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2026年6月の読了本【11冊】

2026年6月の読了本【11冊】
鳴山シンゴ
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2026年6月に読んだ本を紹介します!

上半期最後の6月は小説を11冊読めました!
6月はいずれも素晴らしい作品ばかりで本を読む手が止まりませんでした!

ネタバレなしで紹介していますのでご安心ください!

5月(前月)の読了本は以下記事にまとめていますのであわせてご覧ください!

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また、2026年上半期のベスト本10冊は以下記事にまとめています!

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2026年上半期のベスト本10冊
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2026年6月の読了本(読了順)

①誰が勇者を殺したか 賢者の章/駄犬
②もつれ星は最果ての夢を見る/市川憂人
③容疑者Xの献身/東野圭吾
④フリーランチの時代/小川一水
⑤阪急電車/有川浩
⑥手紙/東野圭吾
⑦かがみの孤城/辻村深月
⑧ボトルネック/米澤穂信
⑨人生は並盛で/小野寺 史宜
⑩アンドロイドは電気羊の夢を見るか?/フィリップ・K・ディック
⑪探偵ガリレオ/東野圭吾

誰が勇者を殺したか 賢者の章/駄犬/KADOKAWA

購入本

ついに「誰が勇者を殺したか」、通称“だれゆう”シリーズも4作目です。

4作目でもしっかりとタイトルの通りのストーリーとしているのは見事。ネタバレになるのであまり言及しませんが、この勇者システムを生み出したからこそ、何度でもタイトル回収できるのが秀逸ですね。

本作は「賢者の章」。賢者と言えば、魔王討伐パーティーにいた魔法使い:ソロンしかいないでしょう。

そんな賢者ソロンが勇者として選ばれた世界線。ソロンはアレスを除けは唯一魔王城までたどり着いた勇者。1人で旅をし魔王城までたどり着いたと思われていたソロンには、実はエルフのパーティーがいました。

幼き頃から神童と言われ、完璧で天才だから仲間なんていらないし、何でもできる。そう思っていたソロンでしたが、いざ魔王討伐の旅に出てみると、1人では食料も調達できないし、できないことも多い。

旅で自分の無力さを知り、人と触れてソロンは成長していきます。

また、エルフのエーブがソロンにとって良いパートナー過ぎますね。
エルフという中立で人とは一線を画す立場だからこそ、ソロンの賢くて愚かなところや、言動と心中のギャップなど、いくつもの矛盾などを客観的に示してあげる。ソロンもそんなエーブに悪態をつきながらも共に旅するのを心地よく感じます。

魔物が人間を襲う理由や、魔人の生態なんかもしれっと出てきて、徐々にこの世界のことがわかってきます。

シリーズものでありながらパラレルにできるという本作のシステムが、重要な情報を矛盾なく後で補完できるのに最適なのでしょうね。繰り返しになりますが良くできたシステムです。

結局、絶対的な善悪なんてないというか、立場によって変わるのでしょうね。人間にも魔人にも秩序があり、それぞれがそれを守るために戦います。

そして、どの章でも的確に「ザ・RPG好き」の心をくすぐります。僕たちが求めていた、剣と魔法のベタなRPGがここにあります。大好きです。

俺は天才だ。それは間違いない。けど、それを才能と読んでいいのは、俺と同じ努力をしたヤツだけだ。お前らはやってないだろ?勝手に「ソロンと比べれば才能がない」といって諦めているだけだ。俺を言い訳に使うんじゃねぇ。

誰が勇者を殺したか 賢者の章/駄犬/KADOKAWA

かなり序盤のセリフですが、↑ここにアレスが勇者たり得た理由が詰まっている気がしました。そして、この4作目を読んだ後、むしょうに1作目のアレスとソロンの出会いを読み返したくなりました。

元々の優れた知性と卓越した魔法の実力、そして旅で成長した人間性もあわせ持ったソロンは魔王に挑みます、その結末はどうなったのでしょうか。
まあ言うまでもなく負けちゃうのですが、いかに戦い、いかに散っていったのでしょうか。

そして今回も、「誰が勇者を殺したか」

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もつれ星は最果ての夢を見る/市川憂人/PHP研究所

図書館

不思議なタイトルの本。タイトルから僕の好きなSFっぽい内容だろうと気になっていたので読んでみることに。

著者は「ジェリーフィッシュは凍らない(東京創元社)」の市川憂人先生です。「ジェリーフィッシュは凍らない」を読んだ時はそんなに感じなかったのですが、こんなにも宇宙と物理に明るい人だったんですね。
調べてみると学部は不明ですが、なんと東京大学を卒業されているとのこと。すごいですね。しかも本作ではAIの勉強にもなります。非常に興味深かったです。

さて、本作の舞台は人類が亜光速で宇宙空間を移動できるようになり、量子テレポーテーション通信の開発で遠く離れた場所でもスムーズに通信が可能となった未来。

地球から十光年離れた宇宙で繰り広げられるのは、人類の居住地を探る宇宙開発を目的としたコンペ。冷凍睡眠から目覚めた各参加者はそれぞれの課題達成を目指します。

大企業の社員や御曹司が参加者に名を連ねる中、相棒のAI・ディセンバーと共にコンペに参加する地球の中小企業勤務のエンジニア:零司は、自身の存在を場違いに感じながらも勝利を目指します。

そんな零司がポイントに到着し課題を行おうとしたところ、何とコンペの競合相手であるピエールの銃殺死体を発見します。

非常事態のため、他の参加者と協力を試みようとするも拒絶されてしまった零司。さらに悪いことに本部との通信も途絶してしまいます。

脈絡なく始まり状況が理解できないプロローグ(Ⅰ)。そしてそのプロローグ(Ⅰ)とは関係がなく、語り手がコロコロと変わり専門的な内容も多いプロローグ(Ⅱ)。この2つのプロローグを読むのは正直若干苦労しましたが、第一章に入ってからは読むのが止まりませんでした。

ピエールはなぜ殺されたのか、そもそもなぜここにいたのか。そして徐々に殺されていく参加者たち。コンペ参加者以外の謎の機体・・・。

恒星間移動などが可能となった未来というSF要素×ミステリーで、これまでにない感覚を覚えながら読者たちは謎解きを始めることになります。
が、徐々にこのコンペの目的が明らかになってきます。そして事態はさらに桁違いに悪い方向へ向かってしまいます。

この風呂敷をどう畳むんだろうと思いながら読んでいると、さらに一段深みのある展開となり驚きます。いやー、良くできていますね。冷凍睡眠による時差が本作の面白さや仕掛けにより一層の厚みを持たせてくれています。

連続殺人の犯人は誰で、どのように実現したのでしょうか。また、地球とこの宇宙はどうなってしまうのでしょうか。読む前には予想もしなかったスケールの大きさに後半は驚きっぱなしで、「三体(劉 慈欣/早川書房)」シリーズを読んだ時と同じ気持ちになりました。

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”量子もつれ(エンタングル)”・・・
不思議なタイトルも、意味を噛み締めながら読むと興味深いですね。タイトル通りの名作です!

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容疑者Xの献身/東野圭吾/文藝春秋

図書館

ようやく読めた探偵ガリレオシリーズ。第6回本格ミステリ大賞、第134回直木三十五賞受賞作。はい名作です。

探偵ガリレオシリーズとしては3作目ですが、初の長編作品です。これがシリーズ3作目であることを知らずに読んでいましたが、全く問題なく楽しめました。

また、舞台が東京の東側であることや、湯川の趣味がバドミントンであることなど、思いがけず馴染みのあることばかりで無駄に楽しかったです。

一人娘の美里と2人で暮らす靖子は、どこに逃げても追いかけきてしつこく金をせびってくる元夫を殺してしまいます。

この親子の横の部屋に住み、密かに靖子に恋心を抱いていた高校の数学教師:石神は、彼女たちが殺人をしてしまったことを知り、彼女たちを救うために完全犯罪を企てます。

この石神は高校の数学教師をしていますが、もともとは天才的な数学者。そして“探偵ガリレオ”こと湯川とは大学時代の友人でした。石神はその天才的な頭脳を遺憾なく発揮し、親子の犯罪の証拠をほぼ完璧に消し、アリバイも作りあげ、彼女たちが無罪になるようなプランを実行します。

その計画の立て方が本当に緻密で素晴らしい。そして全く数学は活用されないのに、どこか数学的。

石神が生徒に向けて語った、“数学を勉強する意味”の説明が素晴らしい。なのに、なんでこんなことをしちゃったのかなぁ。

湯川は、非常に尊敬する友人である石神を信じたい気持ちを持ちながら、石神こそが黒幕であると推測し謎を解いていきます。二つのどうしようもない思いに挟まれ深く葛藤する湯川が、読んでいて辛かったです。

終盤に向かうにつれ色んな謎やトリックはわからないながらも、石神がなぜ自ら罪を被ろうと思ったのかについてはほぼ確信に近い推測をしていました。
そんなわかったつもりになった僕をあざ笑うかのように、真相はより複雑でした。何もわかってなかった僕は頭を殴られた気がしました。

石神との友情、そして数学者としての天才的な頭脳を失うことに苦渋する湯川がただただ切なかったです。緻密なミステリーだけではなく、やるせない人間ドラマも同時に読むことができる、間違いない名作です。

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フリーランチの時代/小川一水/早川書房

図書館

数年前からずっと読みたかった本。図書館で偶然発見しテンションが上がりました。

本作は僕の超好みのSF独立短編集です。どれも面白い。ハードルを上げて読んだけど期待以上でした。
表紙は少しポップというかラノベっぽいけど、それて敬遠している人はもったいないと思います。

表題作の「フリーランチの時代」。なるほど、だから“フリーランチの時代”か。
火星で事故に遭い大怪我の彼女を救い、体を細胞からナノマシンの集合体に作り変え、さらに不老不死にしたのは、火星に住むエイリアンだった。最初からぶっ飛んでるけど面白いです。

「Live me Me」は事故によって感覚や運動能力を失った女性が、ロボットの体を手に入れて自身の肉体の世話もしながら生活するというもの。“私”とは何か?昏睡している肉体か、思考を続けている脳なのか、それともロボットの体か・・・

「Slowlife in Starship」が個人的に一番のお気に入りです。
宇宙航空技術が発展し、居住の形態と範囲が広がった未来。最低限の仕事と人との付き合いをすれば、後は自分の宇宙船に籠りスローライフを送ることができる生活。お金をたくさん稼ぐ必要もなければ出世や結婚などとも無縁。依頼された仕事までの宇宙空間の移動時間をのんびりとどのように過ごすか。

現在の僕たちが遥か遠くに感じている宇宙を自由に航行できるようになっても、人の営みは基本的には変わらないんだなと感じさせてくれます。

「千歳の坂も」は、不老不死が当たり前になり、健康であることを義務付けられ、一定の人が死を望む世界。でも一つの状況が安定して続かないのが人の性。いつしか不老不死者は排斥されるようになり、時は経ち、国や生活の形も大きく変わり・・・

そんな中、主人公である厚生勤労省健康維持局に勤める羽島と安瀬眉子の、長い長い時を経た追いかけっこ。なんだか哲学的だけど、古典のように文学的でもありました。

「アルワラの潮の音」は、本作の中で一番不思議なお話でした。
同著者の「時砂の王/早川書房」のスピンオフ作品とのことで、そちらを読んでいればもっと楽しめたのでしょうね。もちろん読んでいなくても非常に楽しく読めます。

島国に暮らす民達。ある日、アルワラ族はホンアプレ族の反乱を受けてしまい、それを鎮圧するためにホンアプレ族の島に向かいます。状況は完全に理解しきれないまでも、「どこがSFなんだ?」と思いながら読んでいると、事態は思わぬ展開へ・・・そこからは間違いなくSF作品でした。民族的な話からSF作品への振り幅が大きく、非常に面白かったです。

どの話も趣は違うけれども、しっかりとSFでユーモアもあり、ちょっとほろ苦くも感じる。読んで良かった一冊です。

阪急電車/有川浩/幻冬舎

図書館

前から存在は知っていた本作。関西に戻ってきたので読んでみることに。
2011年に「阪急電車 片道15分の奇跡」として実写映画化もされていますね。

舞台は阪急今津線というちょっとマイナーな路線、宝塚から西宮北口の片道わずか15分。どうやら作者が沿線に住んでいらっしゃったとか。(というか現在も阪急沿線にお住まいとか)

というか作者の有川先生って女性だったんですね。ペンネームから男性だとずっと勘違いしていました。失礼いたしました。

本作では、宝塚から西宮北口を繋ぐ阪急今津線に乗る人々がちょっとした出来事や人の温かさに触れ、繋がっていきます。

大きな事件も起こらないし、めちゃくちゃハッピーエンドになるわけでもない。何でもない、でもほんの少しの変化のある日常が、偶然電車に乗り合わせた人と人とを繋いでいきます。2010年だからまだみんなスマホを持っていないのも、なんだか懐かしい感じにさせてくれますね。

図書館に通う時に見かけた好みの女性と話すきっかけができた青年、婚約者を寝取られ結婚式に白いドレスで討ち入りした美女、犬が好きな老女とその孫娘、モラハラな彼氏にうんざりしている女子大生、地方から出てきてお互いはじめての彼氏彼女となった大学生、社会人と付き合っている受験生の女子高生・・・などなど。

個人的には老女の時江さんが好きでした。しっかりと強い意志と正義感を持って孫も教育するし、非常識な乗客に注意するなど。こうありたいと思わせてくれる人物でした。
結婚式に討ち入りした翔子に共感し道を示し、モラハラな彼氏を「くだらない男」と一刀両断し彼女であるミサに別れを勧めるなど、時江のかっこいいシーンはたくさんあります。

前半は、宝塚から西宮北口方向に向かう電車の各駅で一遍が分かれており、後半では折り返して西宮北口から宝塚へ向かいます。
往路では、前半であった出来事や出会いの「その後」が書かれています。詳しくは書けませんが、登場人物たちは皆一歩ずつ人生が良い方向へ進んでいます。

阪急電車に慣れた人はもちろん楽しく読めますし、あまり知らない人でもいろいろと想像しながら楽しく読めると思います。そして読み終わると胸がほっこりします。

ふらっと乗ってみて、理由もなく思い立った駅で降りてみたくなる。そんな素晴らしい小説です。

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手紙/東野圭吾/文藝春秋

図書館

不朽の名作と名高い本作。図書館で見つけたので読んでみることに。
(どうでもいいですが、超有名作はなんとなく敬遠してしまう気持ちってありますよね)

両親を亡くし、学もなく、体を痛め引っ越し屋のバイトもできなくなった兄:剛志。貧しい生活を送りながらも、弟:直貴の大学進学費用を手に入れるために豪邸に空き巣に入り、思いがけず住人を殺してしまいます。

そんな兄から弟に毎月1通届く、獄中からの手紙。

犯罪者の家族に罪はない。そんなことはみんなわかっている。それでも、直貴の周辺の人は直貴になるべく関わないようにする。

強盗殺人罪の加害者の弟という“呪い”。大学進学もできなくなり、友人は離れ、夢も諦め、結婚も諦め、就職でも不当な扱いを受け・・・。

少し人生が好転しても、重い呪いが直貴の足を掴んで離さない。「今度は大丈夫だろう」と半ば祈りに近い気持ちで読む読者もヒヤヒヤとさせられ、「ああ、またか・・・」と絶望する。本作の舞台である2000年代初頭ですらこんな状況なので、ネットやSNSが発達した現在だとさらに加害者の家族は生きづらいのでしょうね。

波乱万丈で地獄のような直貴が暮らす「外」の世界と、手紙の文面だけ見ると呑気で平和な世界に見える「中」の世界。兄の存在に足を引っ張られてばかりの直貴は、次第に兄の存在を疎ましく思い始めます。

絶望しかなさそうな状況においても、直貴自身を見てくれる人は存在します。学校の先生、アルバイトしていた飲食店の店長、職場で会う女性、学友・・・。そんな中、直貴に語りかけてくる社長の言葉と考えにハッとさせられます。

本作は、単純に「差別をなくそう。被害者家族はこんなにも辛いんだ」ということがテーマではありません。いくら綺麗事を言っても、世の中から犯罪がなくなるわけではなく、犯罪者もいなくならない。

犯罪者は自分のみならず、自分の家族や一見全く関係がない人々にも、世間から差別されるという刑を科してしまうのです。世界から犯罪を少しでも減らすために差別はあって当然のもの。なのでしょう。

犯罪者は自分の家族の社会性をも殺す覚悟をもたねばならない。そのことを示すためにも差別は必要なのだ。

手紙/東野圭吾/文藝春秋

兄から毎月届く手紙と、兄の存在によって縛られてしまう人生。直貴と本作は、どういった結末を迎えてしまったのでしょうか。

手紙は、書くべきだったのか。皮肉にもそれを教えてくれるのは、手紙だったのでしょうね。

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同じく加害者家族をテーマにしている小説「蝋燭は燃えているか(桃野雑派/講談社)もオススメです!

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かがみの孤城/辻村深月/ポプラ社

図書館

2018年本屋大賞受賞作。
辻村深月さんの最大のヒット作ですね。アニメ化、マンガなどのメディア展開もされています。

通っている中学校に居場所がなくなり、不登校となってしまった主人公:こころ。同じ学校の生徒に会うのも怖い。自宅から出られない。そんなこころの目の前で鏡が突然光り始めます。

鏡の中に入ってみるとそこは不思議なお城で、自分の他に6人の同年代の男女と“オオカミさま”と呼ばれる狼の仮面を被った不思議な少女に会います。

どうやらこころ以外も、何らかの事情があって学校に行っていない子どもばかり。彼らは、見つければ何でも願いが叶うという“願いの部屋”を開けるための鍵を探すことになります。

とはいえ、この孤城にはうるさい家族も怖い同級生達もいない。居心地の良い空間でのんびりと過ごすことに味をしめた彼らは、鍵を本気で探さず時を過ごします。

でも一見避難場所に見える孤城の中でも、人が集まればいろいろなことが起きてしまい、そこからも逃げ出してしまうなんてこともあります。

序盤では彼らの事情は断片的にしか明かされませんが、読み進めていく内にだんだんと明らかになっていきます。その過程も素晴らしいです。みんなの境遇はそれぞれ辛いんだけど、やはりこころの主観で描かれていることもあり、どうしてもこころに同情してしまいますね。彼女が悪いわけではないので余計にそう思ってしまうのでしょう。

また、自分が親になったからか、どうしても親目線で読んでしまいました。 同じ本でも読む時期やタイミングで捉え方は変わるのでしょうね。

誰しも中学生くらいの時は、大小は違えど本作の登場人物と似たような悩みはあったはずです。僕にもありました。自分が中学生の時この本を読んでいたら、また違った思いを感じたのだと思います。

そしてやはり、子どもたちを支えてあげる恩師のような人に出会えるかどうかは非常に大事なのだと改めて感じました。

物語が進むにつれ、彼らはあることに気付き、とある作戦を立てますが、その作戦も実現することができません。その事実が彼らを混乱と絶望へ誘います。そのカラクリがこの作品の最大の鍵であり、素晴らしいところです。

僕にしては珍しくそのカラクリとある人物の正体には途中で気づきました。でも、カラクリがわかってもなお良い結末でした。また、気づかない点もありました。城では水が出ないのに電気は使える理由、オオカミさまとは何者か・・とかね。

いろいろとツッコミたいところはありましたが、まあそれはかの有名なアニメ映画のシステムみたいなものが適用されているのでしょう。

特に好みだったのは、冒頭の文章からのエピローグでした。

彼らは鍵を見つけたのでしょうか。そして誰かの最後の願いは叶えられたのでしょうか。

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ボトルネック/米澤穂信/新潮社

図書館

何かとよく聞く本作。読んでみました。
解説によると米澤先生が10代のころから構想を練り、20代後半にして出来上がった作品だとか。確かに読んでみると、悩み多き10代のなんとも言えないもどかしさが上手く言語化されているように感じました。

主人公は高校1年の嵯峨野リョウ。気が合わない兄は寝たきりの末に亡くなり、両親は共に不倫に現を抜かすという最悪の家庭環境で暮らしています。さらに悪いことに、唯一の理解者と言ってもいい恋人である諏訪ノゾミを事故で亡くしてしまいます。

恋人の追悼のため訪れた東尋坊で墜落してしまったリョウは、急に金沢で目を覚まします。目覚めたのは、自分がいた場所とよく似ているけど少し違う世界。

そこでは父、母、兄はいるけど自分がいない。そして嵯峨野家には自分の代わりに娘:サキがいます。他にも、割れた皿が残っていたり、閉業した食堂が残っていたり、恋人のノゾミがまだ生きていたり・・・

リョウはサキと共に、自分が「生まれなかった」この世界のことと、自分の世界に帰るための方法を探します。

嵯峨野家と諏訪家にはとある岐路がありました。その岐路で各自がどのような行動をしたのか。その行動はどんな結末をもたらすのか。本来知りえるはずのない“if(もしも)”を検証できる世界で、リョウはだんだんと残酷な事実と、自分がこの世界に来た意味に気付いてしまいます。

リョウやサキがちょっと高校生にしては成熟し過ぎているように感じるのが違和感ではありました。でも上で紹介した「かがみの孤城」と同様に、若い頃に読んでいればもっと感情移入できたのでしょうね。

「ボトルネック」という言葉。意味は知っているけど、なぜそのタイトルなのか。中盤までは分からず読んでいました。

自分が存在しない平行世界に迷い込むことで感じた、自分の意味とは・・

人生は並盛で/小野寺 史宜/実業之日本

Kindle Unlimited

今月は図書館で借りたリアルの本ばかりで久しぶりのKindle Unlimited。何気に初読みの作者さんです。

作品名とポップな表紙から穏やかな内容かと思ったら、第一話からいきなりひりついていてびっくりしました。

舞台はいわゆるファストフードの牛丼屋。
子どもを持ってはいるけど、旦那との関係は冷めていて自分はアルバイト先の若手と不倫している恵。若い男性にはすり寄り、気弱な年下や太めの女性は見下し、自分の都合でルール違反をする。無責任な母親の負の部分がこれでもかと見えてモヤモヤします。

一方、責任感も強く仕事もきっちりこなすが、おデブな理系女子大生の日和。真面目で頭の良い日和はそんな恵のことを当然よく思っていませんし、恵の浅はかな言動などお見通しです。

そんなドロドロの第一話で、日和は恵に逆襲を試みます。そして、まあまあ衝撃的ですけどある意味予想できた結末を迎えて第一話は終了します。

第二話に入ると少し安心しました。
いや、内容的にはどちらかというと暗い話で、飲酒運転による事故で死人なんかも出てしまうのですが、登場人物たちの視点がコロコロと数珠繋ぎのように変わり、第一話のようなドロドロさはありません。
第二話ではいろいろと出来事は起こりますが、そのどの視点も深掘りされません。まるでインスタントに出てくる牛丼のように。

第一話で物語の大きな出来事を示し、第二話で情報を散りばめ、そして終わりの第三話。
第三話では点と点が繋がり、「あの人ってこの人じゃん」とか「あの出来事ってこれじゃん」ってことに気付き、読者は伏線回収のような気分を味わえます。

でも登場人物たちはその繋がった点を認識できませんし、認識していたとしても大きくは動きません。

人生ってそんなものかもしれませんね。奇跡的なつながりで人生が大きく好転したり、運命的な出会いがあったり・・・という主人公的なことはめったになく、自分の知らぬところで偶然は勝手に起きて、時は流れていく。

牛丼屋を中心に繰り広げられる人間ドラマ。本作を読んだら牛丼屋に行きたくなる。かもしれません。

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アンドロイドは電気羊の夢を見るか?/フィリップ・K・ディック/早川書房

図書館

不思議なタイトルで、昔からずーっと気になっていた本。
1977年に発行され、僕の手元にあった本は95刷目。50年近く前の作品が現在も発行され続けているというのはただただすごいですね。
(読んだ後に知ったのですが、映画「ブレードランナー」の原作だったのですね)

さて、この作品が書かれたのは1970年代。作中は、「最終世界大戦」が過ぎた1990年代。
人々はアンドロイドと共に宇宙に避難し、放射能灰に覆われた地球に残った人々の富の象徴は、本物の動物を所有することでした。

本作は主に2人の視点で進みます。
主人公のリック・デッカードは地球に紛れ込んだアンドロイドたちを処理するバウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)として警察に勤めますが、彼の給料では本物そっくりの“電気羊”を飼うのが精一杯。彼は本物の動物を飼うことを夢見て、今日も人間に扮したアンドロイドを追います。

もう1人は、J・R・イジデアという青年。彼は精神機能テストの最低基準に合格できていない“特殊者(スペシャル)”であり、現在は誰も住んでいない大きな集合住宅に1人で暮らしています。ある日、そんな彼の真下の部屋で1人の女性が生活するようになります。

2人の主人公は、アンドロイドと関わる中で、アンドロイドに特別な感情を抱くようになります。

冒頭にも書いた通り、本作は50年近く前に書かれたSF作品です。
ですので、読み始めは知らない単語と説明不足(意図的にかもしれませんが)なストーリーで読むのに苦労しました。が、世界観と単語に慣れた中盤からはスルスルと文章が入ってきます。

人間と区別がつかないアンドロイドが普及し、宇宙にも住居を構えているという近未来設定なのに、カーボンコピーを使ってたり電話の交換手がいたりと、チグハグな未来の描写がまた本作の不気味さに拍車をかけている気がしますね。

リックが狙うターゲットはアンドロイドなのか、それとも人間なのか。彼ら彼女らはアンドロイドの自覚があるのか、それとも自分を人間だと信じているのか。撃ってしまうと、何が起こってしまうのか。

読み進めると、徐々にタイトルについて自分なりの解釈ができます。
人間ではないアンドロイド。彼らも人間になりたがるのか。なったとして、叶えたい夢はあるのか。 そしてそれは電気羊でもよいのか。

「きみはアンドロイドに魂があると思うか?」

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?/フィリップ・K・ディック/早川書房

少し読むのに苦戦するSF小説かもしれませんが、読んでみると色んな問題を僕たちに投げかけてくれているような気になります。

探偵ガリレオ/東野圭吾/文藝春秋

図書館

「探偵ガリレオ」シリーズの記念すべき第一作目。
事前情報による先入観を避けたいがために下調べをしない読書スタイルのあまり、先にシリーズ三作目の「容疑者Xの献身」を読んじゃいましたが、まあ問題なし。

本作は五章からなる短編集です。連作ではありませんのでどの順番で読んでも良いですし、一話完結型なのでテンポも速くサクサク読めちゃうのも良きですね。

さて、警視庁捜査一課の草薙は、様々な不思議な事件に遭遇します。
突如燃え上がった若者の頭髪、池に浮かんでいた死者の顔そっくりのデスマスク、胸の部分だけ壊死していた死体、海上で突如爆発炎上したビーチマット、見えるはずがない物を幽体離脱して見た少年・・・

一見すると、SFやオカルトのようなこれらの状況。お手上げとなった草薙は大学の同期である天才物理学者:湯川へ助言を求めます。(警察がこんなにポンポンと捜査の状況を一般人に流して良いものかと感じちゃいますが、まあそこは30年近く前の作品なので大目に見ざるを得ないですね)

湯川はこれらの難事件を、科学の知識と実験で解決に導きます。

僕はミステリー史についての知識はほぼありませんが、1990年代後半の本作が発刊された当時、こういった謎解きスタイルはまだメジャーではなかったのではないでしょうか。(違っていたらすみません)

一見関係なさそうな言動や情報が、物理学によって論理的に紐解かれ、繋がっていくのが面白いですね。また「容疑者Xの献身」の紹介でも書きましたが、本シリーズの面白いところは、単なる「科学ってすごいんだぞ」とひけらかすような内容ではなく、しっかりと人間ドラマも両立している点だと個人的には思います。

さて、遅ればせながら「探偵ガリレオ」シリーズの沼にハマりますかね。いつ読んでも面白いのが、読書の良いところですね。

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以上、2026年上6月の読了本でした!

おわり

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鳴山シンゴ
鳴山シンゴ
化学メーカー開発営業 / ブロガー
世界を旅するブロガーを目指す30代化学メーカー開発営業。趣味(読書、カメラ、サウナ、旅行、バドミントン)やお金・ライフハック関連の記事を投稿していきます! ※現在英語勉強中のためブログは低空飛行。
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