2026年7月の読了本【11冊】
2026年7月に読んだ本の紹介と感想をネタバレなしで書きます!
7月は小説が10冊、エッセイが1冊の合計11冊でした。
7月はPCが急に故障し月の半分くらいはブログに関連する作業ができなかったのと、本業が急に忙しくなったのですが、なぜか本は安定的に読むことができました!
(だって図書館の予約本がどんどん届くから・・・)
ネタバレはありませんので安心してご覧ください!

6月(前月)の読了本は以下記事にまとめていますのであわせてご覧ください!

①あっというまに/竹内海南江
②MAZE/恩田陸
③変な家/雨穴
④神に愛されていた/木爾チレン
⑤東京都同情塔/九段理江
⑥横浜駅SF/柞刈湯葉
⑦問題。以下の文章を読んで、家族の幸せの形を答えなさい/早見和真
⑧プロパガンダ・ゲーム 偽情報戦/根本総一郎
⑨リカバリー・カバヒコ/青山美智子
⑩横浜駅SF 全国版/柞刈湯葉
⑪リバース/湊かなえ

あっというまに/竹内海南江/ベストセラーズ
図書館
僕がこれまでの人生で一番好きなテレビ番組「日立 世界ふしぎ発見!」
残念ながらレギュラー放送は2024年に終わってしまいましたが、いまでも不定期で特番が放送されていますね。
その世界ふしぎ発見の”ミステリーハンター”としてまず名前が挙がるのが、この本作の著者:竹内海南江(たけうちかなえ)さんでしょう!
なんと、ミステリーハンターを番組放送開始翌年の1987年から務めているというから驚きです。
そんな竹内さんのエッセイ本の存在を知り、「読むしかない!!」ということで借りてみることに。結果、めちゃくちゃ刺さりました。やばい。自分用に買おうかな。
(過酷なロケなのでどうしてもトイレ事情とかの話が多いですが・・・それも面白いです)
編集され、1時間のテレビ番組として観るロケの裏側。そこには僕たちの想像をはるかに超えた大変さがありました。
そもそも荷造りや衣装選びも大変。日本では考えられない現地の環境や気候、衛生環境や食事事情。いろんなトラブルがあるからいろいろ持っていきたい。薬や防寒、のど飴などなど。でもあちこち行くから荷物は軽くしたい。現地の方へのお土産も必要。
本作は、シンプルに旅の心構えや準備としても参考になります。
30年も続けていると、自分のみならず他人にも気遣えるのがさすが。飴ちゃんとか痔の薬とかね。
そして現地。企画してもその通りに進まないスケジュール。体調不良、トラブル、etc・・・。また、とんでもない僻地は行くだけで何日もかかるし、高山に行くときは高山病で死にそうになる。お風呂も入れないし食事も取れないことも多い。
ボケーっと僕たちが寝転びながら番組を観ている裏で、文字通り命がけでロケをして、番組を作っている人たちがいる。
「生血を吐くと、驚く」
↑サラッと書かれていますが、なかなか生血を吐く経験ってないですよね。
それでも感じるのは、海南江さんが本当に「ミステリーハンター」の仕事を好きなこと。この本を読むとそれを本当に実感しますし、僕もミステリーハンター目指せば良かったなぁと本気で後悔しています。
びっくりしたのは、30年も世界を飛び回っていた海南江さんが英語を話せないこと。でも作中にも書かれていましたが、英語を含め他の言語を流暢に話せるのは、コミュニケーションの大事な手段ではあるけど、目的ではないこと。なんでしょうね。
バブル期に六本木で飲み歩いていた女性が、特に理由もなくなったミステリーハンター。
その「ミステリーハンター」はいつしか竹内海南江さんという人物と、彼女の人生を形作る言葉へとなりました。
「知識は時に、自分の足枷になることを実感した。」
MAZE/恩田陸/双葉社
図書館
全然前情報はなかったのですが、「MAZE(迷宮)」という響きと、恩田陸さんのネームバリューに惹かれて借りてみることに。

余談ですが、「メイズランナー」という2015年公開の映画はめっちゃ面白かったです!でも2以降は、うーん・・・
本作の舞台は、西アジア辺境の真っ白い荒野にある直方体の神殿のような建築物。
それには棘のような植物が張り巡らされ、中は迷宮のように高い壁で区切られ、人1人が通るのがやっとの横幅。
茨をかき分け、一箇所しかない切れ目のような入り口から迷宮に入ると、忽然と人が消えていく。でも入った全員が消えるのではなく、出てこられる人もいました。数百年前からこの奇妙な事象は起こっており、帰還者の体験談が恐ろしい言い伝えとして現代まで残っています。
夫がその遺跡で姿を消した妻:ジーンが書いた「オウエンの手記」。
それを元にこの迷宮、通称「豆腐」の調査をするチームのメインメンバーは、恵弥(めぐみ)とスコット、現地コーディネーターのセリム。そして恵弥の友人である満。恵弥は、満のことを安楽椅子探偵役としてこの調査チームに同行させていました。恵弥とスコットはどうやら何か知っている様子だけど、それを満に隠しています。
この迷宮が何なのか、そもそもこの物語の着地点は何なのか。全くわからないまま読み進めましたが、不思議と惹きつけられ面白かったです。テンポの良さに加え、「迷宮」の真相や本作の結末を知りたい気持ちが重なり、サクサクと読むことができました。
本筋とは関係ありませんが、こんな探索も現代ならドローンがあればすぐに安全に終わるんだろうなと感じました。高度かつ複雑化する時代の進歩はミステリー作家泣かせですね。
この迷宮は何なのか。誰が何の目的でどのようにして作ったのか。中盤で答えのような物が出ます。その過程にたどり着く推理もなかなか読みごたえがありました。
が、その後さらに真相が明らかになります。結末は…好みは分かれるかな。という感じ。
ちなみに僕は読んだ後に知ったのですが、本作を1作目として”恵弥シリーズ”として続編も出版されています。ご興味のある方はぜひ読んでみてください。
変な家/雨穴/飛鳥新社
図書館
覆面作家でウェブライターである雨穴(うけつ)さんによる、不動産ミステリー小説。メディア展開もされていることもあり、存在とあらすじは知っていたので、図書館で偶然見つけて借りてみることに。
舞台は現代の日本。オカルトライターである雨宮は、知人が購入を検討しているという東京の築浅物件の間取り図にある「謎の空間」に違和感を覚え、建築士の栗原に相談します。
雨宮と栗原の2人は、もしかしたらこの物件が子どもの監禁と殺人のために作られた家ではと推測します。そんな物騒な推測をしながらも真相を確かめる術もない雨宮は、その東京の物件をもとにした投稿を発信します。
それを見て雨宮にコンタクトを取ってきたのは、その家で夫が殺された宮江柚希という女性。雨宮は、宮江から東京の家に非常に似た構造を持つ埼玉の家についての情報を入手します。そして、東京と埼玉の家を調べていくうちに、雨宮は過去の恐ろしい出来事について深掘りすることになります。
文章は読みやすく文字量もそれほど多くありませんので、非常にサクサク読めちゃいます。また、間取り図があちこちのページに挿入されていますので、いちいち前のページに戻らなくても楽しめるという親切設計はすばらしいですね。
後半になるとちょっと人物の関係が複雑になりますので、間をおかずに一気に読みきる方がいいと思いました。それかメモを取りながら読むのもよいかも。
本作は、なぜそんな間取りなのかという考察にとどまらず、同時に推理される家族構成と家族の雰囲気や生活ぶり、そうなるに至った背景まで詳らかにされます。
出オチで終わらない展開と、変な間取り図の理由を読者自身も考察する楽しさで面白く読めました。オススメです!
神に愛されていた/木爾チレン
図書館
名前は知っていたけれど、初読みの作家さん。
小説紹介クリエイターのけんごさんが夫であることも有名ですね。
主人公は小説家の冴理。
過去には9冊もの本を世に送り出しベストセラー作家となりましたが、63歳となった今は執筆活動も辞め、隠居のような暮らしを送っています。
本作は、そんな冴理のもとに、出版社に勤める四条花音が新作小説の執筆を依頼する場面から始まります。その後、冴理の過去回想がスタートします。
両親が離婚し、悲惨な家庭環境の元、ゴミ箱のような部屋で暮らす少女時代の冴理。一方で、京都大学に合格できるほどの優れた頭脳と、賞の選考にも残るほどの文学の才能を持ち、容姿も悪くない。自分こそが神に愛されていると思っていた少女。
両親の離婚、金欠、ゴミ屋敷・・・。辛いことばかりが振りかかってくるけど、淡々とした語り口と気にかけてくれる周囲の人のおかげもあり、スラスラと読み進めることができます。
そんな冴理は、白川天音という自分より圧倒的な小説の才能と、美しい容姿を持った作家に出会ってしまいます。しかも天音は同じ高校の文学部の3年後輩で、京都大学在籍という、知性でも引けを取りません。
天音はその才能と美貌であっというまに大人気小説家となります。そんな天音に強烈に嫉妬しながらも、とても勝てないと考える冴理。あれほど愛していた小説から離れ、自暴自棄になってしまいます。でもそんな自暴自棄になった冴理を救ったのもまた、周りの温かい人々でした。
あの人は才能がある。どうにかして勝ちたい、悔しい。そう思うことができる相手は、例え今の距離が離れていても自分のライバルなのでしょうね。
紆余曲折がありながらも、冴理は小説家としての復活を果たします。
…そこで終わっておけば良いのですが、物語はそれをよしとしてくれません。
そして、視点が変わる最終楽章。誰の視点かは言及できませんが、最終楽章を読んでいると心が痛くなります。神に愛されていた2人の、大きくて長くて深いすれ違い。不器用すぎますね。
本作を読んでいるともっと小説が読みたくなるし、できれば自分でも書いてみたくなります。
タイトル回収。痺れました。とても好きな本になりました。
東京都同情塔/九段理江/新潮社
図書館
第170回(2024年1月発表)芥川賞受賞作。
受賞当時、生成AIを作品の5%程度に使用したという著者のコメントが大きく話題になったことを記憶しています。
本作の主人公は、中年女性建築家の牧名沙羅。
読み始めると、まず彼女の主観で物語は進みます。なんというか、沙羅の頭の中が面倒くさい。よくもまあこれだけ理屈や仮定法をこねくり回せるものだと感心しました。頭が良い人ってこうなのかな。という偏見を思わず感じてしまいました。
本作は人物の心理描写がすごいというか細かいです。そして、ずーっと最後まで文字量が多い!ほぼ段落が変わらず1ページにびっしりと字が書かれていますので、分厚い本ではないのですが読むのに少し時間がかかってしまいました。
彼女の回りくどい言語化が続きますが、不思議と「脳内の検閲者」という表現はすごい腑に落ちました。
そんな彼女が東京のど真ん中、新国立競技場の横に建築しようとしているのは「トーキョーシンパシータワー」、通称“東京都同情塔”。
読み進めると、タワーの輪郭が徐々に浮かび上がってきます。なるほど、だから同情塔なのか。
犯罪者は同情されるべき存在「ホモ・ミゼラビリス(Homo Miserabilis)」。 この“東京都同情塔”は、彼らを収監するために建築されます。
本作には、もう1人の主人公:東上拓人がいます。
拓人は高級ブランドショップにアルバイトとして勤める22歳の男性で、大変優れたルックスを持っています。が、中身はごくごく普通の青年で、アルバイトなのでお金もありません。拓人の内面と、他人が勝手に作り上げる彼の人物像とのギャップについて、思い当たる節がありすぎて面白いですね。(誤解なきように書いておくと、僕のルックスがどうこうという話ではなく、他人から見た自分はこうも違うのかという点が。です。)
拓人は沙羅の恋人(ママ活?)のような存在として近くにいます。上で書いたような面倒くさい沙羅の心象を、一般的な感覚を持つ拓人がツッコんだり、たまにスルーしたりとするのが読者にも共感をもたらせてくれます。
さて、本作の感想はなかなか難しいです。いかにも芥川賞っぽいんですが、あまり見たことがありません。AIの使用という新しい手法を活用したこともより本作を理解することをぼやかしているような気がします。
罪を犯した人は悪いのか。それとも社会や環境が悪く結果としてそうなってしまっただけなのか。そんな彼らは同情され、“同情塔”の中で安穏と暮らすべき人々なのか。そんな犯罪者たちに税金で良い暮らしをさせるための塔は“悪”なのか。そして、その同情されるべき人々を定義した人と“同情塔”を建てた人は世間から非難されなければならないのか・・・
横浜駅SF/柞刈湯葉/KADOKAWA
図書館
ずっと読みたかった作品。柞刈湯葉(いすかりゆば)先生のデビュー作ですね。
柞刈先生といえば、「まず牛を球とします。( 河出書房新社)」や、「未来職安(双葉社)」など、一風変わったというかナナメ方向から切り込んできて、クセになるSF作品をお得意とされている作家さんですね。
個人的には、SF短編集である「人間たちの話(早川書房)」が、読みやすい+面白いで大変オススメです。
本作は第1回カクヨムWeb小説コンテストSF部門大賞を受賞しています。著者によると、賑やかしのつもりで応募したところ大賞を受賞したとのこと。すごいですね。
読む前は「横浜駅SF」って変なタイトルだし、どんな内容なんだろうと思いましたが、読んでみて納得。これはまさに“横浜駅SF”です。
本作のあとがきにて言及されていますが、横浜駅は大正4年に誕生して以来、100年以上にわたり一度たりとも工事が終わったことがないという、まさに“日本のサグラダ・ファミリア”とも揶揄的に言われています。そんな永遠に工事が終わらない横浜駅から着想を得て、皮肉的かつ斜め上の方向性で書かれたのが本作です。
冬戦争を経て、外国とも途絶され、鉄道や飛行機といった交通インフラや通信衛星による通信インフラなどがなくなった、現代から数百年後の日本。
そんな日本で、増殖を続け九州と北海道、四国を除く日本の大部分を侵食した「横浜駅」。九州にはJR福岡が、北海道にはJR北海道が存在し、迫りくる横浜駅に対する防衛と、本土奪還を目指しています。Suicaを持たない人は、自走する自動改札により「エキナカ」から排除されてしまいます。はい。いろいろとぶっ飛んでいますね。
そんな中、横浜駅の外、横浜駅1415番出口の下りしかない長い長いエスカレータの下にある「九十九段下」に暮らすヒロトは、「エキナカ」から「九十九段下」へ現れた東山から入手した「18きっぷ」を手に、横浜駅の中へと入ります。
18きっぷの有効期限は5日間、その5日間で東山からは、彼が属していた「キセル同盟」のリーダーを助けてくれという依頼を受けます。
上にも書いた通り、横浜駅は日本の本州の99%を占めているというとんでもない広さを持ちます。(早くこの設定に慣れましょう)
どこを目指すかもわからないヒロトは、東山と同じくエキナカから来た教授と呼ばれる人物から、「42番出口にすべての答えがある」との情報を得て、42番出口を目指しエキナカ内を探索します。
設定自体はぶっ飛んでいますが、細かな設定は非常によくできていてワクワクします。
6歳までの子供はSuicaなしでエキナカに存在できる、無法地帯と化した四国、冬戦争前の駅ネットワークを起点に広がっていった横浜駅、エキナカで暮らす人々の生活スタイルや形成される集団、横浜駅からの侵食に対し独自に進化していったJR福岡とJR北海道の技術の差・・・などなど、各設定は「そういう状況ならそうなるだろうな」と腑に落ちるものばかりです。
エキナカを旅するヒロトは様々な人に出会い、徐々に42番出口と「横浜駅」の真相に近づきます。彼は「42番出口」へ辿り着き、そこで何を見たのか。そして横浜駅に侵食された日本はどうなるのか。
とても面白く読めました。2作目もこの後で紹介していますので、併せて読んでみてください。
問題。以下の文章を読んで、家族の幸せの形を答えなさい/早見和真/朝日新聞出版
Kindle Unlimited
「店長がバカすぎて(角川春樹事務所)」シリーズでお馴染みの早見和真先生。
中学受験を題材にした本作。ずっと読みたかったのですが、Kindle Unlimitedで読み放題対象になっているのを発見!読んでみました!
小学生の娘を持ち、中学受験も検討している父親である僕には、本作の内容は刺さるポイントが多すぎました!また、自身の小学生時代や大学受験なども思い出しながら読みましたので、たくさんの人にも共感できるポイントが多いのではないでしょうか。

それにしても、思春期に入った娘側の視点というのは何気に新鮮ですが、そう遠くない将来にそれが我が家にやってくると思うと胃が痛いです・・・
本作の主人公は小学6年生の長谷川十和。彼女は母親に言われるがまま中学受験のための塾に通っていますが、行きたい学校もやりたいこともなく、受験のための勉強に全く身が入りません。
どうしたらその集中力が身につくのかという肝心なことをなぜか教えてくれないまま、先生たちは欠点だけを指摘してくる。
↑この一文に初っ端から共感できます。僕も集中力がない(落着きがない)ということをよく指摘された記憶がありますが、それを直す具体的な術を聞いた記憶はありません。
また長谷川家は一見幸せな家族ですが、十和はそんな家族に形に不満を感じています。思春期に入り、いろんなことが気に食わなくなり、将来や周りもおぼろげに見えるようになり、友達との関係もギクシャクし、優しい父にもなぜか反発してしまいます。
本作は中学受験という思春期の子供にとっての大きな挑戦に、いかに家族で立ち向かうか。というところがテーマとなります。
上でも書いた通り、僕にも小学生の娘を持っているので、どうしても十和の父親に共感してしまいますね。
特に三者面談でのお父さんがカッコいいです。子供の進路や習い事とかって、子供自身い選ばせたように見えて、結局、親や周囲の大人が選ばせている。じゃあ本人のモチベーションを上げるためにはどうすればよいか、大人や家族はそれに対してどう向き合ってあげればいいか。
また、十和が志望校を決め、本気で受験に取り組むようになった後のお父さんの協力具合も最高にカッコいいです。(僕はここまで献身的にサポートできるか不安です・・)
家族の形と、受けるべき学校。12歳という未成熟で思春期に突入した彼ら彼女らに、今後の人生まで含めて考えさせるのはあまりにも早いですよね。でも、人生において本気で頑張ることを初めて感じるのはこの中学受験なのでしょう。
作中でお父さんも言及している通り、中学受験なんかで人生で何も決まらない。スタートラインですらないかもしれない。でも、目標を決めてそれに向けて頑張るべきタイミングで必死に頑張ること。その土台を作るための中学受験という経験は絶対に無駄にならない。と僕も思います。
不本意に終わった自分の大学受験を思い出し、「十和のように本気で取り組んでおけばよかったな」と読みながら後悔しました。
「十和ちゃんの調子がいいいまだから伝えておくね。中学受験なんかでは人生の何も決まらないよ。それは僕自身が中学受験の経験者だからハッキリ言える。たかが中学受験くらいじゃ何も決まらないし、定まらない。逆に言ったら人生はそんなに甘いものじゃない。もしかしたら中学受験は人生のスタートラインでさえないかもしれない」
「違う。ずっと楽しいんだ。いまの十和ちゃんにはもうわかるでしょう? 目標を定めて、そのためにがんばるのは楽しいことだよ。楽しいし、楽なんだ。その二つに同じ漢字があてがわれてるのっておもしろいよね。がんばることって意外と難しくて、誰にでもできることじゃない。その土台を作るためというか、最初の経験という一点において、中学受験には意味があると僕は思ってる」
疎ましく思っていた家族。そのありがたさを十和は受験を通じて実感していくことになります。そんな十和は、受験を通じて家族の幸せを見つけられたのでしょうか?
ぜひ中学受験を検討している、または同年代の子供を持つ親に読んで欲しい作品です。
本作にはお馴染みの書店員と店長も登場します。ファンならクスリとすること間違いなしです!
プロパガンダ・ゲーム 偽情報戦/根本総一郎/双葉社
Kindle Unlimited
同著者の「プロパガンダゲーム(双葉社)」は、2025年に実写ドラマ化され話題になりましたね。その他、舞台化や漫画化などもされています。
本作はその2作目です。前作のメンバーも登場しますが、前作を読んでいなくとも楽しめます。
前作では、巨大広告代理店:電央堂(でんおうどう)の就職試験として「レジデンスチーム」と「政府チーム」という2チームに別れて情報戦が繰り広げられました。
2作目である本作は、内閣情報局の入庁試験として、またしても「プロパガンダゲーム」が開催されます。
インターネットやSNS、生成AI等の普及や技術の発展により、高度に複雑化する情報社会。そんな社会において、いかに正確な情報を得て、敵からの妨害やスパイ工作から国を守ることができるか。
今回の「プロパガンダゲーム」では、集められた4人のメンバーが、仮想の国:クラフト国の政府となり、近隣の大国:イーゼル国への編入を阻止し、国民投票でのクラフト国の独立維持の結果を勝ち取るため、敵からのAI等の攻撃を防ぎ国民を導くというものです。
相変わらずよく設定ができていて秀逸です。
今回の相手はイーゼル国を支持する「レジスタンスチーム」。しかも彼らは情報操作され、自分たちこそが正義であると定義された者たち。作中でも言及されていますが、仮想国でフィクションのストーリーとはいえ、現実に似た国や状況があることに簡単に思いつきますので、登場人物はもちろん、我々読者でさえ、これがただのゲームであるという事実を忘れそうになります。
また、主人公の新聞記者:春名はクラフト国の総理大臣として、内閣を従えて国民に政府の思いを伝えるために働きかけますが、生成AIによるフェイク画像や動画で混乱させられたり、いいねの数やインプレッション数を増やすための工作があったり、現実でもまさに我々が直面しているような苦境への対応を余儀なくされます。
そして、ゲームが進んでいくと、思いもよらない展開に物語は向かっていきます。このあたりは前作のプロパガンダゲームと一緒で、読んでいてワクワクしました。
テーマはシビアで現実味がある一方、テンポもよくコンパクトにまとまっていますので、サクサクと読み終わることができました。
春名総理たちクラフト国の政府メンバーは、国民を導き「独立維持」を勝ち取ったのでしょうか。ぜひ前作も含めて読んでみてください。
<前作>
<2作目>
リカバリー・カバヒコ/青山美智子/光文社
図書館
読みたかった本の予約の順番がようやく回ってきたので、満を持して読んでみることに。
5階建ての新築分譲マンション「アドヴァンス・ヒル」。そのマンションのすぐ近くのさびれた公園には、古くから設置されているというカバのアニマルライドがありました。その間抜けな顔をしたアニマルライドの塗装はところどころ剥がれ、瞳はうるんだように見えてしまいます。
そのカバのアニマルライドは「リカバリー・カバヒコ」と呼ばれ、”自分の直したい部分と同じ部分に触れると回復する”という伝説がありました。
アドヴァンス・ヒルに住む住人たちは、それぞれ悩みを抱えています。進学校で勉強についていけなくなったり、駅伝大会に出たくないがために嘘をついたら本当に足が痛くなったり、専業主婦となりママ友との関係に悩んだり・・・
それぞれのお話で、住人の辛い境遇とか、やりきれない現状とか。そんなものが描写され、カバヒコと出会い、ちょっと人生が良くなります。
どの話もそれで進みます。ある意味ワンパターン。でもそれは決して悪い意味でなく、最後に必ず何かが良くなることが確信できるから、読んでいて安心します。
どの話もいいんだけど、1番共感したのは最後の和彦の話でした。和彦に共感していると、あー僕もオジサンになったなあと実感。
本当に、本ってどの年代で読むかで感じ方が変わりますね。幼いころに読んだら子供目線になるし、大人になって読むと子供との向き合い方や親の衰えなんかが現実味を持って押し寄せてきます。
やはり青山先生の本はどれも、読んでいて心がじんわりし、勇気がもらえます。また、本作は文字量も少なく分かりやすい言葉で書かれているので、小学校中学年くらいからなら問題なく読めそうです。
「リカバリー・カバヒコ」には本当にそんな不思議な能力があるのでしょうか?それとも、本人たちの気の持ちようなのでしょうか。
横浜駅SF 全国版/柞刈湯葉/KADOKAWA
図書館
横浜駅なのに「全国版」って何ぞやと思いますが、前作を読んだ方ならもう理解できると思います。そうです。横浜駅が本州のほぼ全土を侵食している世界です。
本作は上でも紹介した、前作「横浜駅SF」の番外編です。
前作では、主人公であるヒロトが横浜駅の中を進み42番出口を目指すという長編ものでしたが、本作は前作で語られなかった「横浜駅」の中と外について描かれた短編集です。
作中には、前作にも登場したケイハやハイクンテレケなんかも出てきます。
「キセル同盟」はいかにして組織されたのか、ハイクンテレケやネップシャマイたちCorpocker-3型アンドロイドらはお互いをどう認識していたのか・・・など。
本作を読むと、よりこの「横浜駅」の世界観が理解できます。
どの話も核心にも触れてくれず、「え、そこで終わり?」という話もあるのですが、その不完全燃焼感が逆に心地よく感じました。
英語もなく、海外という概念すらなく、飛行機も新幹線もなく、衛星もない。横浜駅と自動改札機に支配された世界。今さらながら、この世界に順応している人々が奇妙でした。
でも、僕らが常識と思っていることだって、その場その時にいる世界での常識であり、いつかのどこかでは非常識かもしれない。なんてね。
前作は、「18きっぷ」のタイムリミット、自動改札機や駅員たちといった行く手を阻むものたちとの戦闘、どこに着地するかわからないストーリー・・といったように、ピリピリして不気味な感覚を感じながら読んでいました。
一方本作では、前作の結末を知っていることや、前作よりバイオレンスな雰囲気は減ったこともあり、どこかのんびりした雰囲気も感じられました。前作を読んで「横浜駅SF」にハマった方はより楽しめること間違いなし!
「だから、この駅構造の無秩序な増殖も、やがて唐突な終わりを迎える日がくるのだろう、と。まるで砂粒をひとつ落とすようにあっさりとした形で。」
リバース/湊かなえ/講談社
図書館
とりたてて特徴もない、平凡な事務用品会社の営業マン:深瀬和久。唯一の趣味ともいえるのは、自宅の近所にあるコーヒー店へ通い、そこで買った豆でコーヒーを入れること。
そんな和久の彼女の美穂子のもとに届いた手紙には、こんなことが書かれていました。
「深瀬和久は人殺しだ」
大学生の時、和久も含めたゼミの5人組は、メンバーの1人である村井の叔父が保有する別荘へ車で遊びに行っていました。ところが村井は1人遅れての合流となってしまいました。
広沢は、村井を迎えに行くために、豪雨の中の山道を飲酒運転し、谷底に車ごと落ちて命を落としてしまいます。
友人の死を悼みながらも、彼らはとある「秘密」を隠しながら過ごします。
そんな痛ましい事故から数年、彼らのもとに届いた告発文。それによって発生する実生活への悪い影響。4人とも隠していたあの秘密。告発文の犯人はそれを知っていたのではないか。それは誰で、どうやって知ったのか?
憶測と疑心暗鬼、そして罪悪感にかられた彼らは、告発文を送った犯人を探すこととなります。犯人探しは、4人の中で一番広沢と親しかった(と思っている)和久が主に行います。
広沢の地元である愛媛を訪れ、両親や旧友などから広沢に関する情報を集める内に、和久は自分が知らない広沢の一面があったこと、そして、当然ですが広沢には自分以外にも友人たちがいたことに気づきます。
ガタイが大きく、スポーツも万能で勉強もできる。でも心優しく他人への気遣いも素晴らしい、好青年の広沢。
個人的には古川と和久の会話が一番印象に残りました。卑屈な思いを持つ者同士の、同族嫌悪を乗り越えた、お互いが分かり合えそうな気持ち。
著者の湊かなえさんは、本作までは女性が主人公の作品がほとんどだったそうですが、こうも男性の心情を解像度高く描写してしまえることに脱帽です。
そして、調査を進めていくと告発文の犯人がわかります。実は僕にしては珍しく想像が当たっていたので、告発文の犯人については特に驚きませんでした。
が、そんな僕をあざ笑うかのように、最後の最後で本当にひっくり返されました。
読了後、この物語の後を想像しました。自分なら、真実に耐えられるだろうか。
“イヤミスの女王”、ここにありです。
読むとコーヒーが飲みたくなり、お酒に気をつけたくなり、コーヒーにはちみつを入れてみたくなります。
Kindle Unlimitedなら、月額980円(税込み)で本が読み放題です。
Amazonの読書サブスクサービスです。
月額980円(税込み)で、小説、ビジネス書、漫画等 様々なジャンルの本が読み放題です。
以下ボタンから、Kindle Unlimitedに登録ができます。
初回30日は無料なので、試してみてはいかがでしょうか!
以上、2026年7月の読了本でした!
おわり

