は、全12編の独立短編集です。
1編は短くサクッと読めます。読んだ後は、何か少しだけ大人になった気分と、子供に戻った気分の両方を感じる不思議な作品です。

そして読んでいて安心感があります。辛い結末もないし、「感動して!」といった押しつけもない。「え、そこで終わるの?」とも思うけど、「自分で刺さるポイントを見つければ?」といった放ったらかし感が心地よい。

「こまつま」が良かったです。
何でもない主婦のデパートでの買い物の風景なんだけど、郷愁とか、若かりしときの考え方とか、家族の懐かしさとか、そんなことを思い出されてくれます。
そして、結婚して20年経ちいろんなことを達観して見れている主人公の大人さというか落着きというか、そんなものも感じます。でも多分、もっと年齢を重ねるとこの時のことも「若かったな」と思うのでしょうね。

それと、「どこでもない場所」が好みでした。

私はときどき不思議に思うのだが、私たちがいまここでお酒を飲んでいるこの瞬間、たとえば光司が眠っているマンションや、たとえば下着屋のあるあの町や、たとえばシリアという国が、ほんとうにこの世のどこかに存在しているのだろうか。

号泣する準備はできていた/江國香織/新潮社

多分みんな本当のことや暗い部分は隠して、いいところだけを抽出した話をするのでしょうね。そして、それで優越感を感じる。
その後、これから帰るであろう現実のそれぞれの生活に戻っていく。つかの間の目立つハリボテのような部分だけにスポットライトを当てて、さも全体が素晴らしいものに見せるような感覚。非常に共感できました。

「号泣する準備はできていた」
本作のタイトルにもなっているこのフレーズ、実にさらっと作中に出てきます。でも、そのさりげなくて気づかれても気づかれなくてもいいような使い方。この感じが、まさにこの本の良さなのだろうなと感じました。

他の江國さんの著者も読んでみたい。そう思わせてくれる一冊でした。

探偵小石は恋しない/森バジル/小学館

Kindle+

2026年本屋大賞第8位。面白いと評判の本作。
読みたいと思っていましたが、図書館の予約がまだまだ先だったので諦めていました。
そんな時、なんとKindle+読み放題対象に!やっててよかったKindle+!

さて、本作は離婚問題に悩む2人の女子高生の会話シーンであるプロローグから始まります。このシーンの意味や登場人物はしばらくわからない状態で本作は進みます。

そんな本作の主人公は、福岡市で探偵事務所を営む27歳の女性探偵:小石。
彼女には恋愛感情が一切ありません。ただ、彼女にはとある能力があり、それが不倫調査にはとても役立つこと、恋愛感情がないからこそ先入観なく調査に臨めることなどから、彼女のもとには数多くの不倫調査が舞い込みます。

そして、彼女の探偵事務所には蓮杖という助手がおり、基本的に小石と蓮杖のペアで不倫調査を行います。

ちなみに舞台が福岡なのは著者:森バジル先生が九州大学出身だからですね。賢い。

どんな面白い話かと思って開いたら、序盤は若くて個性的な女性探偵とツッコミ役の助手がいるという、ある意味ラノベのようなベタな設定で、不倫調査を行うというもの。「ここから面白くなるのかな」と疑問を感じつつも、読書垢の皆様の評判を信じ読み進めました。

この感覚は「medium 霊媒探偵城塚翡翠(相沢沙呼/講談社)」を読んだ時に感じた感覚と同じです。ということは面白いですね。間違いない。

1件目の不倫調査が特に何事もなく終わった第一章の終わり。急に不穏になっていきます。
そして、読んでいると徐々に明らかになる情報がたくさんあって面白いし、いろいろな仕掛けがいたるところに施されていて、本作の多層的な構造に驚かされます。どんなものかは読んでみてのお楽しみ。

本作のテーマの1つはタイトルの通り恋愛なのですが、もう1つのテーマは「先入観」だと思います。先入観や固定観念で人を認識しているのに対し、警鐘を鳴らされた作品です。たしかに、先入観や第一印象で決めてかかるのは探偵にはよくないですね。(それ町の嵐山歩鳥もこれにひっかかってました)

そして、4章の最後に「おう?」ってリアルに声が出ました。
読み終わってみると、実にトリッキーな作品でした。少し人間関係が狭いのは気になるところでしたが、ちりばめた伏線や仕掛けで、さらにその奥の真実から読者の目を逸らせる構成は素晴らしい。

「探偵小石は恋しない」。読み終わってタイトルを見て、「なるほどね」と思う作品です。
そして、あの終わり方から続編はどう続くのか。非常に気になりました!

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スペードの3/朝井リョウ/講談社

Kindle+

久しぶりの朝井リョウ先生の作品。ゆとり三部作のようなふざけたエッセイ(誉め言葉)ではなく、まじめな本です。

相変わらず事前情報なしで読み始めたので、いきなり面食らいました。まず、大富豪のルールの説明。それをテーマにしたストーリーかと思ったら、次は女性舞台役者を囲むファンたちコミュニティのシーン。

表題作の「スペードの3」では、江崎 美知代が主人公です。
美知代は、元歌劇団(宝塚歌劇団がモデル)出身のミュージカル女優:香北つかさのファンクラブ「ファミリア」、その幹部グループである「家」のリーダー役を務めています。
「ファミリア」にはいくつものルールがあり、美知代はかつて小学校のころに務めていた学級委員のように、自分が優越感を持ちながらこのファンクラブを運営します。

そんな「ファミリア」に新たに加入したのが、美知代の小学生時代の同級生:アキ。アキの存在により、だんだんと「ファミリア」と美知代の状況は変わってきます。

自分が幅を利かせていたグループに、自分よりビジュアルが良かったり、上手だったりする人が突然現れ、人望もポジションもかっさらわれ、理想から逸れていくあの感じ。自分が優位だと感じ、グループに入れてあげている、あの感じ。

僕たちがあえて触れていない、でも日常に確かに存在するあのぞわぞわした感覚。朝井リョウ先生はそれを言語化し、読者に「ほら、これにちゃんと目を向けなよ!」って言い聞かせるような作品がめちゃくちゃうまい。そしてもはや怖い。

次の「ハートの2」は、アキが主人公のお話です。アキが小学校を卒業し、中学をどのように過ごしたのかにスポットライトが当てられます。本作の大きな仕掛けというかテーマの一つですので、詳しくは述べられませんが、僕はこの「ハートの2」が一番気に入りました。

そして最後の「ダイヤのエース」
美知代やアキ、その他ファミリアのメンバーを魅了する美貌の女優:香北つかさ。でもそんな一般人からすると雲の上の存在であるつかさにも、子供時代があって、下積み時代があって、実家があって、普段の生活があって、人並みな悩みもある。そして、うとましかったりずるく思ったりしてしまう相手がいる。

そんなつかさがずっと温めていたとある作戦。それがどうなったのか。そしてその作戦は、果たして本人の思うとおりの効果が得られるのか・・・

みんな、生まれたものの背景に物語を求める。そこに物語がないと、その結果生まれたものに深みなんて伴うはずがないという目で、貪欲に物語を求めてくる。

スペードの3/朝井リョウ/講談社

本作を読んでいると、同著者の「イン・ザ・メガチャーチ(日経BP 日本経済新聞出版)」に通じるものというか、その過程のような本に感じました。

大富豪のカードになぞられた、各章の登場人物たち。
革命が起これば、最強になるスペードの3。自ら革命を起こすために動くか、お守りのようにずっと温めるか。間違いなく強いんだけど、上には敵わないカードがあるダイヤのエース。

その行動は、誰にどう届くのか。

読了後、非常に好きになった作品でした。

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真夏の方程式/東野圭吾/文藝春秋

図書館

ガリレオシリーズの第6作目。長編としては3作目。

文庫版の表紙に描かれているのは綺麗な海と真っ赤なハイビスカス。そしてタイトルの「真夏」という文字。こんな明るく湯川には似合わなさそうな雰囲気で、今回はどんな事件が起こるのかを考えながら本を開きました。

玻璃ヶ浦という美しい海を持つ地域の、叔父が営んでいる旅館で夏休みを過ごすことになった少年:恭平。
恭平の滞在期間中、旅館に宿泊していた塚原という男性が死体で見つかった。この塚原という男性、元は警視庁の刑事で、玻璃ヶ浦に縁をもつ仙波という男を殺人事件で逮捕したという過去を持ちます。

真夏の海沿いで起きた死亡事故。実は殺人事件ではないか。地元の県警と警視庁は協力して捜査を進めます。そしてそんな場所になぜかタイミング良く(というか悪く?)いる物理学者の湯川。湯川は、恭平や旅館の人々などと接しながら、事件の真相に近づきます。

恭平と湯川が接するシーンが多く出てくるのですが、これが結構お気に入りです。
何気に湯川が子供と接するシーンは初めてみた(気がする)のですが、しっかりと恭平を1人の人間として対等に扱っているのがいいですね。小学生が理解できるように言葉は選ぶけれども、真実ははぐらかさない態度に非常に好感を持ちました。

また、小学生に対して湯川が科学を学ぶ意義を説明する場面も、本筋と関係ないところで感心してしまいました。このように、勉強の意義をしっかりと子供に伝えてあげること、非常に重要だと思います。

旅館の娘で、環境保護活動家として玻璃ヶ浦の海を守ろうとしている成美が、湯川と接して客観的な視点に変わっていく様子も興味深いです。そして、成美や、慕ってくれる恭平からですら、「まわりくどい人だな・・」と思われてるのがまた面白い。

湯川の態度は相変わらずなのですが、徐々に何かに気づいている様子。
そしてその真相は、僕が想像していたものよりもっと複雑で、いろんな人のいろんな強い想いが起こさせているものでした。彼らの苦悩と献身、そして決断をただただもどかしく感じました。

湯川はかなり序盤から思わせぶりな言動をしますが、一体いつから真相に気づいていたのでしょうか。事件の科学的なメカニズムと真相。その2つを知ったときに鳥肌が立ちました。

たった一つの、解決されていない謎。それは大したことではないと思われていました。
その謎を解き明かすことで、明確な意思、冷酷なまでの賢さと緻密さ、そして、若者たちの将来へ与える影響。すべてが一気につながり、登場人物たちの言動などへの印象が一気に変わりました。それまで見えていた景色が、一瞬でひっくり返るような衝撃でした。

せつなくやるせない人間ドラマ。読み終わった後は、おなじくガリレオシリーズの名作「容疑者Xの献身(文藝春秋)」と同じような感覚になりましたが、僕は本作の方が共感できました。

湯川は上で書いた通り、いつもと同じく回りくどくて何を考えているのかわかりにくいです。
が、とある人物と対面するシーンで、しっかりと玻璃ヶ浦を褒めているのがぐっときました。素晴らしいものには敬意を表すし、人をのせるための打算的な意味が含まれていたとしても、その言葉に嘘はないはず。

そして、一番最後のシーンがいい。湯川が本当に彼のことを考えて、共に歩こうとする気持ちが伝わってきます。あのシーンで、彼はこの先の人生の歩み方が決まったでしょうね。

暫定ですが、ガリレオシリーズで1番好きになった作品です。

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老後の資金がありません/垣谷美雨/中央公論新社

図書館

タイトルにつられて借りてみました。
どこかで見たタイトルだなと思ったら、天海祐希さん主演で2021年に実写映画化もされているからですね。納得。

読んでいると、無駄遣いや見栄を張るためのお金を使うのをやめて節約したくなります。というか「節約しないと老後がヤバい!」という危機感を感じます。ぜひ20代、30代のうちから読んで欲しい作品です。

ページを開くとすぐに共感できます。主人公は、パートで働く主婦の篤子。夫は一般的なサラリーマン、それと結婚を控えた娘と就職直前の大学生の息子が一人ずつという、ザ・普通の熟年夫婦。

日々贅沢せず節約に努め、ローンを返し、老後の資金を心配する。かつて魅力だと感じていた夫への愛情は冷め、嫌なところが目立つ。歳を取るとともに考え方も変わるし、若さが実は貴重だったということがわかってくる。30代男性の自分ですら共感できるのだから、主人公と同年代の女性たちはもう共感しまくりでしょうね。

マンションのローン返済のめどはついているとはいえ、決して家計に余裕があるわけではないし、退職金も思ったよりも少ないかもしれない。そんな状況で発生する、巨額の娘の結婚費用と舅の葬儀費用。慎ましやかにすればいいのに、世間体や見栄を気にして費用はかさみます。そのお金があれば、あれが買えるあそこに行ける・・・・

読んでいて、改めてなるほどなあと思うことばかりです
今の職場や収入が続くとは限らないし、お葬式とか結婚とか急な出費は増えます。自営業をしていても競争相手は出てくるし、お金持ちと結婚しても離婚したら生活できない。広い大きな家を買っても介護が必要になったらそんな家は必要ないし、その家の処理や介護費用で親族と揉めるかもしれない。

内容は全然異なりますが、「そのマンション、終の住処でいいですか?(原田ひ香/新潮社)」を読んだ時と似た気持ちを感じました。

リアルなので途中で読むのが辛くなりましたが、どんな結末に着地するのか、気になってページをめくりました。

ちょっとリアリティがない点もあるのと、最後の方はやや駆け足感とご都合主義感が否めないものの、全体を通すと、リアリティがあり誰もが今後直面するであろう問題を疑似体験することができる、良い作品だと感じました。

最後の室井佑月さんの解説もまた良かったです。

元彼の遺言状/新川帆立/宝島社

図書館

第19回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品。

まず著者の経歴がエグいて。アメリカ生まれ東大法学部卒、弁護士、プロ雀士、そして小説家デビュー作で「このミス大賞」。2022年には綾瀬はるかさん主演でフジテレビの月9で実写ドラマ化もされています。実写化しやすい作品にしたのも彼女の作戦なのか、恐ろしい。

さて、本作の主人公は大手事務所に勤める弁護士である剣持麗子。そんな麗子の元彼である栄治が亡くなりました。

栄治は大手製薬会社を経営する一族で、莫大な遺産を残していました。そんな彼の遺言状には、「彼を殺した犯人に遺産を相続する」という奇妙な遺言が書かれていました。
麗子は、栄治の友人である依頼人の弁護士となり、栄治の遺産を相続するために動きます。

普通なら、犯人を探し出した人に遺産を相続する、というのがセオリー。
でも本作は、遺産を相続するために犯人を仕立て上げるという奇抜なもの。この時点で「おっ」と思い引き込まれますよね。

また、これは単なる殺人犯探しではありません。栄治の遺産には、森川製薬の大量の株式も含まれており、犯人を認定する森川製薬の経営陣に対しいかに良い提案ができるかを試されるという、頭脳戦の一面もあります。

さらに、読んでいるとこれはミステリー小説だけではなくお仕事小説であることもわかります。弁護士、看護師、警察。それぞれにはそれぞれの矜持があり、それぞれの行動心理がある。特に主人公である麗子の心情からは、著者だからこそ書ける弁護士のリアルな感情や葛藤が感じられます。

人物同士の繋がりが複雑で、それぞれの人物描写も深い。麗子が徐々に男性のプライドを理解するのも面白い。多くの要素が絡み合う複雑な物語なのに、そう感じさせないとても良い小説です。

栄治を殺した犯人は誰か?友人か、元カノか、親族か、それともただの病死なのか。

森川家を巻き込んで二転三転する憶測。殺害された顧問弁護士、躍起になる警察。そして徐々に明らかになっていく真実と壮大な計画。とても楽しみながら読むことができました。

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二人一組になってください/木爾チレン/双葉社

図書館

木爾チレンさん(←変換ムズイ)の著作を読むのはこれで2作目。
最初に読んだ「神に愛されていた(実業之日本社)」が非常に好みだったのと、本作が発売された時に話題になったので読んでみることに。

にしても木爾さんは本当に思春期の女性同士の人間関係やジレンマなどを表現するのが上手いですね。読んでてぞわぞわします。

舞台は京都にある女子高。その卒業式の日。実はこのクラスには「いじめ」がありました。
いじめをした人間は「死刑」にならなければならない。そんな非常に物騒なことをいう担任教師が突如始めたデスゲーム。二人一組になれなかった生徒は失格・・・。最後まで残るのは果たして誰か・・・。
いつも事前情報なしで読み始めるので、突如始まったデスゲームにはビビりました!

舞台が女子高なので完全に共感はできませんが、スクールカーストはわかりますね。
一軍、二軍、三軍に自然に分けられるクラスメイト。誰に指示されたわけではないのに自然にそうなり、しかも本人たちはそれを自覚している。一軍に話しかけられるのは二軍まで、三軍に対して一軍は無視するか茶化すだけ。しかも二軍や三軍の中にもさらに細かなカーストがある。

そして、それまでなんとなくアンバランスながらもできていたカーストが突如崩れることも。
自分が上位だと思っていたら圧倒的に超えてきたバランスブレイカーがカーストを無視して動いたり、下にいると思っていた人がなぜかカースト上位とつるんだり、見下していた相手が突然力を持ったり、いじめによって急に最下層に落ちたり・・・

やばい、面白い。誰と誰が実は仲が悪かったり、知り合いだったりするんだろう。次は誰が死ぬんだろう。そして、誰が最後に卒業するんだろう。

それぞれの女子生徒が持っているコンプレックスや暗い思いのリアルさがキツイ。仕方なく友達グループにいるもの、相手を見下しているもの、見下していた相手から見下されるようになったもの。死の直前、これまで言えなかった黒い思いをぶちまけたり、そうかと思えば、美しい友情を持ったまま一緒に失格になったり。

終盤になって判明するクラスメイト同士の関係がとにかく切ないです。これを知った上で最初から読むと、また違ったことを感じたり気づいたりするのでしょうね。良くできた作品です。

「特定の生徒」や結末などは僕のイメージと違ったこと、さすがに非現実感が強かったことは感じましたが、それを吹き飛ばすくらい非常に興味深く読むことができました。

 「無自覚の悪意」。普段は考えないようにしているその怖さを、こうも丁寧に、生々しく読者にぶち込んでくる、恐ろしい作品。でも読むのが止まらない。
普段は覗けない、禁忌やパンドラの箱を開けたような、そんな感覚。

ぜひ中高生に読んでほしいです。
いじめをしたら、いや、いじめをしていなくても「無自覚の悪意」を持っていたらどうなるのか、知ってほしい。それによって罰を受けるのは当事者だけじゃないはず。

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【NEW!!】あなたが出品されました/狂実/スターツ出版

Kindle+

Xで相互フォローさせていただいている狂実(くるみ)先生のデビュー作にして、第2回モキュメンタリーホラー小説コンテストの大賞受賞作。
あまりホラーは読まないのですが、Kindle+で読み放題ということもあり読んでみました。

本作の主人公である女子大生のミナミは、フリマアプリ『バイバイ【BuyBye】』で、他人が出品した品物を見て、他人の生活を覗き見する感覚におもしろさを感じていました。

そんなある日、バイバイで見つけた口紅。それは自分の部屋から消えた口紅でした。その後も、自分の部屋の排水口から取り出されたと思われる髪の毛など、ミナミの所有物と思われるものが次々とバイバイに出品されます。

気味が悪くなったミナミは、彼氏や友人、そしてネット掲示板の力も借りながら、自分の所有物を出品し続ける謎の出品者「М氏」の正体を暴くために行動します。

僕たちは、現実でもメルカリやラクマなどのフリマアプリを日常的に使用しています。
確かに、フリマアプリでは出品者の生活を勝手に想像したり、少しでも信頼できる出品者から買おうとしたりと、知らず知らずのうちに他人の生活を勝手に覗き見しているような感覚になるときもあります。

本作では、冒頭からそんなフリマアプリに対する違和感や居心地の悪さへの解像度が高く、ハッとさせられます。そして、他人の生活を覗き見することを楽しんでいた主人公が、今度は自分自身の生活を何者かに覗き見される立場になってしまう。この構図がなんとも不気味です。

ネット掲示板上のやり取りや、実際のフリマアプリのように写真と説明付きの出品ページなどが本作のいたるところで描写されており、身近で容易に想像できるテーマだからこそ、「もし自分に起きたらどうしよう」と考えながら読むことができました。

本作を読んでいると、誰も信じられない疑心暗鬼に陥る感覚や得体の知れない不気味さを疑似体験できてゾワゾワします。それでも、M氏とは一体誰なのか、何が目的なのか、そしてどんな結末を迎えるのか。真相が知りたくてページを読み進めてしまいます。
逃げ場のない怖さ、救いのない現実の恐ろしさ。そして登場人物たちの狂い具合。読み進めるほどに不穏な空気が濃くなっていく展開に引き込まれました。

フリマアプリという便利で現代的なものと対照的に描写される、深い悪意と徐々に判明する真実。

ホラーではあるんですが、上でも説明したように想像しやすい身近な設定と、さくさく読めちゃうテンポのおかげで一気に読み終えることができました。また、実写化やコミック化などのメディア化もしやすいように感じました。

人によって好みはあるのでしょうが、安易な結末にしていないところや、突然終わって読者に余韻を感じさせる最後の描写も好みでした。

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虚像の道化師/東野圭吾/文藝春秋

図書館

探偵ガリレオシリーズの7作目。今回は7編からなる短編集です。
しっかりとした人物や設定の掘り下げがあるのと、丁寧に配置された伏線を後半で一気に回収するのが読んでいて非常に楽しいので、ガリレオシリーズは基本的に長編の方が好きなのですが、短編集はまた違った楽しみ方ができますね。

今回は念とか透視とかテレパシーとか、そういうテーマの話が多かったです。そうじゃない話も、人の気持ちやモチベーションなど、精神的なものをテーマにしている感じですね。
それにしてもこんなにバリエーション多くかつクオリティの高いミステリーを量産するなんてマジですごいです。マジですごいとしか言えない僕の語彙力では無理でしょうね。

以下気に入ったお話です。

1.幻惑す(まどわす)
新興宗教団体の幹部が飛び降り自殺した。教祖による念によるものとして教祖が自首したが、もちろんそれでは起訴できません。

そんな状況なので、宗教団体の施設の現地での検証もできません。送られると体がなんだか温かくなるという教祖の「念」。その力は本当なのか、そして、幹部はなぜ亡くなったのか。結末は虚しいものでした。

3.心聴る(きこえる)
草薙の同期で優秀なのに、所轄の刑事におさまり燻っている北原。彼にはやや頭が固い性格と、評価されないジレンマがありました。そんな中、同じ会社の社員に起こった自殺や、社員による傷害事件。彼らには幻聴のようなものが聞こえていたのではないか。

事件に関係のない一般人の湯川が介入することに北原は嫌悪を抱き、耳鳴りなんて精神の病と一蹴します。

真相が判明後、犯人の思いを聞いた北原から犯人への説教に心を打たれました。北原の不器用さと忸怩たる思いに非常に共感できます。北原はいいキャラですね。再登場を願います。

4.曲球る(まがる)
この話が一番お気に入りでした。
戦力外通告されてベテランのプロ野球選手・柳沢。その妻が殺害されました。妻からは引退を進められながらも、現役続行を諦めきれないという中途半端な状態での事件でした。そして、妻はもしかしたら不倫をしていたのではないか・・・

事件の後、現役を希望しながらも全盛期の投球が戻らない柳沢とそのトレーナーは、バドミントンシャトルの物理的な研究をしていた湯川に、アドバイスを聞いてみることとなります。

湯川がプロ野球選手、およびスポーツそのものを大変リスペクトしているのが感じられます。また、この話に限ったものではないけれど、湯川があくまで自分は物理学者というポジションを崩さないのも非常に好感が持てました。そして、真相は感動的なものでした。

上記以外にも、「偽装う(よそおう)」の最後もいいし、「演技る(演じる)」の真相には完全に騙されました。なんでこうも短編の中で感情を揺さぶり、かつうまく繋げる話を書くことができるのか。不思議です。

虚像を追い求める人生もあるということだ

虚像の道化師/東野圭吾/文藝春秋
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以上、2026年10月の読了本紹介でした!

おわり

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鳴山シンゴ / Shingo Naruyama
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化学メーカー社員/ブロガー | Chemical Manufacturer Employee / Blogger
世界を旅するブロガーを目指す30代化学メーカー社員。趣味(読書、カメラ、サウナ、旅行、バドミントン)やお金・ライフハック関連の記事を投稿しています! | English | Japan-based blogger working for a chemical manufacturer. I share real experiences and practical tips about travel, saunas, activities, and everyday life in Japan.
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