2026年上半期のベスト本10冊
2026年もあっという間に半分終わってしまいましたね。
今年は英会話をガチったり、社内昇進試験のためのプレゼン作成に頭を悩ませたりと忙しかったのですが、その分ゲームをやらなかったり飲み会の回数を減らしたりとしたので、結果的に本を読む時間が増えたのは嬉しい誤算でした。
さて、2026年1月~6月に読んだ本は合計53冊です!
年間100冊に向けてちょうどいいペースですね!
どの作品ももちろん面白かったのですが、特に気に入った10作品をネタバレなしで紹介してみます!気になったものがあったら是非読んでみてくださいね!

2025年のベスト10作品に関しては以下にまとめていますのであわせてご覧ください!

①風と共にゆとりぬ/朝井リョウ
②木挽町のあだ討ち/永井紗耶子
③殺戮にいたる病/我孫子武丸
④砂の王国(上)(下)/荻原浩
⑤キッチン常夜灯/長月天音
⑥告白/湊かなえ
⑦コズミック・ガール 宙わたる教室/伊与原新
⑧誰が勇者を殺したか 賢者の章/駄犬
⑨容疑者Xの献身/東野圭吾
⑩フリーランチの時代/小川一水
風と共にゆとりぬ/朝井リョウ/文藝春秋
まずは朝井リョウさんのエッセイ。いわゆる“ゆとり三部作”の2作目である本作です。
3作目の「そして誰もゆとらなくなった(朝井リョウ/文藝春秋)」とどちらをベスト10冊に入れようか悩んだのですが、「肛門記」のある本作を選びました。
ちなみに「肛門記」は、誤字でも他の意味を持っているわけでもありません。ただただ著者の肛門の話が、天才的な文才を大いに無駄に使って語られているだけです。
1作目の「時をかけるゆとり(朝井リョウ/文藝春秋)」が面白すぎたので、本作も読んでみました。
やはり面白すぎ。本人の行動も変だけど、何でもないことを面白く書くのも天才的かつ悪魔的に上手い。
というか何でこんなにも朝井先生のもとには面白いイベントが次から次へと降りかかってくるのでしょうか。そういう星の下に生まれたとしか思えません。
「大好きな人への贈り物」という話の最後、ページをめくったオチがズルすぎる。
また、僕は今年1月に世界的大ヒット作である「BUTTER(柚木麻子/新潮社)」を読んだのですが、本作に唐突に柚木麻子先生が登場し、朝井先生と同じようにおふざけキャラであることが発覚したので、「柚木先生もふざけるんだー」と変に衝撃を受けました。
あと朝井先生はもうとにかく卑屈。学生からのインタビューの話なんてとにかく卑屈、かつ被害妄想がすごい。そりゃバレーサークルに参加した初日に「卑屈ですね」って言われちゃうわ。なのになぜこんなに面白いのでしょうか。
第一章のおふざけを読んだ後、第二章でまとめられている日本経済新聞で連載されていたコラムの少しよそ行きにかっこつけた文章のギャップが面白い。
そしてそこからの第三章「肛門記」。「スタジオパークからこんにちは」の放送と、MRIの検査時間が同時刻なのはもはや奇跡。
「尿道カテーテル」のフォントがデカすぎて電車で読めません。 何がすごいってこれを世に発表しようという勇気が一番すごい。
もうとにかく読んでほしい。できれば1作目と3作目も読んでほしい。そして朝井リョウ先生の他の真面目な作品も読んで、まじめさとおふざけの高低差を感じてほしい。そんなエッセイです。
川下りとは即ち、トイレとトイレの間をゆっくりと漂流するということである
木挽町のあだ討ち/永井紗耶子/新潮社
2026年2月27日に本作の実写映画が公開されましたね。
普段手に取らない歴史ものですが、2023年に第36回山本周五郎賞と第169回直木三十五賞をダブル受賞した本作の名前は認識していました。
昨年読んだ「イクサガミ(今村 翔吾/講談社)」シリーズで歴史ものに味をしめた僕は、Kindle Unlimitedで読み放題対象だった本作も読んでみることにしました。
読み始めるとすぐ歴史もの特有の言い回しや、現代にない言葉などが出てきて早速後悔しそうになりました。が、登場人物の過去の話と「あだ討ち」の真相が気になり、どんどん惹き込まれ読み進めていきました。
本作の舞台は江戸時代後期の江戸・木挽町。
森田座という歌舞伎の芝居小屋周辺で起きた”あだ討ち”の真相を追う、というミステリー時代劇です。
仇討ちを行ったのは伊納 菊之助という美しき若衆。菊之助は、伊納家に仕えていた使用人である作兵衛に父親を殺されてしまいます。菊之助は森田座で働きながら仇討ちのため潜伏し、ついに作兵衛を討ちます。
その仇討ちは、大勢の人がいる中で大男の作兵衛を美しい女性に扮した菊之助が討つ、というなんとも見栄えのよい状況で行われ、すぐに江戸の人々の語り草になりました。
そんな過去の仇討ちにつき、事の次第やそれを見た森田座の関係者の来し方を尋ねて回る若い侍。どうやら菊之助に縁のある者の様子。
江戸を騒がせた仇討ちの真相とは・・・関係者への聞き込みをもとに「木挽町のあだ討ち」の真相が徐々に詳らかにされていきます。
聞き込みをする相手は、木戸芸者(呼び込み)、殺陣の指南役、女形兼衣装方、小道具方、戯作者(脚本家)といった面々。
仇討ちについてはみな似たような内容を話すばかりですが、共に聞かされるそれぞれの過去。この過去がまあどれもこれも面白いのです。
面白いといってももちろん江戸時代の話なので、辛い話ややりきれない話ばかり。でもだからこそ惹きこまれるのはどれも人の情の話だからなのでしょう。もはやあだ討ちの真相より、それぞれの過去の話の方が本題では?と勘違いしてしまいます。
読んでいると、徐々に色んな情報が明らかになってきます。
僕としては珍しくネタ晴らしの手前で真相には気づきましたが、それでもなお最後まで読ませる面白さと、丁寧にちりばめられた伏線はあっぱれの一言です。
そして、タイトルにそんな意味があったとは・・・
菊之助はどのようにして“あだ討ち”を成功させたのでしょうか。また、なぜ菊之助は関係者の来し方を聞いてこさせたのでしょうか。
時代ものですが誰にでもオススメでき、また結末も大変好みでした。
殺戮にいたる病/我孫子武丸/講談社
「どんでん返しがすごい!」という評判は聞いていたので興味はありましたが、内容がグロそうでなんとなく敬遠してた本。Kindle Unlimited対象作品だったので読んでみることに。
本作は初版が1992年に発刊されていますが、2017年に新装版が発刊されました。
読み始めると最初にエピローグがきます。蒲生稔が殺人を犯し、逮捕される場面です。
読者は、稔がいかにしてその連続殺人を犯すにいたり、いかにして逮捕されたのか。このように思って読み始めます。
この物語は蒲生稔と、元警部である樋口、母親である蒲生雅子の3人の主観が入れ替わりながら進みます。
稔は殺した女性しか愛せないという異常な性癖を持ち、若い女性を対象にした連続殺人を繰り返します。
すぐに犯人は捕まりそうなものですが、そこは1990年代初頭の日本。まだカメラや携帯も普及しておらず科学的な捜査は十分にできないのでしょうね。
稔は自身の行動を「真実の愛」と認識し、その真実の愛を求め女性を殺め続けます。
一見クレバーに見える彼ですが、思考回路は稚拙なところもあり読んでいてヒヤヒヤもします。また、彼の行動自体がまったく理解できず、グロテスクな描写も相まって読むのが辛くなります。
そんな中、元警部である樋口と被害者の妹であるかおるは、地道な捜査を続け真相に近づきます。
また、息子の部屋を漁ったり息子の行動に不信感を持ったりして調査する雅子もまた、深く悩みながらも真実に近づいてしまいます。(稔が異常なのはもちろんなのですが、この雅子もだいぶヤバいです。)
グロテスクでシリアスな内容ではあるのですが、後半まで読んでも「どこがどんでん返しなのか、そもそもどんでん返しされるような要素ってあるのか?」と疑問に思っていました。
ところが、あのシーン。リアルに目を見開いて声がでました。
もう意味がわからず頭が混乱し、わけがわからないままの状態で物語は結末を迎え、最初のエピローグの場面に繋がりました。
読了後にすぐに解説を見て感心。いやもう完全に騙されました。
確かに振り返ってみるとヒントや伏線は至る所に散りばめられていました。これは再読必須ですね。
「叙述トリックの金字塔」と言われるのも納得の作品。実写化は不可能でしょう。
(それを思うと「十角館の殺人(綾辻行人/講談社)」はどうやって実写化したんだ・・・)
内容はグロテスクですが、気になる方は読んでみてください!
砂の王国(上)(下)/荻原浩/講談社
※厳密には上下で2冊になっちゃうのですが、大目にみてください!
初読みの作者さん。いやー面白かったです!続きが気になり夢中で読んでしまいました。
妻に出て行かれ、住む家も失い、路上で生活し所持金はたったの3円。大手証券会社のサラリーマンからホームレスになってしまった主人公:山崎遼一。
序盤は山崎のホームレスとしての生活のシーンが続くのですが、ホームレス生活の解像度が高すぎて震えました。
そんな山崎が出会ったのは、端正なルックスと大柄なガタイを持つホームレスの仲村と、驚異的な人間観察技術を持ちながらもその日暮らしの辻占いとして生きる錦織龍斎の2人。
仲村の持つ圧倒的なカリスマ性と、思わず超能力と勘違いしそうなほど卓越した龍斎の技術に惚れこんだ山崎は、仲村を教祖、龍斎を師範代、自身を事務局長とした新興宗教団体「大地の会」を立ち上げ、金儲けをたくらみます。
ホームレスだった山崎が「大地の会」を立ち上げるための大金を得るくだりは「ご都合主義だなー」と若干感じました。でも、世の中にはホームレスの人がたくさんいて、そういった幸運を持っていない人はそもそも生き残れないだけなんでしょうね。
本作は物語としても非常に面白く、どんどん先が気になってしまいますが、本筋ではないところでもとても感心してしまいます。占い師やメンタリストの心理誘導テクニックや、人を動かす方法、ビジネスの進め方まで、勉強になることが山盛りです。龍斎が使っている心理誘導テクニックは自分でも勉強してみたくなりました。
さて、そんな中立ち上がった「大地の会」。
仲村改め教祖:大城の圧倒的なカリスマ性と神秘性、龍斎改め小山内師範代の超能力じみたカウンセリング力、そして山崎改め木島事務局長のビジネスセンスで、規模はどんどん大きくなり会員も増えていきます。
ただ読んでいると、「大地の会」はろくでもない結末を迎えるんだろうな、というヒヤヒヤしつつも確信に近い思いを持つようになります。そして、その兆候は下巻の途中から顕在化していきます。
創設者の知らぬところで増大しコントロールが効かなくなる組織、思想や派閥の違いによる内部分裂、“嘘”に気付いてしまった信者の存在・・・etc。
嘘で塗り固めた砂の王国である「大地の会」。それがいかにして実体を持ちカルト宗教化していくのか、本作ではその過程を具に体疑似体験することができます。
山崎と「大地の会」はどんな結末を迎えるのでしょうか。
救いを商売にしてしまった私に、救いを求める場所はもうない。
キッチン常夜灯/長月天音/KADOKAWA
この時はヘビーな小説が続いたことと、英語の勉強疲れもあり、心が優しい小説を求めていました。そんな時にXで読了ポストをよく見かけていた本作をKindle Unlimitedで発見。読んでみることに。
結果、大当たりでした。すぐに読み放題対象だった3作目まで読んでしまいました!
本作の主人公は、浅草のファミレスで若くして店長を務める南雲みもざ。女性活躍を掲げる会社の意向で、店長になりたくてなったわけでもない彼女は、観光地のど真ん中にあるファミレスの店長として多忙でストレスフルな日々を過ごします。
そんなある日、みもざが住むマンションで火災が発生。部屋が水浸しで住めなくなってしまったみもざは、いまは倉庫となっている会社の社員寮へ住まざるをえなくなってしまいます。
僕は昨年の始めまで東京に住んでいて作中に出てくるエリアにも詳しいこともあり、遠い中大変だなあとか、ここにそんな店があったらいいなあとか思いながら読みました。
さて、ただでさえ仕事で忙しい毎日なのに、家に住めなくなり通勤時間も長くなってしまったみもざ。そんな状況で出会ったのが、「キッチン常夜灯」というフレンチのお店。
この「キッチン常夜灯」はその名の通り夜通し開店しており、終電を逃した人や活動時間が遅い人、事情があって夜中も起きておきたい人達の止まり木となっています。
キッチン常夜灯の周辺で繰り広げられる人間ドラマだったり、仕事への気付きや思い入れだったり、職場の苦手な先輩とのかかわりだったり。辛いことも苦しいこともあるけれど、読んでいてほっとするし、美味しい料理が食べたくなります。
みもざにとって、家事で住む家を失ったことは間違いなく不幸ですが、この「キッチン常夜灯」に出会えたことは非常に良い出来事だな、と素直に感じることができます。
というか、シンプルにこの店が実在しているのなら行ってみたいです。夜通し空いている店といっても、料理もサービスも本格的でめちゃくちゃ食欲がそそられます。
登場人物の中ではキッチン常夜灯のシェフが1番好きです。
シェフの子供時代とシェフを目指したきっかけの話が良かったな。
月並みな感想ですが、飲食店の店長って大変ですよね。体力的にも精神的にもキツいし本当に尊敬します。でもそんな彼らも僕たちと同じ人間です。落ち込むこともあれば怒ることもある。そんな時、いつでも空いていていつまでもいることができる、「常夜灯」のようなお店があれば本当に救われると思います。
そして、2作目3作目は主人公を変えて続きます。主人公は皆みもざが勤務する「ファミリーグリル・シリウス」を展開する株式会社オオイヌの女性社員たち。彼女たちは皆、キッチン常夜灯に出合い変わっていきます。
前作の主人公達も登場しますので、常夜灯によって成長したみもざにも会えますよ!ぜひ読んでみてください!
告白/湊かなえ/双葉社
湊かなえ先生のデビュー作にして、第6回本屋大賞受賞作。
何気に湊かなえ先生の作品は本作が初めてです。
シングルマザーの中学校教師:森口悠子。その最愛の娘である愛美の死。
愛美は自分が受け持つクラスの生徒に殺された。中学1年の終業式の日のホームルーム、森口のそんな衝撃的な告白から本作は始まります。
いやもう第一章から怖すぎです。そして、2年に進級し新担任が来た第ニ章。
何も知らない新担任が、犯人たち2人の生徒をクラスに溶け込ませようとして空回りする様と対照的に、真相を知りながらもそれを表に出せない生徒たち。噛み合わない歯車はどんどん事態を悪化させていきます。
森口がかけた「呪い」がめちゃくちゃ怖い。自分たちがこのクラスの生徒になったらと思うとゾッとします。怖いのに、文章は読みやすいのもあってどんどんページをめくってしまう。結局一日で読んでしまいました。
その後も章毎に語り手を変えて第三章、第四章と進みます。それぞれの登場人物の胸の内と考え、思い通りにならない人生。
一つの不幸は、それに関わる人を連鎖的に不幸にしてしまう。
登場人物のそれぞれの境遇を主観的に疑似体験することで、読者である僕たちには同情のような感覚が芽生えてしまいます。この事件に関わった彼らは救われることがあるのだろうか・・・。何とか良い方向に物事が向き、誰もが平和な結論に着地しないだろうか。
・・・と思って読んでいたら、最後の全く容赦のない電話と衝撃的なラスト。読了した日の夜は後味の悪さで眠りにつくのに苦労しました。
これは確かに出版当時物議を醸したのもわかります。多角的で複層から構成された名作です。作者が「イヤミスの女王」と評されるのも納得です。
怖い物見たさで他の作品も読んでみたくなりました。
コズミック・ガール 宙わたる教室/伊与原新/文藝春秋
大好きな前作「宙わたる教室/(伊与原新・文藝春秋)」の待望の続編です。
はい、最高の続編です。
本作を読んだ後はJamiroquai(ジャミロクワイ)の「Cosmic Girl(コズミックガール)」という歌が聞きたくなること間違いなし。
快挙を成し遂げ伝説となった東新宿高校・定時制科学部。それに憧れて超進学校から転入してきた主人公:飯星佐那。
しかし、6年経った今では東新宿高校の定時制から科学部は消滅し、当時生徒たちを導いた藤竹先生もいない。さらには当時を知る教師もほとんどいません。
ただでさえ超進学校からの転入で浮いているのに、科学部を作ろうと躍起になっている佐那はクラスメイトから白い目で見られて空回り。しかも担任である国語教師:里仲遥香は、定時制にやる気を全く見出せず全日制への異動をただ待つだけの日々。
しかし佐那の地道な活動と、佐那の元に集まってきた仲間たちに触れ、そんな遥香も彼女たちと共に変わっていきます。
同時に、最初は定時制の科学部を馬鹿にしてくる周囲の人たちも徐々に変わっていきます。
科学は人を選ぶ。とくに自分のような文系人間には、近づけないものだ。ずっとそう思っていたけれど、それは間違いだったのかもしれない。科学はもしかしたら、何よりも平等で公平なものではないか。
↑このセリフも印象深いですね。
僕もバリバリの文系人間ですが、今では化学メーカーで開発営業を務めています。「もっと科学について勉強したい。科学って面白いんだ。」って本当に思わせてくれる作品ですね。
本作では、前作ではなかなか触れられなかった定時制の教師側にもスポットライトが当てられていて興味深かったです。誰もが藤竹先生のように活力に溢れたわけではない。というか、自分でも多分定時制の教師になったらそうなる気がします。
でも、なぜ藤竹先生は東新宿高校から去ってしまったのでしょうか。それは読んでみてのお楽しみです。
続編の良いところと言えば、伝説となった6年前の科学部オリジナルメンバーのその後を見られることですね。時が経ってそれぞれの状況も変わっていますが、それぞれの熱い思いは全く変わっていません。岳人の成長っぷりも最高です。
そして、やはり前作の実写ドラマは最高だったということを再認識しました。登場人物の顔も声もそれでしか浮かばないし、場所も何もかもビジュアルでイメージできることが本作への没入感を一層高めてくれます。
本作では、定時制の現状や小児病棟の実態などにも踏み込みます。正直、読んでいて辛いことばかりです。でも、当事者たちは腐ることなく前を向いて生きていますし、それに影響された周りの人達の変化も素晴らしいです。定時制 料理部の白川が定時制を眩しく感じるのもまたいいですね。
本作の主人公は佐那ですが、本作のもう1人の主人公は片倉理だと思います。辛い病気やそれによる不都合を経験しながらも、常に前を向き、全体の成功を願う。世界の人がみんな理のような人になればいいのになと思いました。
いい!ダメでもともと、とにかくやってみりゃいいんだよ。
↑科学にはこのマインドが大事です。失敗を恐れ一歩を踏み出さない人も失敗を許さず過剰に叱る人も多いですが、まずはやってみて失敗から学ぶこと。それが大事ですね。
ですから、宇宙へ出て行かないという選択肢は、我々にはありません。そして、未知の世界への旅立ちはいつだって、希望です。
必ず気持ちが前向きになる素晴らしい作品。未読の方はぜひ前作からあわせて読んでみてほしいです!
誰が勇者を殺したか 賢者の章/駄犬/KADOKAWA
ついに「誰が勇者を殺したか」、通称“だれゆう”シリーズも4作目です。
4作目でもしっかりとタイトルの通りのストーリーとしているのは見事。ネタバレになるのであまり言及しませんが、この勇者システムを生み出したからこそ、何度でもタイトル回収できるのが秀逸ですね。
本作は「賢者の章」。賢者と言えば、魔王討伐パーティーにいた魔法使い:ソロンしかいないでしょう。
そんな賢者ソロンが勇者として選ばれた世界線。
ソロンはアレスを除けは唯一魔王城までたどり着いた勇者。1人で旅をし魔王城までたどり着いたと思われていたソロンには、実はエルフのパーティーがいました。
幼き頃から神童と言われ、完璧で天才だから仲間なんていらないし、何でもできる。そう思っていたソロンでしたが、いざ魔王討伐の旅に出てみると、1人では食料も調達できないし、できないことも多い。旅で自分の無力さを知り、人と触れてソロンは成長していきます。
また、エルフのエーブがソロンにとって良いパートナー過ぎますね。
エルフという中立で人とは一線を画す立場だからこそ、ソロンの賢くて愚かなところや、言動と心中のギャップなど、いくつもの矛盾などを客観的に示してあげています。ソロンもそんなエーブに悪態をつきながらも共に旅するのを心地よく感じます。
魔物が人間を襲う理由や、魔人の生態なんかもしれっと出てきて、徐々にこの世界のことがわかってきます。
シリーズものでありながらパラレルにできるという本作のシステムが、重要な情報を矛盾なく後で補完できるのに最適なのでしょうね。繰り返しになりますが本当に良くできたシステムです。
結局、絶対的な善悪なんてないというか、立場によって変わるのでしょうね。人間にも魔人にも秩序があり、それぞれがそれを守るために戦います。
そして、どの章でも的確に「ザ・RPG好き」の心をくすぐります。僕たちが求めていた、剣と魔法のベタなRPGがここにあります。大好きです。
俺は天才だ。それは間違いない。けど、それを才能と読んでいいのは、俺と同じ努力をしたヤツだけだ。お前らはやってないだろ?勝手に「ソロンと比べれば才能がない」といって諦めているだけだ。俺を言い訳に使うんじゃねぇ。
かなり序盤のセリフですが、↑ここにアレスが勇者たり得た理由が詰まっている気がしました。そして、この4作目を読んだ後、むしょうに1作目のアレスとソロンの出会いを読み返したくなりました。
元々の優れた知性と卓越した魔法の実力、そして旅で成長した人間性もあわせ持ったソロンは魔王に挑みます。その結末はどうなったのでしょうか。
まあ言うまでもなく負けちゃうのですが、いかに戦い、いかに散っていったのでしょうか。
そして今回も、「誰が勇者を殺したか」
容疑者Xの献身/東野圭吾/文藝春秋
ようやく読めた探偵ガリレオシリーズ。第6回本格ミステリ大賞、第134回直木三十五賞受賞作。はい、名作です。
探偵ガリレオシリーズとしては3作目ですが、初の長編作品です。これがシリーズ3作目であることを知らずに読んでいましたが、全く問題なく楽しめました。
また、舞台が東京の東側であることや、湯川の趣味がバドミントンであることなど、思いがけず馴染みのあることばかりで無駄に楽しかったです。
一人娘の美里と2人で暮らす靖子は、どこに逃げても追いかけきてしつこく金をせびってくる元夫を殺してしまいます。
この親子の横の部屋に住み、密かに靖子に恋心を抱いていた高校の数学教師:石神は、彼女たちが殺人をしてしまったことを知り、彼女たちを救うために完全犯罪を企てます。
この石神は高校の数学教師をしていますが、もともとは天才的な数学者。そして“探偵ガリレオ”こと湯川とは大学時代の友人でした。その天才的な頭脳を遺憾なく発揮し、親子の犯罪の証拠をほぼ完璧に消し、アリバイも作りあげ、彼女たちが無罪になるようなプランを実行します。
その計画の立て方が本当に緻密で素晴らしい。そして全く数学は活用されないのに、どこか数学的。
石神が生徒に向けて語った、“数学を勉強する意味”の説明が素晴らしい。なのに、なんでこんなことをしちゃったのかなぁ。
湯川は、非常に尊敬する友人である石神を信じたい気持ちを持ちながら、石神こそが黒幕であると推測し謎を解いていきます。二つのどうしようもない思いに挟まれ深く葛藤する湯川が、読んでいて辛かったです。
終盤に向かうにつれ色んな謎やトリックはわからないながらも、石神がなぜ自ら罪を被ろうと思ったのかについてはほぼ確信に近い推測をしていました。
そんなわかったつもりになった僕をあざ笑うかのように、真相はより複雑でした。何もわかってなかった僕は頭を殴られた気がしました。
石神との友情、そして数学者としての天才的な頭脳を失うことに苦渋する湯川がただただ切なかったです。緻密なミステリーだけではなく、やるせない人間ドラマも同時に読むことができる、間違いない名作です。
フリーランチの時代/小川一水/早川書房
数年前からずっと読みたかった本。図書館で偶然発見してテンションが上がりました。
本作は僕の超好みのSF独立短編集です。どの話も面白い。ハードルを上げて読んだけど期待以上でした。表紙は少しポップというかラノベっぽいけど、それで敬遠している人はもったいないと思います。
表題作の「フリーランチの時代」。なるほど、だから“フリーランチの時代”か。
火星で事故に遭い大怪我の彼女を救い、体を細胞からナノマシンの集合体に作り変え、さらに不老不死にしたのは、火星に住むエイリアンだった。最初からぶっ飛んでるけど面白いです。
「Live me Me」は事故によって感覚や運動能力を失った女性が、ロボットの体を手に入れて自身の肉体の世話もしながら生活するというもの。“私”とは何か?昏睡している肉体か、思考を続けている脳なのか、それともロボットの体か・・・
「Slowlife in Starship」が個人的に一番のお気に入りです。
宇宙航空技術が発展し、居住の形と範囲が広がった未来。最低限の仕事と人との付き合いをすれば、後は自分の宇宙船に籠りスローライフを送る生活。お金をたくさん稼ぐ必要もなければ出世や結婚などとも無縁。依頼された仕事までの宇宙空間の移動時間を、のんびりとどのように過ごすか。
現在の僕たちが遥か遠くに感じている宇宙を自由に航行できるようになっても、人の営みは基本的には変わらないんだなと感じさせてくれます。
「千歳の坂も」は、不老不死が当たり前になり、健康であることを義務付けられ、一定の人が死を望む世界。でも一つの状況が安定して続かないのが人の性。いつしか不老不死者は排斥されるようになり、時は経ち、国や生活の形も大きく変わり・・・
そんな中、主人公である厚生勤労省健康維持局に勤める羽島と安瀬眉子の、長い長い時を経た追いかけっこ。なんだか哲学的だけど、文学的でもありました。
「アルワラの潮の音」は、本作の中で一番不思議なお話でした。
同著者の「時砂の王(早川書房)」のスピンオフ作品とのことで、そちらを読んでいればもっと楽しめたのでしょうね。もちろん読んでいなくても非常に楽しく読めます。
島国に暮らす民達。ある日、アルワラ族はホンアプレ族の反乱を受けてしまい、それを鎮圧するためにホンアプレ族の島に向かいます。状況は完全に理解しきれないまでも、「これのどこがSFなんだ?」と思いながら読んでいると、事態は思わぬ展開へ・・・
そこからは間違いなくSF作品でした。民族的な話からSF作品への振り幅が大きく、非常に面白かったです。
どの話も趣は違うけれども、しっかりとSFでユーモアもあり、ちょっとほろ苦くも感じる。読んで良かった一冊です。
この作品が好きな方は柞刈 湯葉(いすかり ゆば)先生のSF短編集も楽しく読めると思います。似た感じだと、「人間たちの話(柞刈 湯葉/早川書房)」がオススメです!
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以上、2026年上半期のベスト本10冊でした!
おわり

